これまでにも、関東と関西の「雨」のアクセントの違いや、「LINE」の正しいアクセントについてわかりやすく解説していた無料メルマガ『1日1粒!「幸せのタネ」』の著者・須田將昭さん。今回は、意外なところで見つかる「日本語の伝統的なアクセント」について、あの有名な童謡を例にあげて解説しています。
変わりゆくアクセント
「赤とんぼ」という語には、日本語の音声の面から見てなかなか興味深いことが潜んでいます。
「アカトンボ」をちょっと声に出してみてください。日本語のアクセントは、「高低アクセント」と言われています。高いところと低いところがあるのです。
共通アクセントでは
カト
ア ンボ
という感じで、最初の「ア」は低く始まり、「カト」が高く、また「ンボ」が低くなります。みなさんの発音はどんな感じでしたか? こんな言い方をした人はいらっしゃいますか?
ア
カトンボ
最初の「ア」が高くて、後の「カトンボ」の部分は低く発音する。実際に口に出してみると変な感じがするかもしれません。
ところが…、少し前の日本語では、こちらの方が正しい「アカトンボ」のアクセントだったんです。
童謡の「赤とんぼ」を口ずさんでみましょう。
夕焼け小焼けの 赤とんぼ
です。「ア」の音が高くありませんか?
作曲者は山田耕筰で、昭和2年(1927年)に作ったとされています。昭和初期には「ア」が高かったのです。ちなみに『新版日本語発音アクセント辞典』(NHK出版)では「伝統的なアクセント」として紹介されています。
意外なところで、古い日本語の姿を見つけることができるもんですね。
本文中では「少し前」なんて書き方をしていますが、童謡「赤とんぼ」の作曲は90年も前のことです。
いつごろからアクセントが変わったのか確たる証拠は持ち合わせておりませんが、これだけあれば言葉の姿というのは変わるもんなんだと、あらためて感じますね。
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