出生率は1.14と、過去最低を10年連続で更新。政府は子育て支援に多額を投じ、婚活支援にまで税金をばらまいてきましたが、少子化に歯止めはかかりません。なぜ、これほど対策が実を結ばないのでしょうか。メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では、著者で健康社会学者の河合薫さんが、少子化対策が失敗し続ける根本原因に切り込み、私たちが本当に取り戻すべき「豊かさ」とは何かを問い直します。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです
プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。
少子化と国の豊かさ
出生率の低下が止まりません。
厚労省によると、2025年は1.14で、24年の1.15から0.01ポイント下がり、過去最低を10年連続の更新です。しかも、平均減少率は年2.5%ほどで、ペースは2倍に加速しています。あれやこれやと政府は「子育て世代」の支援をしてきましたが、結婚する若者が減っているのですから仕方がありません。
例えば、1965年の20代後半の女性の未婚率は19%、30代前半は9%と、10人にたったの1人です。ところが、80年以降急増します。1985年には20代後半で30%を、2010年には60%を突破。30代前半の場合も、1995年に20%を突破して以降急増し、この数年は35%程度で推移しています。つまり、30代女性の20人に7~8人が結婚していないのです。
じゃあ、少子化対策という名のもと、婚活パーティだの、合コンだのとやればいいのかといえば、そういうわけでもありません。思い起こせば、女性や若者の活躍の場を広げることを成長戦略に掲げた安倍政権では、内閣府が約2億円を盛り込み、都道府県にお金をばらまきました。“ある程度の効果はあった“の声がありますが、現状を考えれば「ノー」というほかありません。
「恋に落ちる光」はあるか
結局「結婚したい!」とか「子供が欲しい!」気持ちって理屈じゃないのです。「恋に落ちる」という言葉どおり、ある日突然、誰かに心を奪われたり、気がつけばその人を愛おしく思っていたりするような、コントロールのできない衝動の先にあるものだと思うのです。
今の日本社会に「無条件にそう思わせる光」があるのでしょうか。働けど働けど報われず、中間層はアンダークラスに地滑り的になだれ込み上級国民と下級国民の間には「万里の長城」のような、果てしない壁が立ちはだかる。「一人口は食えぬが二人口は食える」といったことわざが意味を持たない時代です。
それに・・・“戦力外“の私が言うのもなんですが、結婚は勢いでできても、子供を持つ「強い意志」がないと、うっかり、本当にうっかり、厳しい年齢に突入します。仕事ばかりしてるわけでも、キャリア志向が決して強いわけでもない。ただただ、日々仕事をし、ちょっとだけがんばったり、そんな自分にご褒美したり、友だちと旅行したり、学んだり、それでまたがんばって仕事してるうちに、あっという間に40代に突入し、まごまごしてるうちに「同級生の子供が大学生」「成人した」「孫ができた!」なんてタイムラインが流れてきて、めまいがする。
あれ? 私、どこかで道を選び間違えたんだっけ。いや、間違えてなんかいない。いつだって一生懸命生きてきた。けれど、ふと気づけば、正真正銘の戦力外!
そうして、あの嫌な言葉が忍びより、「女性」という枠から「シニア」枠に身を置く自分に、またまたハッとするのです。その言葉とは「孤独死」です。
GDPより「本当の豊かさ」を
とどのつまり、多くの少子化対策が失敗するのは、「社会というシステムを維持するために、個人に子供を産ませよう」とするからではないでしょうか。
それよりも、「個人が安心して、それぞれのペースでウェルビーイング(精神的・身体的・社会的な健康)を追求できる社会」にするにはどうしたらいいのか?を考えた方がいい。10年以上前でしょうか? GDPをやめて、幸福度を国の豊かさの指標にしようとする動きがありましたよね。あのとき私たちが目指そうとした、ブータンの「GNH(国民総幸福)」のような視点に、今こそ本気で立ち返るときが来ている気がします。
「何のために働くのか」「自分にとっての幸せとは何か」を誰もが問い直せる社会へ。経済の物差しを、人間の物差しへ。
少子化というトンネルの先にあるのは、数字には表れない「本当の豊かさ」の追求だと思います。
みなさんのご意見、お聞かせください。
この記事の著者・河合薫さんのメルマガ
image by : Shutterstock.com