防空壕シアター、相次ぐ予約 特攻隊の遺書を上映―兵庫

2020.08.13
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by 時事通信


巨大防空壕の壁に映し出された特攻隊員の遺書=2日午後、兵庫県加西市

巨大防空壕の壁に映し出された特攻隊員の遺書=2日午後、兵庫県加西市

  • 巨大防空壕の外観=2日午後、兵庫県加西市
  • 鶉野飛行場滑走路跡(兵庫県加西市提供)

 兵庫県加西市に残る巨大防空壕(ごう)で、特攻隊員の家族宛ての遺書を映像と音声で紹介する上映会が人気だ。予約はすでに10月まで埋まっており、「修学旅行で訪問したい」と学校からの問い合わせもある。
 同市では1943年、パイロット養成のため鶉野飛行場が建設され、全国の若者約500人が訓練を受けた。このうち七十数人が45年、特攻隊「白鷺隊」として鹿児島県の串良航空基地から出撃。63人が戦死した。市は平和学習のため、周辺の滑走路跡や防空壕などを戦争遺跡として整備している。
 外壁に土が盛られ、カムフラージュされた防空壕はコンクリート製で、奥行き14.5メートル、幅と高さ各5メートル。上映時間は約20分、観客が75年前にタイムスリップし、出撃直前の隊員に出会うストーリーで、3人の遺書が防空壕の壁に映し出され、読み上げられる。
 鹿児島県徳之島沖で戦死した海軍二等飛行兵曹椎根茂さん=当時(21)=は遺書の中で、最近、両親に手紙を出していない理由を「小生未だ意志薄弱の為か、家より情愛のこもった手紙を戴くと、私の心が何故かぐらつく」と説明。「私の突込む時は必ずお父さん、お母さんと叫んで突込みます」と締めくくった。
 家族と訪れた加西市の藤居千代子さん(63)は「本当の自分の気持ちを隠していた気がする。死にたくない、行きたくない、という思いがあったのでは」と戦死した隊員に思いをはせた。
 上映会は毎月第1、第3日曜日に1日4回(各定員20人)行われている。同市鶉野未来課の担当者は「当時の建物で映像を見ることにより、戦争の悲惨さを伝えることができると思う。平和について考えていただければ」と話している。(2020/08/13-13:31)

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