「金がすべて」、賄賂横行か 禁止行為黙認、スマホ入手も―フィリピン入管施設、日本人元収容者証言

2023.02.06
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by 時事通信


フィリピンのマニラ首都圏にあるビクタン収容所の寝室。約4畳の部屋に2台の二段ベッドが並んでいる(星野路実氏提供)

フィリピンのマニラ首都圏にあるビクタン収容所の寝室。約4畳の部屋に2台の二段ベッドが並んでいる(星野路実氏提供)

  • フィリピンのマニラ首都圏にあるビクタン収容所内でビリヤードをする収容者ら(星野路実氏提供)(一部画像処理してあります)

 全国各地で相次ぐ強盗事件を巡り、指示役の「ルフィ」らとみられる日本人4人が拘束されているフィリピンの入管施設「ビクタン収容所」。元収容者は「スマートフォンも入手できた」と明かす。冷房付きの部屋や禁止行為黙認などを求め、職員らへの賄賂が横行していたといい、「金がすべての場所だった」と語った。
 同施設の実態を明かしたのは、人気漫画の海賊版サイト「漫画村」(閉鎖)元運営者の星野路実元被告(31)=著作権法違反罪などで実刑、仮釈放中=。逮捕前、フィリピンに滞在していた2019年7~9月の約3カ月間、収容されていたという。
 星野氏によると、施設は定員約80人の空間に一時500人超が収容されるなど環境が劣悪だった。ベッド数が足りなくなると、収容者は共用スペースで雑魚寝。通常は4畳ほどの部屋に4人が収容されるが、賄賂を渡せば冷房やテレビ付きの部屋を1人で利用できたという。
 「金で何でも手に入った」。規則上は禁止されているスマホも入手可能で、星野氏は「職員に市場価格の2倍を払い、半分は賄賂。監視カメラが少なく受け渡しは簡単だ」と話す。週4回認められる外部との面会の際に、賄賂の「原資」を受け取ることもできたという。
 抜き打ちで月1回ほど手荷物検査があったが、賄賂で見逃されることも。星野氏も収容中、さまざまな便宜を得るため、「100万円超相当の金を手渡した」という。
 外国人収容者が協力者に虚偽の告訴をさせ、強制送還を先送りさせる手法も横行していた。拘束日数が自国での刑期の一部に算入される国もあるといい、星野氏は「収容所で自由に過ごして、その後帰国するだけだ」と語った。
 「ルフィ」らとみられる日本人4人は特殊詐欺グループの幹部だったなどとして警視庁から逮捕状が出ているが、星野氏は施設内で特殊詐欺の電話をかける外国人も目撃したという。「毎月5000米ドルを払えば黙認されると聞いた。『ルフィ』グループは彼らのやり方をまねたのではないか」と推測した。(2023/02/06-07:02)

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