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安倍総理「いいね」発言を嘘だとマスコミにFAXした加計学園の嘘

愛媛県の提出した文書に、加計学園の加計孝太郎理事長と安倍晋三総理が面談したさい「そういう新しい獣医大学の考えはいいね」とコメントしたとする学園担当者による談話が記載されていたことについて、加計学園側は当時の担当者が誤ったウソの情報を伝えていたと発表。その言い訳が、あまりにも苦しすぎると物議を醸しています。元全国紙社会部記者の新 恭(あらた・きょう)さんは自身のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』で、真実を「ウソだった」と否定する加計学園側に疑問を呈し、この国の行政が安倍官邸によって歪められている事態について厳しく非難しています。

本当を嘘だとマスコミにFAXした加計学園のウソ

年齢を重ねるごとに、「記憶」があてにならないのを実感する。今、「記憶を武器にしているのは、不都合な真実を記憶にないと隠したがる連中くらいのものだろう。

国家権力の中枢、安倍官邸はどうだ。愛媛県職員の「記録」より、柳瀬唯夫元首相秘書官の「記憶」を信用し、恥じらうこともない。柳瀬氏もまた、メモを取っている側が正しいといえるのかと開き直った。どうやら「記録には不都合な真実が多いようである。

官邸と示し合わせたのかどうか、加計学園も、「記憶」で「記録」を打ち消すおかしな作戦に出た。

5月26日午後4時前のことだ。報道機関あてに一枚のFAX文書が各社の担当デスクに送られてきた。

送信元は書かれていない。件名欄には「コメントの送付について」とあるだけ。上端のヘッダー情報に小さく加計学園と印字されているが、それだけでは正式に加計学園から送信されたものかどうか不明だ。

平素より学園の教育活動にご理解とご協力を賜り誠に有り難う御座います

学園?どこの学園か。当初、怪文書のたぐいかと疑った記者が多かったのもうなずける。

一連の愛媛県文書にある打ち合わせの内容について、当時の関係者に記憶の範囲で確認出来た事を下記の通りコメントいたします。

各社とも当然、加計学園に問い合せただろう。発信は認めたものの、学園側から文書についての説明は一切なかったようだ。

愛媛県文書とは、国政調査権に基づく参議院からの要請に応じ、加計学園の獣医学部新設問題にからむあらゆる資料を県庁の関連部課や個人ファイルから探し出し、国会に提出したものだ。その中に、驚くべき記述があった。

2015年2月25日加計孝太郎理事長が安倍首相と面談したさい、獣医学部新設計画を説明、安倍首相が「そういう新しい獣医大学の考えはいいね」とコメントしたという。昨年1月20日まで加計学園の獣医学部新設計画を知らなかったとする安倍首相の答弁がウソだったことを物語っている。

加計学園からのFAX文書その内容を否定した。2015年2月25日に理事長が安倍首相に獣医学部新設計画を説明したというのは事実ではなかったというのである。

関係者に「記憶の範囲で確認できたことだという。「記憶のかぎりでは」の柳瀬元首相秘書官と同じパターンだ。

構造改革特区から国家戦略特区を用いた申請に切り替えれば、活路が見いだせるのではないかとの考えから、当時の担当者が実際にはなかった総理と理事長の面会を引き合いに出し、県と市に誤った情報を与えてしまったように思うとの事でした。

苦しい言い訳であることは誰にでもわかる。構造改革から国家戦略特区に替えれば打開できると考えるのはいいとして、そのためになぜ加計孝太郎氏が安倍首相に会って計画を説明したという話をでっち上げ、愛媛県にウソの報告をしなければならないのか。

とにかく論理がおかしい。そして何より、自治体にウソをついて、補助金をせしめようとするのは犯罪的行為であろう。森友学園と変わらないのではないか。

安倍総理も承知の案件だと思わせて愛媛県や今治市を本気にさせる。そのために架空の話をしたということをFAX文書は語っている。

しかし、これは過去の経緯からみて実に不自然である。元愛媛県知事加戸守行氏が2017年7月10日の国会閉会中審査で証言したように、「愛媛県にとっては12年間加計ありきだった」のだ。

2015年からのことではない。長年にわたり、愛媛県と今治市は加計学園とともに構造改革特区での獣医学部新設を申請し続けたが、却下されてきた。愛媛県今治市を騙す必要などないのだ。

森友疑惑における財務省と同じく、安倍首相の関与がないような外形をつくるため、学園と官邸の焦りから生まれた突飛な行動と言えるだろう。ウソを県市に伝えたのだというウソである。

中村時広愛媛県知事が「県にウソの報告をしていたというのなら、すぐに県や今治市に謝罪し、記者会見すべきだ」と憤るのも、もっともだ。

そもそも、これまで問題にされていたことに関し、加計学園がマスコミに何かを発信したことがあっただろうか。メディアが説明を求めても回答がない。安倍首相の力を頼む後ろめたさがあるために、メディアに対してはつねに逃げ腰である。

ペラのFAX1枚で、情報を修正しようというのは、あまりにも社会を甘く見過ぎている。これが教育機関だというのだから、あきれてしまう。

安倍首相は例によって、「加計理事長とは会っていないと否定した。首相動静にも書かれていないし、官邸への入館記録を調べても載っていないという。加計学園の突然の発信は、その首相答弁に合わせるものだ。

官邸への入館記録はすぐに破棄されるのではなかったのか。愛媛県や今治市の担当者が2015年4月2日に官邸で柳瀬氏と会ったのを否定するために、破棄することになっているかのごとく言い張っていたはずだ。

日大アメフト部の違反タックルをめぐり、学校法人の経営姿勢があらためて問題になっているおりである。日大では大学名を利用した営利事業を展開し、一部の理事たちが正規の報酬のほかに、ファミリー企業の取締役として毎月多額の分け前にあずかっている。

学校の経営が利権の巣窟になってるのは加計学園も同じではないか。経営者の品格、資質が問われている。

加計理事長は、野党から証人喚問を求められている疑惑の中心人物であるにもかかわらず、メディアに口をつぐみ、記者からこそこそ逃げ回る生活をいまだにしている。情けないことだ。

その一方で、獣医学部への受験者が多かったことだけをもって、国家戦略特区の目的を達したかのような自画自賛をする。

それほど自信があるのなら、マスコミの前に出て、疑惑への質問を受けることを甘受したうえで、これから国際的な存在価値のある獣医学部にどういう手順で発展させていくのかを語ったらどうか。

経営者とはいえ、大学のトップである以上、教育者でもあるはずだ。どうして堂々たる人生を歩まないのか

日大の理事長は「俺は相撲部だ」「アメフトなど知らん」と、大学トップの自覚などまったくない様子で、報道陣の取材はもちろん記者会見にも応じない。おまけに週刊誌には裏社会とのつながりを指摘されるありさまだ。

繰り返しになるが、なにがしかの権力を握っている人間は、特権ゆえの不都合な真実を抱えがちであり、その呪縛によって隠したり逃げたりしなければならなくなるのだ。

昨今はとくに、一強といわれる総理大臣があからさまにウソをつき知らぬ存ぜぬをやっている。「右へ倣へ」が増殖し、始末に負えない。

image by: Alexandros Michailidis / Shutterstock.com

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記者クラブを通した官とメディアの共同体がこの国の情報空間を歪めている。その実態を抉り出し、新聞記事の細部に宿る官製情報のウソを暴くとともに、官とメディアの構造改革を提言したい。

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【著者】 新恭(あらたきょう) 【月額】 初月無料!月額880円(税込) 【発行周期】 毎週 木曜日(祝祭日・年末年始を除く) 発行予定

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