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中国「封じ込め」の仕上げ。G7はいかにして反中で一体化したのか?

AIIB事件を境に、極限まで悪化した「米中関係」。一時は勢いに乗った中国がそのまま覇権争いに勝利しそうに見えましたが、ここに来てオバマ大統領がついに本気になり、中国は一転孤立。経済状況も悪化し窮地に追い込まれています。このままアメリカは優位を保てるのでしょうか。無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者・北野幸伯さんが占います。

中国と、「孤立の万里の長城」

日本以外のすべての親米諸国群が、アメリカを裏切って中国についた、「AIIB事件」。RPEは、「これで、アメリカは中国打倒に動かざるを得ず、米中関係は急速に悪くなる」と予想しました。そして、アメリカは同年5月、中国が2013年から進めているいわゆる「南シナ海埋め立て」を大騒ぎしはじめた。この月にはすでに、「米中軍事衝突」を懸念する報道も見られるようになってきた。

さらに、習近平は、2015年9月の訪米時非常に冷遇され、全世界が「米中関係はヤバいことになっている」ことを認識しました。その後も米中関係はますます悪化しているようです。最近の動きを見てみましょう。

中国、「孤立の万里の長城」

カーター国防長官は、「脳みそにのこるキャッチフレーズ」を思いつきました。

「中国、孤立化への万里の長城建設」 米国防長官が批判
朝日新聞デジタル 5月28日(土)11時45分配信

「自国を孤立させる『万里の長城』を建設することになりうる」。

カーター米国防長官は27日、メリーランド州の海軍兵学校の卒業式で演説し、南シナ海の軍事拠点化を進める中国の行動を「万里の長城」に例えて強く批判した。

カーター氏は「我々の将来に最も重要な地域」として、演説をアジア太平洋にほぼ特化し、中国への懸念を列挙。「中国は拡大路線をとり、南シナ海では空前の行動に出ている」と軍事拠点化を批判した。

日付に注目です。カーターさんの「万理の長城」発言は5月27日。この日、オバマさんは、広島を訪問し、日米関係を劇的に良くしていた。同じ日に国防長官は、「中国は『孤立の万里の長城』を築いている!」と批判している。

「完全にそれだけ」とはいいませんが。オバマさんの広島訪問の目的の一つは、「中国に対抗するために日本との関係をよくすること」にあったのでしょう。

もちろん、日本にとってもよいことです。

「反中」で一体化したG7

ちなみに、同じ27日、「G7首脳宣言」が出されました。そこには、「南シナ海情勢への懸念」が明記されていた。これに対して、中国が抗議しています。

<G7首脳宣言>南シナ海「懸念」明記で中国側から抗議
毎日新聞 5月31日(火)22時5分配信

◇岸田外相が記者会見で明らかに

岸田文雄外相は31日の記者会見で、主要7カ国(G7)首脳会議で27日に採択された首脳宣言に南シナ海情勢への「懸念」が明記されたことに対し、中国側から27日のうちに抗議があったと明らかにした。

その上で「中国側の考え方の問題点を指摘した上で、宣言を説明し、しかるべく反論した」と述べた。

もちろんG7内には、温度差があります。「南シナ海問題」に熱心なのは、正直日本とアメリカだけ。なぜかというと、欧州は「遠い」ので、中国を「安全保障上の脅威」と認識していない。それでも、なぜ欧州もカナダも、首脳宣言に事実上の「中国非難」を入れることに同意したのか?

一つ目の理由は、やはり中国の行動が、「どう考えても悪い」から。二つ目は、中国経済の減速が著しく、「金儲けに期待していた欧州は幻滅している。つまり、「金の切れ目が縁の切れ目」。

日米印、対中合同軍事演習

中谷防衛相は6月3日、自衛隊がアメリカインドの軍事演習に参加することを発表しました。

日米印の防衛協力を強化…中国の海洋進出けん制
読売新聞 6月3日(金)21時8分配信

【シンガポール=石田浩之】中谷防衛相は3日、インドのパリカル国防相とシンガポールで会談し、日米印3か国の防衛協力を強化することで一致した。

月内に日本近海で行われる米印海軍共同訓練「マラバール」に海上自衛隊が3年連続で参加することも確認した。

日本政府は日米印の連携を加速することで、東・南シナ海やインド洋で海洋進出を強める中国をけん制したい考えだ。

日米印が、「(事実上)対中国の軍事演習」を行う。これは、「クレムリンメソッド」で書いた流れです。アメリカは覇権国家ですが、衰退が著しい。インドは、将来必ず、中国と並ぶ大国になるでしょう。だから、日本の大戦略の柱は、「アメリカとの軍事同盟をますます強化しながら、同時にインドとの関係をどんどん深化させていくこと」なのです。そして、実際そういう方向に動いています。すばらしい。

「孤立の万里の長城」再び

さて、カーターさん。よほど、「孤立の万里の長城」という表現が気に入ったのでしょう。(確かに一度聞いたら、決して忘れられないですね)。6月4日、シンガポールで開催中の「アジア安全保障会議」で、またこんなことを言いました。

「南シナ海で自ら孤立の長城」=米国防長官、中国を批判─協力強化も・アジア安保会議
時事通信 6月4日(土)10時42分配信

【シンガポール時事】カーター米国防長官は4日、シンガポールで開催中のアジア安全保障会議で演説し、南シナ海で人工島整備を進める中国の動きに懸念を示した上で「南シナ海で自らを孤立に招く万里の長城を築きかねない」と批判した。

勝利にばく進する、アメリカのリスク

最近の動きを見ましたが、アメリカは、「反中バランシング同盟」の構築を着々を進めています。ルトワックさんやミアシャイマーさんの提言どおりに動いているように見え、このまま進めば、勝利は確実です。

リスクは、「大統領選挙」ですね。新しい大統領が、ガラリと方針を変えるかもしれない。「最悪の大統領」「最弱の大統領」と批判されるオバマさん。そのオバマさんの引退が最大のリスク」というのは、なんとも皮肉です。

image by: Joseph Sohm / Shutterstock.com

 

ロシア政治経済ジャーナル
著者/北野幸伯
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