MAG2 NEWS MENU

結局「働き方改革」で何がどう変わり我々の仕事はどうなるのか?

改革の成果が個々の企業だけでなく、少子化や高齢化が止まらない日本経済の未来を左右するとも言われている「働き方改革」。今回の無料メルマガ『新米社労士ドタバタ日記 奮闘編』では、「働き方改革実現会議」のメンバーである東京大学社会科学研究所・水町勇一郎教授の講演での発言を取り上げながら、働き方改革で協議されている内容や、社労士が企業から必要とされる重要ポイントについて、会話形式でわかりやすく解説しています。

働き方改革と労働法改正

先日、ボスが行って来いと案内をくださったセミナーに行ってきた。「働き方改革と労働法改正の方向性ならびに今後の労使関係のあり方について」。東京大学社会科学研究所・水町勇一郎教授の講演会だ。

働き方改革実現会議が設置されたのは、平成28年9月末日。総理を議長として、関係閣僚、民間有識者15人、総人数30人弱位で発足、民間有識者の中に労働法関係者は2人。そのうちのお一人が水町先生だ。


大塚 「ねぇ、この間、新米くんってボスに誘われて、水町先生の講演会に行ってきたんでしょ。どうだった?」

新米 「あぁ、水町先生の講演会ですね。行ってきましたよ」

深田GL 「テーマって、働き方改革だよな」

新米 「そうです。奥が深かったです」

大塚 「どんな風に…? せっかく行ってきたんだから、ちょっと解説してよ」

新米 「いえいえ、ボクが解説だなんて~? では、レジュメを見ながら、ちょっとだけですよ。まずは、平成28年年度末までの6ヵ月間で『働き方改革の方向性を決める働き方改革実行計画』を作成するのがミッションだったそうです」

深田GL 「ふんふん」

新米 「総理が議長になり、全10回行われ、審議したうえで、平成29年3月28日働き方改革実行計画案が政府の方針として決められたそうです。労使の話し合いの結果、建議が出され、建議を元に働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱ができました」

E子 「働き方改革については、うちでもみんなで勉強していっているけど範囲も広いし、奥も深いわ。講演を聞いてどう感じた?」

新米 「たくさんの項目がありますが、大きなテーマとしては、
    ・時間外労働の上限規制
    ・同一労働同一賃金
    とおっしゃってました」

深田GL 「大きくテーマを二つ上げるとそうなるかな…」

新米 「それから、今回の働き方改革は、皆さんが思っておられるレベルの10倍以上の改革で、30年分位の改革を2~3年で行うというもの。とにかく時間が足りないということを強調されていたのが印象に残りました」

E子 「え!? そんな言い方されていたの? 『30年分位の改革を2~3年で行うというもの』って」

大塚 「私達も心して当たらないといけないわね

新米 「やっぱりそうですか~。どんなレベルなのか!? と思って聞いていましたが、相当なボリュームなんですね」

E子 「ボリュームは、前に勉強会をした17項目。でも、どこまでやらないといけないかっていうのは、強制義務だけでなく、努力義務も多いと見ていたから、最低限やらないといけない項目と、できればやるという項目とに分ければいいやと考えていたけど、それ以上にスピード感がそこまで強烈なら、今以上に大忙しになるってことね」

大塚 「ほとんどが社労士の業務ですもんね~」

深田GL 「まずは、二つの大きなテーマを改革するには、どんな法律改正が必要か」

新米 「時間外労働の上限に関しては、労働基準法ですよね。同一労働同一賃金に関しては、パートタイマーについては、パートタイム労働法、有期労働契約については、有期と無期の不合理な労働条件の禁止がある労働契約法、派遣労働者については、労働者派遣法3つの法律を同時に改正することになります」

大塚 「労働契約法とパートタイム労働法は絡み合うもんね~」

新米 「それから、関連して労働時間等の設定の改善に関する特別措置法、じん肺法、労働安全衛生法が改正される予定です。あと、雇用対策法が『労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び生活の充実等に関する法律』に名前が変わるそうです」

大塚 「なに、なに? その長ったらしい法律の名前は覚えられないわ~」

E子 「うん、ホントホント。略名は何になるのかな?」

深田GL 「雇対法あらため、雇職法かな」

E子 「縮め過ぎ~! (^^)でも、どうなるかしらね」

深田GL 「結局、話題になっていた労働契約法の20条が削除になって、パートタイマーと有期雇用労働者に対する法律が一本化されるってことだよな」

新米 「そうです。こちらも『短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律』って名前に変わるそうです」

大塚 「略称もパート法でなくなるのかな?」

新米 「どうでしょうね。注意すべきは、不合理な待遇の禁止について、通常の労働者との待遇差について、総合判断でなく、そのそれぞれの程度を見て行くということでした」

E子 「総合判断方式をとった長澤運輸事件ではなく、今後は、個別判断方式をとったハマキョウレックス事件でみていくってことね」

深田GL 「ひとつひとつについて、業務や責任の程度である職務内容とその待遇の性質と目的に照らして適切と認められるか、不合理と認められる相違を設けてはいけないっていうことだなぁ」

E子 「プラスマイナスで見ることができなくなるのは、厳しいわね。細かなチェックを要するわ」

新米 「水町先生は、正規・非正規の格差は、同一労働同一賃金が目的ではなく、正規・非正規の格差是正非正規雇用の処遇改善が目的ともおっしゃっていました」

大塚 「ふーん、そうなんだ」

新米 「あと、政府として『非正規雇用改善センター』を設けて、同一労働同一賃金の実現に向けた社内規定の改正に対するコンサルティング料の負担もするそうですよ」

E子 「それって、結局社労士がするんじゃないの?」

新米 「あ、はい。そうおっしゃってました」

深田GL 「やっぱりなぁ~、社労士の仕事はますます増えるぞ! みんな、がんばろうっ!」

「長澤運輸事件・ハマキョウレックス事件」とは

労働契約法20条に関して本格的な判断が下された事件として「長澤運輸事件(東京地判平28.5.13)」は注目すべき判決です。定年後に再雇用されたトラックドライバーの労働者について、定年前よりも賃金を引き下げたことは不合理であるとして労働契約法20条違反を認め、正社員との賃金差額の支払いが命じられたものです。しかしながら一般には定年後再雇用者の賃金を定年前より引き下げている企業が多く、実務への影響が懸念されます。

また非正規労働者の労働条件格差をめぐる「ハマキョウレックス事件」では、地裁判決(大津地判平27.9.16)で通勤手当のみ損害賠償として1万円の支払いが認められていたところ、高裁判決(大阪高裁平28.7.26)では通勤手当のほか4種類は労契法20条に違反するとして77万円の支払いが認められました。

同一労働同一賃金が現政権下での重点政策の一つとなっており今後の法制の行方も注目されるなかで、近時の注目事件(長澤運輸事件、ハマキョウレックス事件)は今後の労使にどのような影響を及ぼし、そして企業側における課題や必要な対応はどのようなことになるか、このふたつは重要事件です。

~労働新聞社 労契法20条違反をめぐる判決と今後の実務への影響より~

image by: 首相官邸

イケダ労務管理事務所この著者の記事一覧

この日記をお読みくだされば、社労士及び社労士事務所の固いイメージが一変するかもしれません。 新米社労士が日々の業務・社会のルール等に悩み・悪戦苦闘する様子を中心に、笑いあり、涙あり、なるほどありの社労士事務所の日常を、ノンフィクション、フィクションを交えて綴ります。 水曜日のお昼休み、くすっと笑いながら、皆でお楽しみください。

無料メルマガ好評配信中

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 新米社労士ドタバタ日記 成長編 』

【著者】 イケダ労務管理事務所 【発行周期】 週刊

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け