ブランド離れ、車離れの時代などと言われて久しい昨今ですが、今後「儲かる商売」は本当に出てくるのでしょうか? メルマガ『会社の未来を創造する「ビジネスモデル」実践法!』の著者で元船井総研のトップコンサルタント・五十棲剛史さんは、何でも「シェアリングエコノミー」の最新状況をわかりやすく解説。人気のフリマアプリ「メルカリ」や老舗の「ヤフオク」などを比較し、「所有しない時代」に支持されるサービスのポイントとは何かを探っています。
シェアリングエコノミー最新状況
これまで4回にわたって、「シェアリングエコノミー最新状況」というテーマで話をさせていただいております。
繰り返しますが、シェアリングエコノミーは大きく6つに分けられます。
それが以下です。
- 移動のシェア
- 空間のシェア
- モノのシェア
- スキルシェア
- お金のシェア
- その他
移動のシェア、空間のシェアについてはすでに話をしました。
今回はモノのシェアについて話をしたいと思います。
モノのシェア
1)メルカリ
日本が誇るモノのシェアといえば、メルカリです。
「スマホでかんたん フリマアプリ」というキャッチコピーで急成長しています。
似たようなサービスとして、よく比較されるのが、ヤフオクです。
しかし、ヤフオクは出品手続きがやや面倒です。
ですから、実際に出店者の8割以上が業者と言われています。
本来C2Cでスタートしたはずだが、今ではリサイクルショップの販路的位置付けになっているともいえます。
私もヤフオクでモノを売ったこともあります。
何となく「多少使いにくいな」と思いつつも、違反商品の登録や詐欺行為の対策を考えると当たり前にこんなものだろうと思っていました。
多くの個人のユーザーは同様だと思います。
大きな不満ではないものの、何となく当たり前になっていること。
そこがメルカリにとってはチャンスだったわけです。
メルカリは、出品にかかるストレスを限りなく軽減しました。
今、シェアリングエコノミーが成長するかどうかの大きな要因として
ユーザーエクスペリエンス(UX:ユーザーが製品やサービスを通じて得られる体験)
が挙げられます。
つまり、UXがヤフオクに比べて数段優れていたのです。
さらに、メルカリは、個人ユーザーのさまざまな障害要因を解決しています。
たとえば、個人情報。
メルカリ便というものがあります。
ヤマトと組んで配送のサポートをしているわけです。
出品者には、それを利用すると個人情報(住所や連絡先)は、非公開になります。
出品者は、誰が買ってくれたかというのは、知らなくていいわけです。
伝票などに住所を転記する必要もありません。
ある意味配送の手間が少し軽減していくことになります。
このようにUXが優れてくると、実際に利用する人が増えてきて、それがSNSなどで拡散されやすくなります。
また画面もタイムライン方式をとっており、今のデジタルネイティブ世代にはすごく使いやすい方式です。
どんどん新しい商品が出品されてきます。
すぐに購入するか、「いいね」するかを決めないと、どんどんタイムラインは流れていきます。
一見、買い逃しに思うかもしれませんが、デジタルネイティブ世代には、これが便利がいいのです。
こうしてメルカリは急成長をしており、今年の春には企業価値で10億ドルを超えたとも言われています。
上場企業で時価総額1000を超える企業は約300社と言われていますから、そうした企業の仲間に入ってきたのがメルカリです。
2)バイマ
ではメルカリ以外には、モノのシェアでどんなものがあるでしょうか?
有名どころでいうと、BUYMA(バイマ)があります。
バイマは、海外のブランド品の買い物代行です。
日本では売られていない、あるいは入手しにくい品を海外に住んでいる人に、海外の店で代わりに直接買ってもらうサービスです。
海外には駐在員の奥さまなどがたくさんいます。
こういった人が、空き時間を利用してバイヤーを行って小遣い稼ぎをしているのです。
偽物対策も、保険をかける選択肢があったり、とユーザーの不安を払拭させるサービスも充実しています。
利用者が320万人と加速度的に増えています。
3)ラクサス
同じブランド品でも、レンタルというサービスもあります。
ここに紹介するラクサスは、主に女性もののブランドバックに特化しています。
- ルィヴィトン
- グッチ
- エルメス
- シャネル
といったラグジュアリーブランドのバックが月々6800円で1点借りられるというサービスです。
女性に聞くと、家の中には10点以上のブランド品のバックを持っている人は多いのですが、すでに半分以上はほとんど使っていないのです。
その多くは「飽きた」からだと言います。
さらに最近の若い子はブランド離れが起きています。
その最大の理由はデフレです。
日本人の所得はもう20年近く上昇していません。
さらにバックを買ってもらう場合も、夫や彼氏にブランドバックを次々購入するだけの経済的余裕がないとも言われています。
そんな時に嬉しいのが、ブランドバックのレンタルです。
それを実現しているのが、ラクサスです。
スタートは約8000点のブランド品を自分で購入して、そこからスタートしました。
順調にユーザーが増え、2年で年間40億円規模に成長しています。
すごいのがリピート率です。
一度借りた人の解約が少なく、2%程度しかないとのことです。
私の妻も利用しているのですが、最近では、品切れが多いとのこと。
人気の証拠です。
そうなった理由は、お客さまの好みを人工知能でレコメンドして、オススメをしていることです。
やはりUXで他の同様サービスより優れているのです。
そして次の展開として、バックを一般の方の家に眠っているバックに広げるようです。
先ほども書きましたように、家には、今ほとんど利用していないブランドバックが眠っています。
中には、まだまだ十分に活用できるものもあるのです。
それを貸し出し、貸した人には、いくらかの小遣いが入るという仕組みにしていくとのことです。
まだまだあるモノのシェア
ラクサス系のサービスはすでにファッション業界で「借り放題」サービスとしてかなり浸透し始めています。
スタイリストがユーザーの為に選んでくれた洋服をレンタルできるサービス。
定額制で一度に3点までレンタルでき、返却期限はナシ!
月6800円
サスティナは、ファッションだけではなく、アップルウォッチのようなデバイスも借りられます。
月3点 5800円、5点 6800円
こちらは男性向けのサービス。
スーツなどのファッションから、小物やバックなどもあります。
月10000円
何もファッションアイテムだけではありません。
エニカは自分の車を他人に貸す出すサービスです。
車を持っていても、月数回しか乗らない人は多いはずです。
その車を他人に貸し出し、上手に運用すれば、車の購入費をかなり浮かせることもできるというものです。
UXで勝て!
このように、モノのシェアは今後爆発的に広がるものと予想されます。
モノのシェアで勝つには、まず持って品揃えの魅力です。
つまりMD。
しかし、MDだけでもダメです。
すでにメルカリは、個人ユーザーの取引ではヤフオクを超えています。
それはUXを徹底的に磨いたことにあります。
ぜひ、ユーザー志向で徹底的にUXを磨くことも意識して、ビジネス化を検討して欲しいと思います。
image by: Takkystock
『会社の未来を創造する「ビジネスモデル」実践法!』より一部抜粋
著者/五十棲剛史
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