ライムスター宇多丸さんのラジオ番組に登場した秋元康さんが語ったご自分の作詞方法。さすがはヒットメーカー、その発想法や言葉の選び方などは、私たちの仕事の現場でも役に立ちそうです。番組をチェックしたタレントのトコさんがメルマガで紹介してくださっていますよ。
秋元康さんの作詞術
先週、ラジオが聴収率週間で、豪華ゲストか各番組に続々登場。テレビと違い、ラジオはゆっくりお話を聞けるので、おもしろいわ。
で、6月13日のライムスター宇多丸さんのウィークエンドシャッフルに秋元康さんが登場。「バカのフリしてオファーしたら、ほんとに来てくださることになりましたっ」と、予告があったので、楽しみにしてたのよ。
バカのフリって、大切よね。出演してほしいけど、絶対無理だろう、と思う相手こそ、そんなやんちゃなオファーをおもしろがってくれると思うのよ。
さあ、この日は、作詞家・秋元康としてのお話しです。ポイントをいくつか書き起こしました(録音していてよかったぁ!!)。
まず、発想は。
「私はあなたが好き」ということを表現するのに。
「私はあなたが好き」という山を、どう登る(言えばいい)のか。
ということを考えること。どう好きなんだ、どんな突飛な登り方があるだろうか。
好きを表現するのに、「この紙マッチが消えるまで君を見つめていたい」とか。
夏を表現するのに「木洩れ日の密度で」とするとか。
使いたい言葉から詩を作る。
「シュシュ」「フォーチュンクッキー」「フラゲ」「カチューシャ」
これらの言葉を使いたくて使いたくて。でも、それが頭の中で風化したころに、使うんだって。
おもしろいことを見つけて歌にする。
「アボガドじゃなくてアボカドなんだ」とか。
スタジオで、宇多丸さんを見て「夜でもサングラスかけてるんですねー」。
なので、「夜でもサングラスをかける男」という発想を覚えておく。
「マチナリ」がどうなるか。
街で鳴る、という言葉らしいけど。
昔は、ラジオや有線放送や、パチンコ屋など、音楽が街にあふれていました。
その時に、その音楽が、街の中でどう聞こえるか、を考えて作ってきた。
ただし、ヘッドホンステレオができて、マチナリはなくなったよね、と。
同じ言葉は1曲の中で使わない。
これは、コラムでも同じね。
>>次ページ なぜ「雨の亀戸」が「雨の西麻布」になったのか?
詩の中で、カメラが動いているか、を意識する。
例えば。
始めは俯瞰で、、主人公がカフェのテーブルに座っているとする。
カメラが寄った時に、どこに寄るのか。
何を飲んでいるのか?
何を持っているのか?
2コーラス目は、回想シーンで。
など、情景を思い浮かべて、ピースをはめていくそうよ。
1曲の3~4分を飽きさせないために、場面を転換させる。
だから、秋元康さんの曲は、3番の最後に衝撃的な結末があったりするのかも。
あざとさを狙うな!
「ガラガラヘビがやってくる」というとんねるずの曲。
おもしろいことやろうよ、と作ったら、予想外に子供にうけた。
そこで、次に子どもを狙って作ったら、ウケなかった。
これがあざとさ、ということ。
「雨の西麻布」も最初は、「雨の亀戸」だったそうで。
亀戸だと、狙い過ぎだな、あざといな、ということで、西麻布に変更したらしい。
さらに『放送作家』らしい発想も。
ドラマ主題歌では。
「愛が生まれた日」(94年)
デュエット曲って最近ないな、とデュエットで行こうと決める。
出だしのベタさもたいせつ(恋人よー)。
秋に始まる新ドラマだと、最終回は、クリスマス頃だな、と考えて。
プレゼンをした。
その曲のタイトルは「クリスマスキャロルの頃には」。
稲垣潤一最大のヒット曲になり、いまだにクリスマスには聞くよね。
「海雪」
黒人のジェロという歌手がいて。
かけ離れたことが面白い→ど日本、女言葉。
で、黒人演歌歌手ジェロが誕生。
まとめると。
あまり聞き手側を考えずに、自分が面白がれることをする。
ささるフレーズを入れておく
あざといものはだめ
山をどう突飛な方法で登るかを考える
まあ、これだけ聞いても、作詞家になれるわけではありませんが。
文章を書く仕事で、「愛」「夢」「希望」「未来」なんて言葉を安易に使っている人たちは、ちょっこし反省するべきだと思う。
あ、反省したら、ライバルが増えるから、黙っておこう。
image by: wikipedia
著者/トコ(タレント・コラムニスト)
女性のための女性の団体一般社団法人「ピュアウーマン」代表、「アサデス」「めんたいワイド」コメンテーター。おひとりさまライフを書いた「おひとりサマンサ」(西日本新聞)が大人気。
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