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北海道新幹線開業の陰で…消えゆく「夜行列車」たち

北海道新幹線開業で列車が消えていくー。鉄道ファンにとっては悲痛な叫びが聞こえてきそうです。無料メルマガ「客車隊報」の発行者である海峡同盟で代表を務める中尾一樹さんが廃止が決まった「カシオペア」と「はまなす」について解説しています。

名残惜しい消えゆく列車たち

北海道新幹線開業の陰で、消えてゆく列車もあります。

そう、♪上野発の夜行列車~と歌われた夜行列車たちです。

現在JR線を走る夜行列車はわずかに6往復(寝台特急「カシオペア」「サンライズ出雲」「サンライズ瀬戸」、急行「はまなす」、快速「ムーンライト信州」「ムーンライトながら」)しか残っておらず、そのうちの2往復がまもなく消滅します。

このうち「カシオペア」の車両はツアー形態のクルーズトレインとして残るようですが、運行ダイヤや価格などが大幅に変わってしまいます。

そして「はまなす」は列車のみならず車両も廃車されてしまう予定ですので、夜行列車体験をしてみたいという方は残された時間を有効に活用し「乗車体験」されることをおすすめいたします。

寝台特急カシオペア」は全車二階建てのA個室となっており、料金的にもかなりお高いのですが、高いなりにサービスは充実しております。

撮影: 中尾一樹

一般利用できるものとしては事実上最後となるであろう食堂車が連結されており、車窓を流れる星空や風景を見ながら食事ができる貴重なチャンスです。

撮影: 中尾一樹

あいにくディナータイムは予約制で、今では「カシオペア」に乗ること以上に予約が困難な状態ですが、夜間のパブタイム(食事もできます)や翌朝のモーニングタイムは先着順のため、まだ体験することは可能です

上野発なら朝焼けの大沼湖畔噴火湾の海岸風景を見ながら食べる朝食は格別で、かつて北海道を行き来していた特別急行列車(←あえてこう記す!)の食堂車を彷彿とさせてくれます。

撮影: 中尾一樹

そして今回、完全に消滅してしまう鉄道文化が「(JRの)急行列車」です。

イベント列車や団体列車では急行が健在ですが、毎日運行される定期列車としての急行はこの「はまなす」が最後となりました。

今のところ「はまなす」がなくなっても急行料金という規則は残るようですが、今後の展開が気になるところです。

さて、その「はまなす」ですが、青森と札幌を結ぶ夜行列車でもあります。

撮影: 中尾一樹

通常の用務客のみならず、ライブやロックフェスといった今風の需要も多く、エゾロックや「嵐」のコンサートなどの前夜には最大12両編成まで増結されます。

さらに札幌発は胆振地方の最終列車としての機能をも持つため、地元自治体から何らかの形で残してほしいという要望さえあったほどです。

新幹線開業後は、東室蘭までは特急「すずらん」が増発されることになりましたが、そこから先は完全廃止となってしまうため、今後は夜行バスに乗るしか選択肢がなくなってしまいます

撮影: 中尾一樹

「はまなす」のもうひとつの特徴は寝台車と座席車の両方を連結しており、寝台車は古典的(?)な開放式B寝台車。

座席車は指定席と自由席で大幅に設備が異なります。

まず寝台車からご説明すると、昔ながらの二段ベッドが並ぶ室内は、もはやこの列車でしか体験できなくなっています。

ちなみに「開放式」とは個室ではない寝台という意味で、B寝台とは昔の3等寝台を指します。

現在わが国に存在する最後の二段式開放寝台でもあるため、この機会を逃すと一生乗車できなくなる可能性があり、そのため寝台券の確保が極めて困難な状況が昨年から続いておりますが、映画「風立ちぬ」にも登場した昔ながらの寝台車を体験したいという方は、根気よくみどりの窓口に通ってみてくださいませ

そして座席車ですが、指定席は3種類の「座席」タイプがあります。

一番人気なのが「カーペット車」で上の段はベッドタイプ。下の段はカーペットに雑魚寝するスタイルで、昔の青函連絡船桟敷席を思い出します。

寝台車と違い格安で利用できるため登場時から人気が高く、真っ先にこのタイプが売り切れます。

次に人気なのが「ドリームカー」で、元特急用グリーン車のイスがついているため、背もたれが深々と倒れます。

1950年代以来の伝統たるゴツいフットレストやテーブルが特徴で、このシートもいまや絶滅危惧種です。

最後のひとつは通常は自由席として使われるシートで、国鉄特急型ではおなじみだった簡易リクライニングシートです。

このシートを連結した3号車と7号車は混雑が予想される時期には指定席として発売されるため「ハズレ席」などと呼ばれてましたが、廃止寸前の今となってはそんな贅沢を言ってる余裕はないでしょう。

最後に自由席ですが、これは予約不要で、当日早くから並べば乗車できます。

ただし最終運行日となる3月20日(札幌発)と21日(青森発)は全車指定席となりますので、自由席に乗りたい方はこの両日をさけて乗るようにしましょう。

以上かけ足でご紹介しましたが、今しかできない旅をあなたも体験してみませんか?

Image by: 中尾一樹

Source by: 客車隊報

客車隊報
著者/中尾一樹(海峡同盟 代表)
青春18きっぷやクルーズ列車等の情報を中心としたメルマガを配信中。旅行サークル「海峡同盟」では青春18きっぷで北海道に行けなくなる可能性が発生したことをきっかけに2001年に結成。最近は海峡特例を守ることを目的として、国土交通省・運輸審議会が主催する公聴会に参加し公述人として意見するなど活動を行っている。
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