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楽しんでください。視覚障碍者が伝える「あなたの知らない世界」

目が見える人間にとっては想像がつきにくい「見えない」という世界。それだけに、視覚障碍者の方とどう接していいのか迷ってしまうことも多いかと思います。無料メルマガ『視覚障害児ママ応援ホームページ「Mothers’ Cafe」』では、自らも先天性全盲として誕生した著者の西田梓さんが、「違いを面白がってもらいたい」と綴っています。

違いを面白がってもらいたい

最近知り合った見える人数人から同じことを言われました。

「あなたを見てると、自分がどれだけ努力してないかわかる」
「あなたを見てると、自分がちっぽけに見える」

みなさん、視覚障碍者に出会うのは私が最初という方ばかりでした。ちっぽけな人なんていないし、誰かと比べて私が特別努力してるということではないと思います。

前々から感じていますが、障碍者は極端に2つに分けられるのではと思います。どちらも経験しています。

1.何にもできないかわいそうな人

「目が見えないなんてかわいそう、大変ね、がんばってね」というタイプです。そんな人が子どもなんて連れてようもんなら、子どももろとも「かわいそうでえらい生き物」に分類されてしまいます。「えらいね、お嬢ちゃん立派だね。ママを助けてあげてね」ということになるわけです。

2.超能力者!

「目が見えないのに料理ができるんですか? 外を歩けるんですか? 素晴らしい!!」というタイプ。すごい能力のある 何でもできる天才みたいに思われてしまいます。こういうタイプの人からよく言われることは「感覚でわかるんですか?」というもの。 確かにそうなのですが、何を伝えても「へぇ、感覚ですか?」という答えが返ってくることが多い気がします。こういうタイプの人が使う感覚という言葉は超能力的な印象を受けます。そういう人には、どういうときには指先の感覚を使い、どういうときには手のひらの感覚を使っているか、足裏の感覚や音はどういうときに使っているかをお話しします。一言で「感覚」といっても、それはさまざまなものであるからです。

上に書いた2つの人のタイプに共通することは 「今自分が目が見えなくなったら」 という気持ちだと思います。今目が見えなくなったら、怖くて料理なんてできない。今目が見えなくなったら一歩も家から出られない。こういう思いから「かわいそう」であったり「天才」という表現になるのでしょう。

見える人に見えない私の生活をお話しするときに絶対に伝えていることがあります。私は昨日今日見えなくなったわけではありません。生まれたときから耳や指先というさまざまな視覚以外の感覚を使って暮らしています。そうやって積み重ねた経験があるからこそ、見えなくても料理や1人での外出ができるのです。

テレビで取り上げられている障碍者は何かに向かってひたむきに努力している人が多いと思います。それは素晴らしいことだし、メディアが応援してくれるのもいいことだと思うようになりました。でも、そこにすべての障碍者が当てはまるわけではありません。

今書いてきたことを私の場合に当てはめて考えました。同じ視覚障碍者でも、私は盲導犬のことはまったくといっていいぐらいわかりません。本やテレビで多少の知識はありますが、それは見える人と変わらないと思います。盲導犬ユーザーの友達ができたことから、いろいろと知らない世界のことを教えてもらうのはとても面白いです。これが視覚以外の障害になるとなおさらわからないことばかりです。

奥さんは健常者で、だんなさんは車いすユーザー、お子さんがいる方と話す機会がありました。お父さんが保育園までお子さんの送迎をしているという話を聞いて「どうやってやってるんですか?」と聞きました。そして、私の知らない世界のことをたくさん教えてもらいました。

こうやって「知らない世界のことを知る」というのはとても面白いし、楽しいなと思っています。私と出会った人たちに見えない世界のことを伝え、面白がってもらえたらなと思います。「なるほど、こんなやり方があるのか!」 と発見してもらえたらと思っています。

見える人、見えない人だけに関わらず、いろんな人が相手のことを知って、ちょっと気にかけてもらえたら、もっと暮らしやすくなるのではと思っています。さっき書いた1.と2.の間で生きてる視覚障碍者、私の周りにたくさんいます。もちろん私もその中の1人です。失敗も挫折もするし、がんばりたくないときもある。好きなこともあるし、がんばりたいなと思うこともあるし、努力してることもある。それが「目が見えない」ということで私が思う1.か2.に分類されてしまうのはとても残念でなりません。

私にやれることは、ありのままを知ってもらうことだと思っています。視覚以外の感覚を使って暮らしていることや、今までに経験してきたいろんな出来事を知ってもらおうと思います。目が見えないだけであって、後は「普通」なんです。それをこれからも伝えていこうと思います。

image by: Shutterstock

 

視覚障害児ママ応援ホームページ「Mothers’ Cafe」
全盲の母親である私が、視覚障碍児を持つお母さんを応援したい、そんな思いで立ち上げた「Mothers’ Cafe」。エッセイ掲載やイベントの情報であるHP更新情報をお伝えするメルマガです。
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