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金正恩氏も視察。「北朝鮮アニメ」制作現場の裏側

北朝鮮国内で実際に発行されている新聞や雑誌の記事を、そのまま翻訳してお届けするメルマガ『平壌旬報』。今回は、北朝鮮国内におけるアニメ制作の現場をレポートした貴重な記事をご紹介。海外展開も視野に入れつつ、まさに国の威信を挙げてアニメ作りに取り組んでいる様子が、リアルに描かれています。

朝鮮4.26アニメ映画撮影所

北朝鮮でもクールジャパンに劣らずアニメは人気のコンテンツのようですね。製作現場も映画やテレビドラマに引けを取らないほど高く評価されている様子。ここでのアニメは、セル画を基本とした時代からの延長のようです。
(登場する企業及び団体名、人物の肩書及び年齢は、書かれた当時のものです。現在とは異なる場合があります。また、文中の発言は各個人の見解を示すものです。一部敬称略。平壌旬報編集部)

(以下本編)

去年11月に朝鮮のTVと新聞、放送を通じて、金正恩元帥が朝鮮4.26アニメ映画撮影所を現地指導したニュースが報じられた。

私たちは、元帥の教えを守ろうと立ち上がったクリエーター、アーチストたちに会おうと、ピョンヤンをのどかに流れる大同江の岸辺に位置する朝鮮4.26アニメ映画撮影所を訪ねた。

静粛でありながらも勇壮な姿に建てられた撮影所の構内に立ちこめる静寂を破りはしないかと恐れながら正門をくぐるとオ・シンヒョク(59歳)芸術課長が親しく迎えてくれた。

「国の仕事に、あれほどお忙しい中でも、元帥は、アニメ映画撮影所に新たな転換をもたらし、それを火種に映画革命の炎を燃え盛らせようと、私らの撮影所を訪ねられました。あまりに予想外に、元帥を仕事場にお迎えして、貴重な教えを受ける栄光を授かったすべてのクリエーター、アーチストたちのそれぞれの胸では今、強烈な感興で湧きたっています。いま私たちの撮影所は、元帥が下さった綱領的な課題貫徹のため、奮闘しています。」

オ・シンヒョク課長は、こう言って、元帥が先ず初めに向かった沿革資料室に私たちを案内した。

>>次ページ 朝鮮4.26アニメ映画撮影所の歴史とは

沿革資料室で

オ・シンヒョク課長は、私たちを沿革資料室に案内して、白頭山絶世偉人たちの暖かくて精力的な導きのもとに、朝鮮4.26アニメ映画撮影所が歩んできた輝かしい道のりについて話してくれた。

朝鮮4.26アニメ映画撮影所は、金日成主席の発意により1957年9月に設立された。

成長する新しい世代のためのアニメ映画を数多く創作することについての主席の教えを高く掲げて、アニメ映画制作団(当時)では、朝鮮で初の児童(こども)映画、人形映画の「金の斧と鋼の斧」、「不思議な桃」を世に問うたのに継いで、主席自らご覧になって評価された児童映画「楽しい原っぱ」、「鹿と虎」の製作で第一歩を踏み出した。

児童教育の大切さを深く慮られた主席は、50年余り前の1964年12月、朝鮮労働党中央委員会政治委員会拡大会議で、映画芸術の発展と関連した綱領的教えを授けられ、児童映画撮影所を新たに設立し独自の創作集団へと発展させて下さった。

そうして1960年代だけでも知覚教育的意義のあるアニメ映画を数多く製作することになった。

「私らの製作所は、文学芸術の英才、金正日元帥の精力的な指導と支援により、強力なアニメ映画製作基地として、より一層の発展の道を歩んできました。」

オ・シンヒョク課長の話を聞きながら、沿革資料室に厳かに掲げられた将軍の写真を見上げる私たちの胸はますます熱くなった。

逸早く文学芸術部門を指導された日々に、将軍は、朝鮮4.26アニメ映画撮影所の強化発展(パワーアップ)のため実に大いなる心血を注がれた。

将軍は、主席が聞かせてくれた説話(昔話)を児童映画にする作業を期して、采配を振るわれたばかりか、撮影所を自ら訪ね、児童映画の性格と使命、対象と主題領域、童心を具現するための創作方法と取組み方に至るまで児童映画創作で持ち上がるさまざまな問題を全面的に明らかにされた。

将軍の細やかでいながら精力的な指導のもとに朝鮮児童映画「賢いタヌキ」、「リスとハリネズミ」、朝鮮アニメ映画「少年将軍」をはじめ、こどもたちばかりでなく各階層の労働者たちの好評を博すアニメ映画が多数創作され、多くの作品がフィルム・フェスティバルで優れた評価を受けた。

アニメ「賢いタヌキ」

アニメ「リスとはりねずみ」

朝鮮4.26アニメ映画撮影所は白頭山3大将軍の物語った昔話を映画化したのをはじめ、これまでに数百篇のアニメ映画を製作し、世界的な規模での受注ならびに合作アニメ映画も遜色なく製作する屈指のアニメ映画創作基地に段々とレベルアップした。

今回、撮影所を訪ねられた元帥は、アニメ映画製作で業績を収めたクリエーター、アーチストたちを高く評価された。

まさに朝鮮4.26アニメ映画撮影所の歩みをたどるほどに、私たちはこどもらの好きなアニメ映画の一篇にも、白頭山絶世偉人たちの細やかな手仕事が刻まれていることを改めて胸の奥に刻むことになった。

>>次ページ 原画作画室では主婦が作画に没頭

第1創作団で

オ・シンヒョク課長は、沿革資料室に継いで元帥が足を運んだ、第1創作団の原画作画室に私たちを案内した。ちょうど新しく製作されるアニメについてクリエーターたちと打合せをしていた第1創作団のチョ・ミョンドク(56歳)団長が穏やかに迎えてくれ、原画作画室について話してくれた。

「原画作画室のアーチストは、芸術映画での役者に譬えることが出来ます。芸術映画では、役者が直に出演して演技を展開してみせるとしたら、アニメーション映画では原画アーチストが台本に基づいて作画により各場面をスクリーンに展開します。原画アーチストによって登場する人物の造形とシルエット、キャラクターの特徴、色彩プランが決定されます。ですから原画作画室のアーチストは、絵を描く能力ばかりでなく豊かな創作的想像力を持ってこそ、自らの責任を全うすることが出来ます。」

チョ・ミョンドク団長の話を聞き、私たちは原画作画室のアーチストの創作中の姿に関心を向けた。

20代、30代の若いアーチストたちは、コンピューターで、新しく製作中のアニメーション制作に余念がなかった。

特にパク・ヨングム(35歳)さんの製作に興味を引かれ、その場を離れることができなかった。家庭の主婦である彼女が、コンピューターでアニメの登場人物の創作に情熱を傾ける姿から、目が離せなかった。

自分が創作したアニメの主人公のある少年の姿が、気に入らないのか、画面から消したかと思ったらまた描き、線と色で良い感じに完成させる様子は、彼女が自分の仕事に非常に心血を傾けていることが判った。

作業をじっと見守る私たちにパク・ヨングムさんは、アニメを制作する感想について、「私はこどもを育てる母としてアニメの一場面、一場面にこどもたちの明るい未来が込められていると思いながら、すべての意気込みを注いでいます。私のつくるアニメが、こどもたちに広い知識と科学的な思考、美しく気高い精神道徳的品性を育てるうえで助けとなるよう願うからです。」

彼女の話に、彼らのつくるアニメを見てよろこぶ人民とこどもたちを想像しているそのとき、原画作画室のキム・ジョンフン(46歳)室長は「コンピューターでの美術製作は線と色、コマンド、コンピューター技術に対する高い知識と高度の集中力を要する精神労働です。私たち原画作画室のアーチストは、高い実力を持って、自分の引受けた課題を立派に遂行しています。」と言うのだった。

キム・ジョンフン室長の話を聞いていたオ・シンヒョク課長は「まぁお聞きになれば解りますが、原画作画室だけでなく、撮影所のすべてのクリエーターとアーチストは、元帥が与えられた綱領的課題を心底受け止め、その達成に一丸となって取り組んでいます。特に若いアーチストたちの熱意は凄いですよ。」と誇らしげに言った。

>>次ページ 具体的な指示もする将軍様

私たちは次に、背景作画室に歩みを移した。

私たちがアーチストのピョン・ソンチョル(30歳)の作業の様子に目を見張っていると、チョ・ミョンドク団長は「背景作画室にやってこられた元帥はアニメ映画『少年元帥』に出てくる人物のモデル画をご覧になって、この撮影所でずいぶん前につくったアニメ映画『少年将軍』は凄い人気だったと、今は50部で完結したが、今後さらに100部までつくれば、朝鮮の人民とこどもたちに、本当によろこぶだろうと言われました。」と話すのだった。

そう言いながら、元帥はシリーズでつくるアニメ映画「少年将軍」をつうじて、朝鮮民族の気高い愛国心と尚武の気風、美風良俗、賢くて勇敢な戦いの物語をじっくりと見せてやらなくてはいけないと言われ、そのための具体的な製作指針も教えて下さったと、熱く語った。

間違いなく原画作画室、背景作画室をはじめ1創作団のクリエーターたちは、アニメ映画「少年将軍」のシリーズ作品を元帥の意図するとおりに見事に製作する熱意のもとに万端の準備を整え、製作活動を力強く推し進めていた。

私たちは、第1創作団の次に元帥が足を運んだセリフ録音室に赴いた。

ここでは製作中のアニメ映画のセリフ録音の真最中だった。

TV画面で繰り広げられるアニメ映画のシーンを見ながら、自分が受け持つ人物の動きまで成りきって演じながらセリフを録音する声優たちの作業風景には、まったく興味津津だった。

キム・ヒョンジュ(55歳)室長が、声優のリ・ウンジュ(48歳)、トン・ユンミ(36歳)、リム・ボクヒ(29歳)、リ・リョン(32歳)を私たちの前に並ばせて、言った。

「彼らは、私らの宝です。元帥は、彼らがセリフを録音する様子も微笑みを浮かべながらご覧になり、録音する時には細部の問題に至るまで親しく諭して下さいました。」

声優たちは、元帥を身近にお会いした栄誉を胸に携え、演技力をより高め、セリフ録音をもっと巧くこなしていく熱意にあふれていた。

第1制作団とセリフ録音室でクリエーター、アーチストたちの高らかな熱意を目撃した私たちの歩みは、さらに軽やかになった。

セリフ録音室を出た私たちは、第2創作団へと向かった。

>>次ページ 北朝鮮発3Dアニメは海外でも高評価?

第2創作団で

第2創作団に向かう途中、オ・シンヒョク課長は「2創作団は、アニメ映画製作で世界的な流れになっている3Dアニメを製作する制作集団です。」と話した。

私たちがオ・シンヒョク課長に案内されて第2創作団の演出および特殊効果室に入ると、ソン・ヨンサム(50歳)団長が、顔をほころばせて迎えてくれた。

彼は私たちに眼鏡を渡し、自分たちのつくったアニメ映画の一場面を見るように言った。

アニメを見ると、あたかも画面に繰り広げられる童話の世界に、そのまま引きずり込まれるような活き活きとして立体的な、これまでのアニメを見た時とはまるで違う感覚だった。

時空間的な奥行きが強く感じられる所に、まさに3Dアニメ特有の魅力があった。

二次元ではなく三次元上で、動画を、そして動き(モーション)を見せてやらなければならないため、制作団のクリエーターたちは、高いコンピューター技術を持っていなくてはならなかった。

現在他の国で、彼らの製作する3Dアニメが大人気だという。

以前には、この制作団では「ミツバチ兄弟の翼服(ウィングスーツ)」、「新しい友達」(1、2部)、「オコゼの兄弟」をはじめとする朝鮮アニメ映画と、100篇を越す製作依頼を受けたアニメ映画を遜色なく製作して高いレベルに達した朝鮮のアニメ映画製作技術を余すところなく見せつけた。

ソン・ヨンサム団長は、わたしたちに制作団の多くのクリエーターが金日成総合大学と金策工業総合大学、ピョンヤン美術大学を卒業した20~30代の活きの良いスペシャリストだと言い、中心になるメンバーがシッカリしているから、これからも、さらにすばらしい作品をつくって行くことが出来ると、こう語った。

「元帥は、私ら制作団にいらして、クリエーターの平均年齢も訊ねられて、技能向上計画と設備の問題、クリエーターの人材育成問題について貴重な教えを下さいました。いま私たちは、朝鮮を世界でも屈指のアニメ映画大国にしなくてはならないと言われた元帥の意向を高く掲げ、アニメ映画製作で世界の先頭に立つという炎のような熱意に溢れています。」

彼の話を聞いていたオ・シンヒョク課長は、「この撮影所のすべてのクリエーター、アーチストは、いま元帥が教えられた通りにすれば、いくらでも朝鮮をアニメ映画大国にすることが出来るという確心を抱いて、それを貫き通すため、みな一丸となって取り組んでいます。」と語るのだった。

私たちは、ここで朝鮮4.26アニメ映画撮影所に対する取材を終えた。

朝鮮4.26アニメ映画撮影所を後にした私たちは、絶世偉人をデディケートして、アニメ映画製作では新しく革命的転換が起きて、遠からず人気のアニメ映画が滝壺のように降り注ぐだろうことをハッキリと確信した。(2015年3月掲載)

平壌旬報 編集後記

アニメ製作の現場は今やデジタル化が進み、国の重要なコンテンツ産業になっていることが窺えます。これもグローバリゼーションなのでしょう。北朝鮮も例外ではないようです。次回は朝鮮で大人気だったアニメ映画、主に80年代から現在の作品をダイジェストで紹介します。

『平壌旬報』
平壌で発行されている紙誌から人々とその生活を取り上げた記事を翻訳紹介します。北朝鮮の経済、文化・芸術、人物紹介を主に取り上げました。日本のメディアではほとんど知り得ない内容ばかりを配信します。日本語としてあまりに無意味空疎でない限りは北朝鮮特有の美辞麗句も、聞き慣れないことを承知でそのまま削除せず掲載します。 週末に「未知の国」の生活を覗いてみましょう。
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