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ChameleonsEye/Shutterstock

iPhoneに勝てない戦場プロカメラマンの苦悩

iPhoneやスマホの性能が上がったことで、デジタルカメラの市場が縮小傾向となっているそうです。そのあおりをもろに食らっているのがプロのカメラマンやジャーナリスト。世界各地の戦場で取材を行ってきた軍事ジャーナリストの加藤健二郎さんは、自分のメルマガで、移りゆくメディアの変遷に振り回された苦悩を綴っています。

主力商品チェンジ殺法

カトケンが報道カメラマン&ジャーナリストとして雑誌デビューしたころ(1989年)は、まだ、写真1枚を単体で雑誌などに売ることが難しくない時代だった。1989年に11日間の北朝鮮滞在をしていたこともあり、その時代の恩恵にあやかれた。しかし、時代は急速に「写真+記事」でセット販売できないと仕事にならない時代になってゆく。EOSなどオートフォーカス一眼レフカメラの普及により、記者や旅行者が手軽に良い写真を撮れるようになったからだ。もちろん、職業カメラマンの写真の質の方が上だったが、雑誌の読者はそんな些細な差を求めていない。

カメラマンの主力商品は写真からネタに移ってゆく。富士山を最高のクオリティーで撮った写真よりも、ピンボケ手ブレで撮った金正日のプライベート写真のほうが圧倒的に価値が高い。こうなってくると、「写真+記事」でさえ、内部流出的なものには勝てなくなる。

では、報道カメラマンは次はなにを主力商品にすべきか。カトケンは、軍事オタクだった専門性を活かして、武器や戦略の重要ポイントを撮影することで、他の撮影者に差をつけることにした。狙撃銃は、銃身先端を明確に撮る、薬莢の刻印文字を接写する。戦車側面のエンジンの出っ張りから出力アップ改造型であることを撮る。などなど・・・・。このやり方なら、一流報道カメラマンには勝てる。

だが、21世紀になる頃から、インターネット検索時代に入り、もともとの軍事知識を持たない者でも、グーグルなどで検索して専門的画像や解説にアクセスできるようになる。よくわからない武器でも撮影可能な全てをあらゆる角度から撮影しておいて、売り込み執筆時に、出版社の人と一緒に武器名やその武器の性能特徴などを検索すれば、専門的な記事を書けてしまう。

>>次ページ YouTubeの台頭でリアル兵士に負けるカメラマン

さて、またしても、市場から追い出されそうなカトケンはどうするか。武器の性能や特徴などはグーグルで出てくるが、現場での使用感は現場で軍事視点で見てきた者しかわからないので、カトケンは使用感を含めたキャプションを売りにすることにした。自分のホームページ「東長崎機関」で戦場や武器の写真はアップしてあったので、その画像の使用は無料としつつも、、画像中の説明については、お金を取るという手法である。テレビ局などイメージ写真としてしか使用しない媒体は無料で持っていったが、写真の内容説明が必要な深みのある記事に対してはビジネスになった。だが、もう薄利少売だ。

さらに2011年ころから、次の段階が来る。戦場の兵士や戦士たち自身が、YouTubeにどんどん映像をアップしてゆく時代になってしまった。これで、戦場カメラマンは静止画屋も映像屋も、市場から必要とされない職種になったといっても過言ではない。日本人のようなよそ者がカメラ担いでウロウロ行くメリットはない。最前線に固定されたビデオが砲撃で破壊されても、SDカードが生きてればよい。このころから、「ゆっくり喋り」で売り出した戦場カメラマン渡部氏が脚光を浴びる。戦場カメラマンの主力商品が写真でないことを端的に表した現象だ

ミリヲタのカトケンは、ネット上にある膨大に戦闘映像と、グーグルアースの画像で、戦場を俯瞰して作戦戦略を推測することにした。これは、ヲタクでなければできない陰気な作業だ。戦場報道は、世界のどこへでもすっ飛んでいくアウトドアーな人向きの職業ではなく、室内のヒキコモリ向きな仕事になっていく。

このように、1つの職業でも、主力商品がどんどん変わってゆく、その変化についてゆくのではない。その変化を創り出すのだ。そのためには、過去の自分の主力商品をゼロ円提供してゆく勇気が大事である。世間の流れによってゼロにされてしまうのを待つより、先手を打って自分の手でゼロにしたほうが新市場を主導できる。

さて、2004年より、バグパイプ奏者(音楽業界)に転向してるカトケンは、奏者の主力商品をどうチェンジしてゆく?

異種会議:戦争からバグパイプ~ギャルまでより一部抜粋

著者:加藤健二郎

異種雑談会の内容:建設技術者→軍事戦争→バグパイプ奏者、と転身してきてる加藤健二郎の多種多様人脈から飛び出すトーク内容は、発想の転換や新案の役に立てるか。時折、ノウハウ的な面を濃くするため、全員公開でなく、有料にしました。ノウハウはその他大勢が知ってしまって武器にならない。

≪初月無料/購読はこちらから≫

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