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あと4年以内。トランプ「米国第一主義」が招く世界経済のリセット

特定国の人々のアメリカ入国を拒否するなど、就任早々「誤ったアメリカ第一主義」をかざしだしたトランプ大統領に、国内外から激しい非難の声が上がっています。メルマガ『高城未来研究所「Future Report」』の著者・高城剛さんは、氏の就任を境に「米国は世界のアメリカではなくなった」とし、さらに今後、世界経済が破綻に追い込まれるような「米国のみに都合の良いルール」が突如発表される可能性も否定できないと危惧しています。

アメリカが「世界のアメリカ」ではなくなった日

今週は、第45代米国大統領となったドナルド・トランプの就任演説から読み解く「米国の未来」につきまして、私見たっぷりにお話ししたいと思います。

先週2017年1月20日、第45代ドナルド・トランプ米国大統領は、就任演説で次のように語りました。

この瞬間から、アメリカ第一となります。貿易、税、移民、外交問題に関するすべての決断は、アメリカの労働者とアメリカの家族を利するために下されます。

ほかの国々が、われわれの製品を作り、われわれの企業を奪い取り、われわれの雇用を破壊するという略奪から、われわれの国境を守らなければなりません。保護主義こそが偉大な繁栄と強さにつながるのです。

私たちは雇用を取り戻します。私たちは国境を取り戻します。私たちは富を取り戻します。そして、私たちの夢を取り戻します。

私たちは、新しい道、高速道路、橋、空港、トンネル、そして鉄道を、このすばらしい国の至る所につくるでしょう。

デトロイトの郊外で生まれた子どもたちも、風に吹きさらされたネブラスカで生まれた子どもたちも、同じ夜空を見て、同じ夢で心を満たし、同じ全知全能の創造者によって命を与えられています。

他国の国境はわれわれが守ってきました。

海外で何兆ドルも費やしている間に、米国のインフラは荒廃し朽ち果てました。

本当の問題は我々の政府を何党が統治しているかではない。人々が統治しているかどうかです。

我々は今日、ワシントンDCから人々に権力を取り戻すのです。

と、このように語っています。

保護主義政策による「米国第一主義」と自ら話している通り、この日を境にアメリカは、第二次世界大戦後、そして東西冷戦終結後強固になった「世界のアメリカではなくなりました。あわせて、他国の国境を守らず、その予算を国内のインフラに投資すると話しています。

一方、「世界のアメリカ」のために表に裏に活動していたのがCIAです。そこで、トランプは就任の翌日、大統領になってからの初の訪問先として、CIAを選びスピーチを行いました。これは事実上通達で、主な留意点は二点です。「他国の政府を転覆させてはならない」、「マスコミを使って誤報を流してはならない」という二点で、これにより、いままでCIAの得意技ともいうべき「見えない国境利権を完全否定することとなりました。

これを、CIAがそのまま受け入れるのか、まだ、定かではありません。過去にもCIAとFRBにメスを入れようとしたケネディ大統領が何者かに暗殺されたことがありましたが、トランプはCIAのスピーチのなかで、「ケネディにできなかったことを成し遂げる」と発言しています。

また、トランプの就任演説直後にホワイトハウス公式サイトの「Climate Action Plan」のページが削除されたことからも、地球温暖化に懐疑的な姿勢も明確となりました。

これらのことから、全地球的グローバルな考え方は今後の米国政府から一切なくなります。当面「米国第一主義」を掲げ、米国内に工場と雇用を呼び戻し、まるで脅迫に応じるように資本家たちは、あらたな米国への投資と雇用を声高々にあげはじめています。

しかし、トランプが対峙しなければならないのは、他国ではなく、実はデジタルによる時代の変化だと僕は考えています。これには絶対に抗うことができません。トランプになびいたように見える資本家や経営者たちの腹の中は、「米国にあらたに投資し(いまは)雇用を生みます、(が、しばらくしたらロボット化します)」と宣言しているようにも聞こえます。

この構造は、日本各地に増え続ける「シャッター通り」にも似ており、その問題の本質は、イオンのような大型店舗の進出だけではなく、インターネットとデジタルに取り残された人が、いつまでも既得権にしがみつき変化を恐れているからに他なりません。

同じように時代の歪に立つトランプ政権は、どこかで時代に追い詰められ、戦争ではない過酷な道を進まざるを得なくなるでしょう。それは、ハードリセットによる「米国第一主義」です。

このような、いま唱えられている「米国第一主義のすり替えが、今後4年以内に現実になるかもしれません。例えば、米国債のデフォルトやドルの価値を大幅に変え、世界経済がどんなに滅茶苦茶になろうとも、米国に都合の良いルールを突然発表するようなことが起きることを、覚悟を持って誰もが予見する必要があります。

なぜなら、過去100年において、米国は何度もこのようなことを行なってきたからです。

image by: Debby Wong / Shutterstock, Inc.

 

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高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けするメルマガ「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

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