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プライドをポイッ。中国の属国として生きることを決意した金正恩

6月19日の金正恩委員長訪中の後、北朝鮮を「独自支援」すると発表した中国。これは一体何を意味するのでしょうか。今回の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者で国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんは、「金正恩はアメリカを信用できず、仮に非核化しても命を奪われる懸念を抱えているため中国の体制保証を望んだと」分析しています。

金正恩は、習近平に【体制保証】を求める

前号「トランプが金正恩と習近平にダマされぬよう安倍総理がすべきこと」では、「金正恩が今年3回目の訪中をした」という話をしました。今回は前号のつづきですが、二つの重要ポイントがあります。

まず、中国は「非核化を待たずに、「独自支援」をする意向を示しています。

<中国>北朝鮮への独自支援示唆 金正恩氏が訪中終え帰国

毎日新聞 6/20(水)20:13配信

 

【北京・河津啓介】北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は20日、2日間の訪中日程を終えて帰国した。金委員長は同日、北京市内で農業や地下鉄の関連施設を視察した。中国側は北朝鮮に対する制裁緩和前に独自支援に動く可能性を示唆した。

 

金委員長は2日連続で習近平国家主席と会談。米朝首脳会談を果たした北朝鮮が、対米交渉と経済立て直しで中国との連携を強める姿勢が一層鮮明になった。

「中国側は北朝鮮に対する制裁緩和前に独自支援に動く可能性を示唆した」そうです。「独自支援」とはなんでしょうか? 国連安保理の制裁との折り合いは?

中国外務省の耿爽(こう・そう)副報道局長は20日の定例記者会見で、北朝鮮への経済支援について「国連安全保障理事会の(制裁)決議を厳格に履行する」としたうえで「友好的な隣国として国際義務に違反しない前提で、正常な交流と協力を保持する」と述べた。制裁緩和を待たずに支援が可能との立場を示した形だ。

国連の制裁は守るけれど、制裁に違反しない範囲で支援はできるそうです。論理的には、そのとおりですね。

前々号「金正恩よ、これがディールだ。微笑むトランプが突きつけた無慈悲」でも触れましたが、「具体的でない!」「タイムテーブルがない!」と批判されているトランプ政権は、すでに「非核化まで2年半」という期限を設定。北朝鮮に、「核計画の全容を、数週間以内に開示せよ!」と要求しています。

北の本音は、「核兵器を持ったまま制裁を解除させ、経済支援も受け取りたい」ですから、この要求は「困るなあ」と思っていることでしょう。そこで、習に相談したら、「支援しましょう」といってくれた。金は助かったと安堵していることでしょう。とはいえ、アメリカも永遠に待ってはくれません。1カ月後ぐらいには、北が約束を守っているかどうかで、問題が起こってくるでしょう。

もう一つ。北朝鮮が、早速「米朝共同声明」の内容を守らなかったとしましょう。すると、トランプの怒りは、もちろん金正恩に向かいます。しかし、金が習近平の指示通りに動いているのは明らかで、トランプの怒りが習にも向かう可能性があります。すでに貿易戦争で関係が悪化している米中さらに悪化する可能性が強まっています。

金正恩は、習近平に【体制保証】を求める

ちなみに金の今回の訪中。彼は、ますます習の「手下化」しています。

北朝鮮は国内向けにも中朝関係の緊密さを打ち出した。20日付の朝鮮労働党機関紙・労働新聞(電子版)は大小28枚もの写真を使って、19日に行われた今年3度目の中朝首脳会談を大々的に報道した。北朝鮮のメディアが金委員長の帰国前に報じるのは異例だ。中国外務省によると、金委員長は首脳会談で、習氏を「偉大な領袖(りょうしゅう)」と呼んだ。中国では毛沢東に使われる最上級の敬称だ。
(同上)

金は、習を「偉大な領袖」と呼んだそうです。なぜ、金は習をここまでヨイショしなければならないのでしょうか?

トランプと金のディールは、「北が完全に非核化すれば、アメリカは北の体制を保証する」です。しかし、ある程度、世界情勢を追っている人なら、「アメリカの体制保証を信じるのは難しいでしょう。

イラクのフセインは、「大量破壊兵器を持たず」「アルカイダを支援していなかった」にも関わらず、攻撃され、殺された。リビアのカダフィは、核開発を放棄したにも関わらず、アメリカが支援する「反体制派」につかまり、殺された

金が核を放棄し、丸腰になれば、いつアメリカが彼を殺すかわかったもんじゃない。そこで、金は、戦略的決断をくだします。つまり、自主自立路線を捨て、「中国の属国になることで生きのびよう!」と。極貧の小国としては、正しい選択といえるでしょう。なぜ?

金が、約束通り非核化を成し遂げた。そこでアメリカは、「これで安心して北を攻撃できるぞ!」と歓喜する(念のため書いておきますが、トランプさん自身は、心から北の体制を保証するつもりでしょう)。しかし、ある人がいいます。

「無理です。北朝鮮と中国の関係は、これまでになく緊密です。北を攻めれば、中国が黙っていないでしょう!」

それで、北攻撃計画は、流れる。金の狙いは、ここにあり、賢明だと思います。

金はアメリカの体制保証を信用していない。それで、習に接近することで、北の体制を保証してもらう。アメリカと違い、中国は、「緩衝国家・北朝鮮」の存続を望んでるのですから。

米朝首脳会談後も、ゲームはつづいていますね。

日本は? 現段階では、何もせず、米北関係の推移を見守っていくのがよいでしょう。

 

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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