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「ディズニー神話」に崩壊の兆し。TDR、今後の成長に灯る黄色信号

これまで絶対無敵と思われていた、東京ディズニーリゾートに暗雲が立ち込めています。東京ディズニーランドなどを運営するオリエンタルランドは4月27日、2017年3月期の連結決算を発表しました。その内容は、前年比で増収増益と悪くないものでしたが、笑っていられる余裕はないようです。無料メルマガ『店舗経営者の繁盛店講座|小売業・飲食店・サービス業』の著者で店舗経営コンサルタントの佐藤昌司さんは、ディズニーが大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパンに近畿圏からの客を奪われはじめているなどの問題点を挙げ、このままでは将来「ディズニー神話が崩壊しかねない」と厳しい見方を示しています。

オリエンタルランドの決算は好調。一方「ディズニー神話」崩壊の兆しも

佐藤昌司です。ディズニー神話が崩れかけています。オリエンタルランドは4月27日、2017年3月期の連結決算は売上高が前年比2.7%増の4777億円、本業のもうけを示す営業利益は5.4%増の1131億円と発表しました。増収増益です。決算内容は悪くありません。しかし、今後の成長において黄色信号が灯っています

東京ディズニーリゾートTDRの2016年度の入場者数は前年から微減の3000万人で、過去最高となる3137万人を動員した2014年度以降、2年連続で前年を下回りました。今年度は東京ディズニーシー(TDS)の15周年の翌年となるため、入場者数は2950万人に落ち込むと予想しています。USJなど他のテーマパークと比べてTDRは精彩を欠いています

経済産業省によると、2016年のテーマパーク・遊園地の市場規模は6581億円で、5年連続での増加となっています。市場規模は拡大傾向にあります。また、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンUSJ)の2016年度の入場者数は前年比5%増の1460万人で、3年連続で過去最高を記録しました。TDRの停滞を尻目に好調に推移しています。

TDRの停滞は、USJの影響が全くないとは言えないでしょう。USJがある「近畿からの入場者比率は低下傾向を見せています。2008年度は7.9%ありましたが、2015年度は6.3%にまで低下しています。近年で言えば、2013年度が7.6%、2014年度が7.0%で、この3年間で大きな落ち込みを見せています。他の地域と比べて近畿の落ち込みが顕著です。

一方、海外からの入場者数は増加傾向を示しています。2015年度の入場者比率は6.0%で、4年連続で前年を超えています。2020年の東京オリンピック開催に向けて、海外からの入場者数は増えていくと思われます。成田空港から近いこともあり、チャンスといえるでしょう。

オリエンタルランドは2020年度までに、顧客満足度を維持した上で3000万人レベルの年間入場者数を確保することを目指していますそのために年間500億円レベルの投資を継続するとしています。

オリエンタルランドの財務内容は良好です。3月末日時点の「現金及び預金」は2638億円、流動資産は3190億円あり、負債の1802億円を大きく上回ります。潤沢な資金を保有しています。

4月5日、東京ディズニーランド(TDL)では2020年の春までに、「美女と野獣をテーマにしたアトラクションや街並み、飲食店、屋内型大型シアターなどを建設する大規模開発の起工式を行いました。投資額はTDLとTDSの2パーク開園以来最大規模の約750億になる見通しです。

TDSでは2019年の春までに、海外のディズニーで人気があるシミュレーター型アトラクションソアリンを導入します。投資額は約180億円を予定しています。

ところで、TDRが抱えている問題点として「混雑が指摘されています。人気アトラクションでは時期によって「2時間待ち」も珍しくはありません。こうした長い待ち時間に対する不満の声は少なくありません。不快感を抱くことなく楽しめる年間入場者数は、TDRでは2800万人程度と言われています。3000万人レベルで推移している近年、顧客満足度が下がっているという指摘もあります。

3000万人レベルを維持しつつ混雑を緩和するため、アトラクションや屋内施設を新規建設し、パークの収容能力を高める方針です。ただ、一部のアトラクションや施設は既存のものを一部閉鎖して建設することになるため、一時的に収容人数は減少し、一時的にはより混雑することになります。大規模開発になるため、その影響は小さくないと思われます。そのことでTDRを敬遠する人が出てくるでしょう。

入場者数は3000万人レベルを目標としていますが、目下は3000万人割れ直前です。しかも減少傾向を示しています。加えて、大規模開発による一部のアトラクションや施設の一時閉鎖で、入場者数はさらに減ることが予想されます。

外部環境も予断を許さない状況です。大阪ではUSJが勢いを得ています。佐世保ではハウステンボスが異彩を放っています。2010年にHISがハウステンボスを傘下に収め、「変なホテル」を隣接させるなど、パークの魅力を高めています。今年4月には名古屋にレゴランドが誕生しました。昨年6月には上海に上海ディズニーリゾートが開園しました。手ごわい競合が誕生・成長しているのです。

ディズニーには強力なリピーターが存在すると言われています。ただ、うかうかしていられない状況でしょう。競争は激化しています。「美女と野獣」や「ソアリン」などの導入だけで3000万人レベルを維持できるかどうかは不透明です。

大規模開発を行った後の不透明感も漂います。新規で建設できる事業用地用のスペースは限られています。バックヤードの集約や駐車場の立体化などで創出することはできますが限定的といえるでしょう。TDSの北側にある本社跡地の活用、ロジスティクスセンターやセントラルキッチンの移設などで確保することも考えられますが、それでも中長期的にはいずれ枯渇します。

舞浜地区以外での動きもあります。沖縄県宜野湾市が2015年末にTDRの誘致を要請しました。もしこれが実現されれば、分散化を図ることができます。混雑の緩和が期待されます。しかし事態は流動的でどうなるかはわかりません。

少子高齢化の進展も中長期的には大きな脅威です。入場者は40歳未満で8割を占めるため、若年層の減少は入場者数に大きく影響します。65歳以上に割安チケットを発行し、シニア向けのサイトを構築するなど対策を講じていますが、さらなるシニアの呼び込み策が不可欠といえます。

テーマパーク以外の新規事業の育成も必要でしょう。オリエンタルランドの子会社は大手不動産会社と組み、沖縄で大型リゾート施設を開業します。昨年10月に着工し、2018年の夏に開業を予定しています。このような、舞浜地区以外の非ディズニー事業を育てることも必要でしょう。

2020年以降は大規模開発の効果もあり、入場者数の増加と顧客満足度の向上が期待できるでしょう。ただ、それまでに競争力が衰え、ディズニー神話が崩壊しないとも限りません。2020年までが勝負といえそうです。

 

 「企業経営戦略史 飛躍の軌跡(クリエイションコンサルティング)

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東京MXテレビ『バラいろダンディ』に出演、東洋経済オンライン『マクドナルドができていない「基本中の基本」』を寄稿、テレビ東京『たけしのニッポンのミカタ!スペシャル「並ぶ場所にはワケがある!行列からニッポンが見えるSP」』を監修した、店舗経営コンサルタント・佐藤昌司が発行するメルマガです。店舗経営や商売、ビジネスなどに役立つ情報を配信しています。

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【著者】 佐藤昌司 【発行周期】 ほぼ日刊

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