MAG2 NEWS MENU

武田教授が警告。日本がトランプ保護主義をバカにできない理由

米トランプ大統領の保護主義は反グローバリゼーションという言葉に置き換えられ、日本メディアの識者からも時代錯誤などと嘲笑される傾向にありますが中部大学教授の武田邦彦先生は、今回の自身のメルマガ『武田邦彦メールマガジン「テレビが伝えない真実」』で改めてトランプの主張をまとめ、米国で以前から叫ばれている問題が保護貿易の実現で解決できる事を明らかにしています。

自国主義のトランプ大統領を批判する日本のメディアや評論家たち

昔から「貿易」、つまり遠い異国のものを船で運んでくると高い値段で売れて膨大な富を得ることができました。だから荒くれ男どもが小さい帆船に乗り込んで、一獲千金を夢見て世界の海に漕ぎ出したのです。

それは現在でもほぼ同じで、A国で100円でできるものをB国で200円で売ることができる例などはいくらでもある。「標準的な収益」というのは8%、つまり100円で8円だから、200円で売れるということは貿易というのがいかにうまい商売であることがわかる。

また、それはB国の人にとっては半分の値段で買えることを意味するし、A国の製造業の人は売れる量が増えるので、良いばかりである。だから貿易は次第に自由貿易になり、関税など貿易の障壁となるものは少しずつ減ってきた。「グローバリゼーション」である。

ところが、B国で生産していた人はA国からの輸入品で失業するし、グローバル化した強い企業の一人勝ちになってしまう傾向がある。そこで、たとえば日本からアメリカに輸出する自動車の関税は2.5%なのに、アメリカから日本に輸入するコメは778%の関税がかかっていた。これでは不平等だ。

そこで、「アメリカ国内の雇用を守ろう」とトランプ大統領が言い出した。もともとトランプ大統領は自国主義でもあるし、よく言われるアメリカの巨大赤(貿易赤字と政府の赤字)を減らす目的、それに議会選挙が近づいている(今年の11月6日、下院と上院、州知事選)ことがあって、その政治的な思もある。

これに対して、日本のメディアや経済評論家などは一斉にトランプ大統領を批している。その内容は、主に

  1. 保護貿易から自由貿易の流れと逆行する。
  2. 自由貿易は経済を発展させる。
  3. 貿易が赤字でも資本(お金の流れ)の方はアメリカに還元される。 

ということだ。確かに批判を聞いてみるとまともである。第二次世界大戦後、平和を守る目的もあってブレトンウッズ体制と言われる自由貿易体制を作り上げてきた。今ではそれが少し進んで、EUのような一つの国のような経済圏や、TPPのようにある地域で自由貿易をさらに進めようとしている。

それに水を差すとなると各国経済は停滞し、アメリカと中国が険悪になるばかりか、アメリカの同盟国との関係も悪化すると懸念されている。

日本国内で批判の多いトランプ大統領の経済政策。彼の本当の狙いとは?

また、モノの貿易はわかりやすいが、お金の動きはわかりにくい。一言で言えば、日本がアメリカに自動車を売るとその代金がドルで支払われる。日本国内ではドルが使えないので、食料をアメリカから買い、余ったお金でアメリカの国債を買う。だから結局、貿易赤字と騒いでもその実態はそれほど大きくないという理屈もある(資本収支ということもある)。

でも、日本のテレビや新聞を見ていると間違った考えになる原因がここにもみられる。経済評論家は自分の考えはトランプ大統領より優れているということを強調したいので、トランプ大統領の政策を解説するのではなく、ついつい自分の意見を言ってしまう。そして、「こんな時代に反する政策など、トランプは馬鹿だ。教えてやらなければ」と言っている人すらいる。「君はトランプ並みの大実業家か、大統領になれるのか?」と聞きたいぐらいだ。

トランプ大統領の狙いは主に二つあると思う。

 

  1. お金万能、グローバリゼーション礼賛の結果、アメリカの富は偏在し、10%以下の人が50%以上の富を持っているとい われる。これでは90%の国民が不満を持つのは当然だから、なんとか解消しなければならない
  2. 双子の赤字(貿易赤字政府赤字を減らすべきだという意見は長く根強いが、具体的な政策がなかった。
  3. 経済的にだけ考えれば自由貿易が良くても農家は農業をやりたい。それが生きがいなのだ。だからお金中心に考えてアメリカ人の素朴な生きがいを奪ってはいけない。
  4. これまでグローバリゼーションの動き軍需産業エネルギー産業癒着していて、世界で紛争が絶えない。そんな状態をやめてアメリカはアメリカだけでやっていきたい。

ということだ。これらがなにが悪いのだろうか?なぜトランプ大統領が考えが足りないのだろうか?

一つ一つのことは、あるいは別の手段で解決できるものもあるだろう。でもそれは現実的に今まで全部失敗してきた。だから、新しい手段を考える必要があり、保護貿易をすれば、1から4まで一気に解決する可能性がある。だから試みるとトランプ大統領は言っている。

それに合わせて中東やアジア、ヨーロッパからの軍隊の部分的撤収、北朝鮮にみられる平和外交、移民の数を減らしてアメリカ人優先(メキシコとの壁、中東からの移民抑制など)を実施している。つまり筋は通っているのだ。

image by: Gino Santa Maria / Shutterstock.com

武田邦彦この著者の記事一覧

中部大学教授の武田邦彦です。主に環境問題や資源に関して研究を行っております。 私のメルマガでは、テレビや雑誌新聞、ブログでは語ることが出来なかった原発やエネルギー問題に鋭く切り込みます。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料で読んでみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 武田邦彦メールマガジン「テレビが伝えない真実」 』

【著者】 武田邦彦 【月額】 初月無料!月額880円(税込) 【発行周期】 毎週 水曜日(祝祭日・年末年始を除く) 発行予定

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け