海外巨大IT企業に対抗 「1億総スマホ」へ足場―ヤフー・LINE統合
検索サービス大手「ヤフー」を展開するZホールディングス(HD)と無料対話アプリ大手「LINE」が統合に向けた最終局面に入った。月内の合意を目指す。両社はともに検索や対話アプリの利用者を多く抱え、実現すれば利用者1億人規模に上る国内トップのインターネットサービス企業が誕生する。
ライバル視するのは、世界中で膨大な個人データを収集し、一人ひとりに合った広告などを提供することで成長した「GAFA」と呼ばれる米国の巨大IT企業や中国のネット通販大手アリババ・グループなどだ。国内のネット通販やスマートフォン決済市場では国内勢同士のシェア争いが激化しているが、統合によってこうした消耗戦を回避し、GAFAを追い掛ける。
◇孫氏の思惑
LINEに興味を持ち続けていた―。ZHDを傘下に置くソフトバンクグループ(SBG)の孫正義会長兼社長について、SBG関係者はこう語る。
GAFAは検索や通販サービスを通じデジタル分野で寡占的な地位を確立。こうした動きを予期してか、2000年に20億円をアリババへ出資したのが孫氏だ。追加出資分も含め同社株式の価値が約13兆円にまで膨らみ、同氏の投資の中でも最大の成功例となっている。
海外勢に対抗し得るネット企業連合の形成を目指す孫氏は「市場占有率でトップになれば収益力は高まる」などと発言し、事業規模やデータの重要性を訴えてきた。抜群の知名度と確固たる顧客基盤を持つLINEは最大のターゲットだったとみられる。
◇大経済圏目指す
SBG傘下でZHDの親会社でもある携帯電話事業会社ソフトバンクの宮内謙社長は高齢者らの利用が増え、「1億総スマホ時代が間違いなく到来する」と断言する。ZHDとLINEとの経営統合はこれを見据えたものだ。
パソコン向けサービスで成長したZHDは、スマホ向けアプリで思うように利用者を伸ばせていない。一方、LINEはスマホアプリを「入り口」として、決済など生活に関わるあらゆるサービスに利用者を誘導し、存在感を示している。
中国では、アリババがスマホ決済サービス「アリペイ」で集めた個人データを活用し、金融など多様なサービスを提供する「アリババ経済圏」を作り上げた。「和製GAFA」に向け、SBGとZHDも同決済サービス「ペイペイ」と、LINEが展開する「LINEペイ」を融合させ、大経済圏の形成を目指す考えだ。(2019/11/14-21:17)