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昨今の「日本すごい」の風潮、でも調べたら未来のほうがすごくなりそう

最近テレビなどで日本人による自画自賛系の番組が増えています。確かにやり過ぎな面もありますが、世界をアッと言わせる発見や発明を、今もなお生み出し続けているのも事実。ではそんな日本人独特の気質とは、どういったものなのか。『国際戦略コラム』の著者・津田慶治さんは、和食が進化していった過程や、近年の“公害史”などを紐解きながら、日本人が等しく備えるマニアックさと、それへの誇りについて論じています。

日本が世界を変える

中国人が日本を旅行すると、礼儀の正しさ、街の綺麗さ、店員の親切さなど驚嘆している。欧州より日本の方が綺麗であると驚嘆している。また、日本からのイノベーションが多くなってきている。

トヨタの水素自動車、がん治療の新免疫治療法、老化の原因AGE(エージーイー)=終末糖化産物の発見、7種類のサーチュイン遺伝子を全て活性化させる物質若返り薬NMNの発見、廃ペットボトルを分解する遺伝子組換え大腸菌の開発、海洋温度差発電を実用化した「ウエハラサイクル」の発明など、今後、世界を変える発見、発明の山が日本または日本人からできている。これは、日本人や日本が世界を変えることになりそうである。その検討である。

0.日本が発展した原因

5389の「日本の原理とは何か?」でも述べたが、日本文化の頂点は3回ある。1回目は縄文時代で三内丸山遺跡でわかる通り、縄文土器で、どんぐりや栗、海山物を煮る美味しそうな食文化がすごく、また縄文時代から漆器が使われていたことが分かっている。黒曜石の商人が日本海を越えて交易していた。

もう1つが、江戸時代であり、中国文化を完全に吸収して、その上に独自文化を積み重ねて、江戸文化にしている。食文化としては、寿司、そば、天ぷらなどを生んだ。

もう1つが、今後の日本文明であろうと思う。西洋文明を完全に消化して、その上に江戸文化や独自文化を重ねた日本文化を作るように感じる。

中国文化吸収には、吸収段階が2段あった。縄文時代から弥生時代になると、中国文化が朝鮮を伝わって流れてきて、飛鳥時代には直接、遣隋使を通して中国から文化を得るようになる。663年(天智2年)8月の白村江の戦いに敗北したことで、中国の律令制を導入した。しかし、平安時代には遣唐使を廃止して中国文化を日本化して、ひらがなやカタカナを作った。

次の吸収は、鎌倉時代に南宋が滅亡して、貴族が大量に日本に亡命したことで、南宋の文化を移した五山文化ができることである。室町時代には、「わびさび」の文化や書院造り、精進料理として、日本に定着する。

中国は南宋後、漢民族の王朝はできずに異民族支配が続き、日本が導入できる文化的なものがなくなる。室町時代に遣明使を送るが、中国文化を持ってきていない。そして、南宋の文化を元が焚書抗書したことで、水墨画や書以外の南宋文化は中国では絶滅した。

このため、茶道、華道などは中国にはなくなっている。

平和な江戸時代に、その上に独自文化を生み出すことになる。

しかし、明治を迎えて、西洋文明が押し寄せて、日本は西洋文化を吸収し始める。技術を導入したが、思想も同様に導入する。大きな思想は帝国主義であり、このため、戦争に勝つことが必要と富国強兵政策を取る。

しかし、第2次大戦で敗北して、日本は一転、強経弱軍の思想にして、経済的な技術を積極的に導入したが、公害問題が起こり、国民は経済中心ではなく、国民生活中心にするべきと思想が変わる。

その思想のもとで、地球全体の危機として認識されている省エネや温暖化問題解決、医療などの分野で日本、日本人は多くの活動をして、発見、発明を重ねている。

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1.和食の歴史

日本の歴史を見ると和食の変化が大きく、この歴史を見ると日本の文化変遷が大きく捕らえることができる。

縄文時代には、日本で土器ができて、それまで食物を焼くことしかできなかったのが、煮ることができるようになる。いろいろな食材を煮ることで、旨みが出ておいしい食事をしていたことがわかってきた。

しかし、中国文化が導入されると、汁物がなくなり、平安時代の大饗料理となり、生物や干物などを切って並べたもので、味付け自体は、自分の手前に置かれた四種器と呼ばれる小さな皿に、塩や酢あるいは醤(ひしお)などを自ら合わせ、これに浸けて食べるだけであった。これでは、縄文人より食事という意味では、劣化した印象である。

そして、鎌倉時代に南宋から来た禅の精進料理が導入されると、動物性タンパクが取れないので、代わりに大豆を利用した。大豆は栄養価が高く、タンパク質を豊富に持つが、生食は困難であるため、風味を向上させ、長期保存し、おいしくする目的も含めて、味噌、醤油、豆乳、湯葉、豆腐、油揚げ、納豆などが生み出す。また、もどき料理と呼ばれるものができて、植物性原料を用いて、動物性の料理に似せたものを作った。

このように大豆を使った加工食品が加わり、かつ味噌から味噌汁ができて、日本料理の骨格ができたのである。

江戸時代なると、ファーストフードのブームが起きて、江戸前寿司、天ぷら、そば、うなぎなどが加わるのである。

戦前には軍隊で食べていたカレーや菓子パンが、そして戦後、ラーメンが日本食に加わるのである。

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2.公害問題と温暖化で次の日本に

第2次大戦後、多くの工業都市ができるが、そこで問題なったのが公害問題である。戦前にも足尾鉱毒事件があったが、地域農民の反対運動を農民移転という方法で解決して、鉱毒を止めることはしなかった。

このため、鉱毒事件は戦後も続き、神通川のイタイイタイ病や水俣病などになる。

しかし、戦後、四日市のぜんそく問題は、川崎などにも移転して、公害が大きくなり、1960年代後半からは反対運動が全国に起こり、訴訟になっていった。このため、国も対策に乗り出して、1970年に公害関連の法律を整備して、1971年には環境庁も設置する。

喘息の原因は、煤煙に含まれる二酸化硫黄であり、この除去技術ができて、大型のコンビナートで脱硫装置されて、ぜんそくが収まる。公害防止装置の投資を見ると、1970年から1980年までが一番多い。

都市の公害は、自動車の排気ガスが問題であり、いかに少ないガソリンで走るかということになっていった。この最初の回答が、ホンダのCVCCエンジンで1972年に発売される。

次に、1997年にトヨタがモーターとエンジンのハイブリッドで走るプリウスを発売開始した。ホンダもインテグラで続いたが、マツダは、2011年に高圧縮した燃焼させるスカイアクティブエンジンという回答を出してきた。

このように、公害問題をクリアするためと、省エネのために自動車も大きく進歩している。

そして、トヨタが2014年に水素自動車を発売した。これは意味合いがこれまでとは違う。省エネという意味ではなく、水素社会を切り開くモデルとして、新しい世界を想定したことになる。

温暖化防止には、化石燃料を燃やす火力発電所をやめて、再生可能エネルギーで発電する必要があるが、太陽光、風力というどこでも可能な再生可能エネルギーは、不安定という欠点がある。

この欠点を補うのが燃料電池であり、電気から水素を作ることもできるし、水素から電気を作ることもできる。2次電池として使えるのである。しかも、水素という気体になるのでタンクがあれば本体は嵩張らない。2次電池に比べて、非常に軽いし価格が安いので、設置が容易になる。

原子力発電所は、米国の試算では、石炭火力、天然ガス火力よりコストが高く、風力や太陽光よりも随分と高いと出ている。日本の経産省の廃棄コストなどの見積がおかしいと見ている。使用済燃料の問題もあり、将来性に大きな問題が山積している。当面、原子力というのはあるが、新規に軽水炉型原子力発電は、どう見てもおかしい。

ということで、将来は再生可能エネルギー+燃料電池の組み合わせで電気を作り管理していくことになると見る。

現時点、水素自動車を実現させようとしているのは、日本しかない。他の国は自動車に水素は向かないと言っている。ということで、日本が最初に水素社会になるしかないようである。

>>次ページ 日本の強み

3.日本の強み

現在、中国の富国強兵政策が、周辺国の脅威になってきている。このため、米国の軍事力でも中国と対抗するのは難しくなってきた。日本も弱軍を見直すことが必要になってきたが、一番の日本の強みは、物理分野でも生化学分野でも、一流の学者や技術者がいて、何かの問題があると、その分野で対処法や戦略が見つかることである。

このような日本の背骨が、日本人一人一人が専門家に徹することである。専門家として、誇りを持って仕事していることだ。

この仕事の感覚は、石門心学の影響が大きい。サラリーマン道などと道をつけることが多いが、この道は、真剣に行うと独自の境地が開かれるという日本人の信念に裏打ちされている。

このため、多くの日本人が、専門家として非常に狭い範囲であるが一流の領域にいる。この一流の専門家を集めて作るので、一流なものができるのである。

研究者も同様である。1つの研究に数十年という時間を使い、そして、成果を出している。

日本が世界を変える理由は、歴史的に西洋文明と中国文明を吸収して、その上に精神的に専門に拘わる性格であるようだ。

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国際的、国内的な動向をリアリスト(現実主義)の観点から、予測したり、評論したりする。読者の疑問点にもお答えする。日本文化を掘り下げて解析して、今後企業が海外に出て行くときの助けになることができればと思う。
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すごい! 日本のダム

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