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「スター・ウォーズ」食わず嫌いの映画監督が見た、最新作の評価は?

2015年末の最大にして最後の話題作と言えばもちろん、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』でした。「SRサイタマノラッパー」シリーズでお馴染みの映画監督・入江悠さんは、これまでスター・ウォーズについてあまり触れてこなかったそうですが、そんな入江さんだからこそ見えたというスター・ウォーズの魅力を、自身のメルマガ『入江悠presents「僕らのモテるための映画聖典」』で伝えてくれています。

『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』に見る「おおらかで明るい未来」

年末に超話題のあの映画がやってきた!

世界で最も有名なシリーズと言っても問題ないでしょう、そうです、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』! 今回はJ・J・エイブラムスが抜擢されて監督をつとめています。

最初に白状しちゃおうと思いますが、僕はあまり『スター・ウォーズシリーズに思い入れがありません。むしろ子供の頃から積極的に避けてきた、と言っていいと思います(ファンの方、すみません)。

それは、僕が昔からへそ曲がりで偏屈だったのに少し理由があります。

みんなが「スター・ウォーズ!スター・ウォーズ!」と騒いでいたので、(一番騒いでいたのは、世代的には僕よりもちょっと上になりますが)、勝手に反骨心を燃やし、「そんなに言うなら、逆に観るもんか!」とずっと避けていたのです。(めんどくさい子供だなあ、という自覚はその当時からありました)。

その後、断片的には観ていましたが、体系的にちゃんとシリーズを観てきませんでした

そんなわけで、今回久しぶりの新作である第7作目『フォースの覚醒』も、直前まですぐに観るべきか迷ったのですが、さすがにもういい大人だし、ちょっとはカジってみたいし、いまさら反骨でもないだろうと思って観に行ってきました。

旅先の広島夢売劇場 サロンシネマ」で(めちゃユニークな劇場です!)。

そしたら、今までほとんど思い入れがなかったせいか、今回とてもクリアにあることに気づいたのです。『スター・ウォーズ』の持つ唯一無二にして巨大な魅力と、まさにそれこそが子供の頃、自分が反発していたものだった、ということに。

おそらく、その魅力については、初期『スター・ウォーズ』にハマった方々はみんな気づいていたはずで、なにをいまさら、と言われるかもしれません。それは、こういうことになります。

この宇宙世界の未来はなんとなくおおらかで明るい

子供の頃の僕は、ダークで過酷な近未来を描いたSFが好きでした。

さまざまな書籍や寄稿文などでもよく書いているのですが、僕はけっこう根暗で病弱な子供だったためか、ひねくれていました。かなりの年齢になるまで、「世界よ滅んでしまえ」と思っていました。荒廃してすべてが一度ガラガラポンとリセットされればいい、なんていう恐ろしいことも、無責任に夢想していたのです。

同時に、そういう殺伐とした未来では自分は生きていけないだろう、という予感めいたものもあり、その怖さもあって暗いSFを観ていたのです。ジョン・カーペンターの映画、『ターミネーター』シリーズ、ポール・バーホーベンの映画、『エイリアン』シリーズ、などなど。

それらは未来におけるある種のディストピアを描いており、端的に言って「人類と地球の未来は暗い」という前提に立っていました。

その認識は、僕は今でもまったく間違っていないと思います。

36歳という大人と呼べる年齢になって、国際社会政治状況を見回してみても未来が明るいとは決して思えない。あの頃、僕が愛して、今も愛しているSF映画たちは、とても明晰に将来を予見していたと思います。

その中で、おそらく唯一と言っていいほど異彩を放っていたのが、『スター・ウォーズ』でした。

明るかったのです

惑星間の戦いや生死をかけた攻防はもちろんありますが、当時の他のSFに比べると、僕の目から見る限り、圧倒的に明るかった

そして、今も圧倒的に明るい

ひとつの惑星には、多種多様な生物種が住んでいるようだし、見た目のかなり異なる種族も同じ社会にいることを許容されている

どこまで社会的な差別があるかわかりませんが、少なくともルックス自体がかなり異なる者たちが、狭いバーで酒を飲んだり、交易をすることが当たり前になっている。

種族間でゆるやかな棲み分けはできているようだけど、権力機構からの管理的なゾーニングをなされているわけではないらしい。

お金がない家に生まれた子供はずっと階層が固定化される、ということもあんまりなさそうだし、ある程度の才能と、船があれば、他の惑星にも行けるっぽい。一旗あげようと思ったらまだ可能性がある

つまり、おおらかです。

これは、ひねくれた子供である僕が好きだったSFとは違います。

僕はもっと殺伐として暗い、死にたくなるような近未来SFが好きでした。そんな世界だからこそ、戦い、逃げる価値があると思っていました。(もちろん、作品世界内だけのことですが)。でも今年、2015年の最後にやってきた 『スター・ウォーズ』最新作、それを観て、僕はホッとしてしまったんです。

なぜでしょうか。今の社会が暗いから、とは言いたくはありません。ただ、子供の時よりも今の方が、僕は未来に対して、暗い展望を抱いています。また戦争とか起きない?大丈夫?と勝手に心配したりしています。そのことと、ホッとしたことは無関係ではないようです。

スター・ウォーズ/フォースの覚醒』に出てくる新キャラクターたち(女性も、男性もとっても魅力的でした!)、彼ら、彼女らのように活躍できる人は実際にはどれくらいいるんでしょうか。

恐ろしい暗黒的なデス・スターはいるけれど、おおらかな世界だからこそ、あのフレッシュマンな男女は活躍できたはず。僕らのいる世界も、少なくとも、あの男女のようなヒーローが生まれる土壌(それは多様性寛容性と切っても切り離せないと思いますが)、そういうもの残された世界であって欲しいなと思います。

というわけで、社会が変わったからノレたのか、それとも、僕が歳をとったからノレたのか、どちらかはわかりませんが、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒面白かった

これからの第8部、第9部にも大いに期待したいと思います。

何よりも、レイ可愛いし格好いいよ!ということで星は3つ!☆☆☆

今回の教訓

世相が暗くなると、明るくおおらかなSFが輝き出す。

2016年はどんな一年になるのでしょうか。少しでも明るい年になりますように!

image by: Aaron Lim / Shutterstock.com

 

『入江悠presents「僕らのモテるための映画聖典」』より一部抜粋

著者/入江悠
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