核の傘依存、原爆の教訓無視 日本、保有国と「共犯」―ICAN事務局長

2020.08.07
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by 時事通信


国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)のベアトリス・フィン事務局長(ICAN提供)

国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)のベアトリス・フィン事務局長(ICAN提供)

 広島と長崎への原爆投下から75年。核兵器の近代化が進み、冷戦時代より核リスクが高まったともいわれる現状に対し、日本を含む世界はどう行動していくべきか。核兵器禁止条約の採択を後押しし、2017年にノーベル平和賞を受賞した国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)のベアトリス・フィン事務局長に話を聞いた。
 ―節目に当たる今年、ICANの活動の重点は。
 (世界の人々と)被爆者の体験を分かち合うことだ。各国が核の近代化を推し進め、緊張が高まる今、(核廃絶運動は)重要な時期に差し掛かっている。被爆者が生存しているうちに証言を通じて実際に何が起きたかを知り、記憶にとどめておく必要がある。
 ―核兵器禁止条約に米ロなど核保有国は不参加だ。
 これまでの核軍縮運動の間違った点は、保有国ばかりに焦点を当ててきたことだ。保有9カ国のほかにそれらを正当化している国々がある。日本や韓国、オーストラリアなどだ。こうした国々が保有国の姿勢を擁護している限り、保有国は条約反対の立場を貫ける。
 ―核軍縮での日本の役割は。
 日本は核兵器使用の実情を知っているにもかかわらず、(核の傘の下にいることで)他国にも被害が及ぶことを事実上容認している。被爆者の体験と原爆の教訓を無視しているという意味では(保有国と)共犯だ。
 国民は日本政府が核軍縮のリーダーと思っているかもしれないが、実際は(軍縮が進展しない)問題の一つだ。日本は核兵器禁止条約に参加し、被爆者に敬意を示すべきだ。
 ―来年2月に期限切れとなる米ロの新戦略兵器削減条約(新START)の延長交渉が不調だ。核軍拡競争が再び始まるのか。
 条約延長は絶対的に必要だ。(核保有の)制限をなくすのは非常に危険だ。現状では米ロとも進んで核競争に参加するだろう。両国は世界が新型コロナウイルス被害や地球温暖化問題を抱える中、軍事費をさらに増額しようとしている。
 トランプ米政権は中国の不参加を(延長しない)言い訳に使っている。もちろん中国にも削減義務があるが、条約は世界の核の9割を保有する米ロ2国間のもので、中国に責任を押し付けるのはまっとうではない。
 ―中満泉国連軍縮担当上級代表(事務次長)は英エコノミスト誌上で、「核爆発の危機は冷戦のピーク時以来最も高い」と指摘した。
 まったく同意する。現在は冷戦時代の極端な緊張はないにしろ、逆に保有国が増え、核技術も進歩し、非常に不安定で予測不能な状態だ。(2020/08/07-07:12)

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