これまで経験したことのないような暑さが続く中、私たちは改めて「酷暑」と向き合う必要があります。単なる暑さ対策ではなく、命を守るための備えとして、一人ひとりが危険を正しく認識することが求められています。今回の『きっこのメルマガ』では人気ブロガーのきっこさんが、動物園のライオンの死をきっかけに、近年深刻化する猛暑の現状や熱中症による被害、そして酷暑を乗り越えるために私たちが意識すべき対策について考察しています。
酷暑を生き抜くために
8月3日、東京都日野市の「多摩動物公園」のライオン3頭が相次いで死んだと報じられました。報道によると、同園では16頭のライオンを飼育、展示していましたが、7月18日に2頭が体調を崩し、最終的には計10頭に食欲不振や活動性の低下などの症状が出始めたため、治療を行なったそうです。しかし、意識を失うなど重症化する個体も出て、7月28日から8月2日にかけて、いずれもメスの「ムギ」(3歳)、「イチゴ」(11歳)、「ルエナ」(15歳)の3頭が死んでしまいました。
同園の獣医師による解剖の結果、3頭とも全身の脱水と多臓器不全が判明、連日の猛暑による熱中症が原因と見られています。
東京の今年の夏の暑さは、少なくともあたしが東京に生まれてから約50年のうちで、一番暑いように感じます。もちろんこれは東京に限ったことではなく、全国各地で猛暑が続いていますが、どこに住んでいる人も、今年の夏は「生まれてから一番暑い」と感じている人が多いと思います。実際、すでに複数の地点で「過去最高気温」が計測され続けています。
2年前の2024年7月、EUの気象情報機関は7月21日と22日に世界の平均気温が2日続けて「過去最高」を更新したと発表しました。月ごとの平均気温で見ると、この月まで13カ月連続で「過去最高」が更新されており、地球規模で温暖化が加速していることがうかがえました。この発表を受けて、国連のアントニオ・グテーレス事務総長は当時、「もはや地球は沸騰に近づいている」と警告し、各国に気候変動対策の強化や労働者の暑さ対策など、緊急の行動を呼び掛けました。
確かに、一昨年の2024年の夏は東京も劇的に暑かったですし、何よりも10月まで暑い日が続くという「長くてウンザリする夏」でした。そのため、昨年2025年の夏も暑かったですが「2024年よりは多少はマシ」という感じでした。東京のわが家にはエアコンがなく、2台の扇風機が唯一の物理的対策なので、あたしの場合、夏の暑さはダイレクトに感じるのです。そして、そんなあたしは「今年の夏は2024年と同じか、それ以上に暑い」と、今、感じているのです。
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ちなみに、今年7月の東京の最高気温の推移を見てみると、1日から7日までは20℃台が続いていますが、8日に30℃を超えて7月最初の「真夏日」を迎えると、あとは連日、30℃前後の暑い日が続いて行きます。そして、20日に35℃を超えた「猛暑日」に突入すると、あとは月末まで、ほぼ連日「猛暑日」が続いたのです。この推移を見ると、多摩動物公園のライオンたちが18日から体調を崩し始め、月末に3頭が死んでしまった流れと一致します。
人間の場合は、喉が渇いていなくても熱中症の予防として定期的に水を飲んだりしますが、ライオンなどの動物は喉が渇かなければ水を飲まないため、脱水症状になってしまったのではないでしょうか?でも、もしもそうだとしたら、2年前の2024年はどうして大丈夫だったのでしょうか?
今年の7月の東京は、35℃を超えた「猛暑日」が1カ月に9日間もありました。そして、昨年2025年の7月は「猛暑日」が7日間です。しかし、2024年の7月は「猛暑日」が12日間もあったのです。「猛暑日」の日数だけがすべてではないと思いますが、明らかに今年よりも過酷だった2024年の夏を無事に過ごすことができたライオンたちが、どうして今年はこんなことになってしまったのでしょうか?
さて、ここからは「自分ごと」として、あたしたち人間のデータを見てみましょう。総務省のデータを見てみると、東京で30℃以上の「真夏日」が続いていた7月13日~19日の1週間で、全国で熱中症の疑いで救急搬送された人数は10,857人でした。そして、今年初の「猛暑日」を迎えた7月20日~26日までの1週間を見ると、救急搬送された人数が18,591人で、このうち45人が死亡しています。最高気温が5℃上がったことで、救急搬送者の数が1.7倍を超えたのです。
続いては、毎年5月から9月までに熱中症が原因で亡くなった全国の死者数を見てみましょう。
2016年 621人
2017年 635人
2018年 1581人
2019年 1224人
2020年 1528人
2021年 755人
2022年 1477人
2023年 1651人
2024年 2160人
2025年 1521人
2000年頃までは100~500人くらいで推移しており、1000人超の死者数が散見されるようになったのはここ20年ほどですが、グテーレス事務総長が「沸騰」と言った2024年には、日本でも熱中症による死者が過去最多の2000人超となりました。そして、翌2025年はまだ暫定データですが、いったん減少しました。しかし大局的に見ると、今ではほぼ毎年のように1000人超の人々が亡くなっているのです。
日本は世界に類を見ない自然災害大国です。しかし、過去50年を見ると、1000人を超える犠牲者が出た自然災害は、1995年の「阪神・淡路大震災」と2011年の「東日本大震災」だけなのです。この2つの大震災の他は、この50年に発生したすべての自然災害で、犠牲者は1000人を超えていないのです。それなのに、毎年のように1000人以上の人たちが熱中症で亡くなっているのです。ここまで来ると、もはや現在の「猛暑」は、ある意味、新たな自然災害と呼べるのではないでしょうか?
熱中症による死者数、昨年は少し減少しましたが、問題は今年なのです。現在、全国各地を見てみると、「猛暑日」どころか40℃を超える「酷暑日」もあちこちで確認されるようになりました。こうした現状を踏まえると、今年の熱中症の死者数は、2024年を超えて過去最多を更新してしまう可能性も高いのです。
東京の7月の「猛暑日」だけを見れば、今年は確かに2024年よりも日数が少ないですが、2024年の夏を乗り切った多摩動物公園のライオンが、今年はすでに3頭が死んでしまい、残りの数頭も治療中なのです。全国で熱中症の疑いで救急搬送される人たちの8割以上が「屋外ではなく屋内にいた人」という事実からも、単に気温の高さだけが熱中症の原因ではないように思うのです。
今回の3頭のライオンの死を「かわいそう」で終わらせるのではなく、「炭鉱のカナリア」のように多くの人々の命を救うための1つの指針として捉え、改めて「酷暑」を無事に乗り切るために役立てるべきだと、あたしは思います。
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