たどり着いた「裸の感覚」 新ウエア、研究重ね大舞台に〔五輪・クライミング〕

2021.08.05
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by 時事通信


ゴールドウインが開発したユニホームを着用し、競技に臨むスポーツクライミング日本代表の楢崎智亜選手=3日、東京都江東区の青海アーバンスポーツパーク(AFP時事)

ゴールドウインが開発したユニホームを着用し、競技に臨むスポーツクライミング日本代表の楢崎智亜選手=3日、東京都江東区の青海アーバンスポーツパーク(AFP時事)

 東京五輪の新競技の一つ、スポーツクライミング。4カ国の代表ユニホームを製作したアパレルメーカー「ゴールドウイン」(東京)が目指したのは、着用時の「裸の感覚」だ。デザインと機能性の両立を追求したウエアは5日の決勝に登場する日本の楢崎智亜選手(25)=TEAM au=らの活躍を支えている。
 米アウトドアブランド「ザ・ノース・フェイス」の依頼で、ゴールドウイン社が今大会のウエア製作を始めたのは2018年4月。日本と米国、韓国、オーストリア代表の男女計12人分を任された。プロジェクトを統括した後藤太志さん(32)は、選手の合宿や大会の視察などを通じ競技を学んだ。四肢を縮めたり全身を伸ばしたり、選手の動作は多様。ウエアの規格に明確なルールはなく、「軽く、動きと視界を妨げない『裸に近い感覚』」を目標に掲げた。
 研究開発は同社の拠点「テック・ラボ」(富山県小矢部市)で実施。選手5人の体にそれぞれ取り付けた七つのセンサーで壁を登る動作を計約70回計測し、基本姿勢を数値化。開発担当の木村航太さん(31)は「これを3Dスキャンした選手のデータに反映し、限りなくひずみがないよう2次元の設計図に展開した」と説明する。
 19年12月、試作品に初めて袖を通した楢崎選手は「ウエアを着ていない感覚がする」と感想を寄せたという。完成まで約2年。後藤さんは「難しかったのは美しさと機能性の両立だった」と振り返り、「選手を『かっこいい』と思ってクライミングを知った人が、競技を始めてくれるとうれしい」と期待を込めた。(2021/08/05-13:31)

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