HIV内定取り消しで賠償命令=「告知義務ない」-札幌地裁
エイズウイルス(HIV)感染を申告しなかったことを理由に病院が就職内定を取り消したのは違法だとして、北海道の30代男性社会福祉士が、病院を運営する社会福祉法人「北海道社会事業協会」(札幌市)に、慰謝料など330万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が17日、札幌地裁であり、武藤貴明裁判長は社会福祉法人に165万円の支払いを命じた。
武藤裁判長は、HIV感染に関する情報は秘密性が高い上、社会福祉士という業務内容に照らすと感染の危険性は無視できるほど小さいと指摘。「感染の事実を告げる義務があったとは言えない」と述べた。
男性が採用面接で持病の有無を問われた際、感染を告げなかった点についても、「これをもって内定を取り消すことは許されない」と指摘。採用の際、応募者にHIV感染を確認することは「特段の事情がない限り許されない」と述べ、内定取り消しは違法と判断した。
また、病院が過去に診療したカルテで男性のHIV感染を知り、内定を取り消したことについても、「男性のプライバシーを侵害し違法」とした。
判決によると、男性は2017年12月、道内の病院の社会福祉士の求人に応募。面接で持病があるか問われた際にHIV感染を告げずに内定を得た。その後、病院は男性が以前患者として受診した際のカルテを発見し男性のHIV感染を認識。虚偽の事実を伝えたなどとして内定を取り消した。
男性は判決後に記者会見し、「司法がここまで踏み込んだ判断をしてくれて感謝している。すぐに差別や偏見がなくなるわけではないが、社会の認識が少しずつ変わっていけばいいと思う」と語った。(2019/09/17-12:37)