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中島聡 × 夏野剛「自らの未来は自らの手で変えていく」

中島、夏野両氏によるNPO「シンギュラリティ・ソサエティ」がローンチ

最近にわかに注目を集めている、シンギュラリティ(技術的特異点)という言葉。急激に進化する人工知能(AI)が人類の知性を凌駕する、そんな時代が来た時、世界はどのように変貌するのか。また、それに対する人類の準備は万全なのか。

そんなシンギュラリティ時代に備えるべく、メルマガ『週刊 Life is beautiful』の著者で、“Windows 95の設計に関わった日本人”として知られる世界的エンジニアの中島聡氏と、“世界初のモバイルインターネット i-mode を世の中に送り出した男”こと夏野剛氏の2人が発起人となり、この8月に設立されたのが、NPO団体「シンギュラリティ・ソサエティ」だ。

団体設立の正式アナウンス日となった8月24日には、そのローンチを記念したイベントが開催された。

会場には事前募集によって招待された限定80名の聴衆が集まり、中島氏によるシンギュラリティ・ソサエティ設立の経緯とその目的の説明、そして中島氏と夏野氏によるクロストークが、約2時間にわたって展開された。

シンギュラリティ・ソサエティのミッションとは

まずマイクを握った中島氏が語ったのは、シンギュラリティ・ソサエティが担うべきミッション。

「人工知能とかそういうもので社会が変化していくなかで、“人工知能に職を奪われる”とか“人を支配してしまうんじゃないか”という暗い未来もあれば、いっぽうで“人工知能のおかげで働く必要が無くなって遊んでられる”とか“でも遊んでばっかりいると、生き甲斐がなくて暗くなる”など、暗い未来と明るい未来が考えられるけれど、とにかくそういう時代の変化が起こるのを待つんじゃなくて、その変化の原因となるテクノロジーを操る立場になりたい。そういう意味での良い社会を作りたい。……そんな人たちをサポートするっていうのが、ソサエティとしてのミッションですね」(中島氏)

いっぽうで、「このパソコン・インターネット・モバイルによって世界が大きく変わっていった時期が、日本におけるバブル崩壊後の長い低迷期、いわゆる“失われた30年”と一致しているのは、偶然ではないだろう」と話す中島氏。

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中島聡氏

そのような状況を作った遠因のひとつとして挙がったのが、日本経済を牽引すべき立場にある経団連の主要メンバーの経歴。なんと全員が男、全員が日本人で、一番若くて62歳。そのうえ全員がサラリーマン経営者で起業・転職経験なしであるという現実を紹介したうえで、こう訴えた。

「ここにいる人たちと、 Facebook・Google・Amazon・MicrosoftなどのCEOと比べたら、もう天と地の差ですよ、はっきり言って。勝てるわけないんですよ。彼らに任してたら、日本の失われた30年は40年になるんですよ」(中島氏)

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自らの未来は自らの手で変えていく

このように閉塞感漂う日本の現状を、どう打破すればいいのか。中島氏はそのヒントとして、2人の偉人による箴言を挙げた。

まずは、ビジョナリストとしても知られる科学者のアラン・ケイ氏の「The best way to predict the future is to invent it.(未来を予想する一番いい方法は自分で作ることだ)」という、中島氏自身も好きだという名言。

「自分たちの未来を、自分で作っていかないと話にならないって言うことを、危機感と持って欲しいし、でも危機感だけじゃなくてポジティブな想いで、作れるんだって思って欲しいんです」(中島氏)

そして、もうひとつがAppleの創業者であるスティーブ・ジョブズ氏の名言とされる「The people who are crazy enough to think they can change the world are the ones who do.(自分が世界を変えられると本気で信じる人たちこそが本当に世界を変えている)」という言葉だ。

「自分が世界を変えられるっていう、そういう想いを持つ人たちに、日本をリードして欲しいんです。日本が世界をリードしてほしいんですよ。そういう馬鹿げた夢を持ってもいいんだよと、そんなことを伝えていくソサエティになりたいですよね」(中島氏)

タブーなく何でも議論できるソサエティが理想形

続いてマイクを握ったのは、シンギュラリティ・ソサエティのもうひとりの発起人である夏野剛氏。

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夏野剛氏

夏野氏は先に中島氏が挙げた「失われた30年」の話題に触れ、日本は1995年から2017年までの間で人口は0.9%増え、ITなどが普及したのにもかかわらず、GDPはわずか0.8%しか成長していないことを指摘。

「日本はすごいことをこの20年でやってしまった。人類史上初めて、技術の進化が生産性の向上に結びつかないという例を、この20年で作っちゃったんです」(夏野氏)

このように大いに危機感を煽ったうえで夏野氏は、

「“こんなのマズいな”とか“その原因の本当のところって何なの?”とか“本当だよったらどうなるべきなの?”とかいったシュミレーションとか議論とかが、大っぴらにされていない」

「シンギュラリティという言葉を聞くと、みんな“怖い”とか“すごい”とか、色んな想いあると思うんですけど、やっぱり技術的な大きな転換点を我々これから迎えるし、実は今までも迎えてるんですけど、この技術的な大きな転換点っていうのをちゃんと意識して、“我々人間の仕組みで、一番いい物って何なんだろう?”っていうのを常に考えることが、もう今の日本あるいは世界に重要なこと。“本当にこれでいいのか”っていう事を色んなところにぶつけて行って、まったくタブーなく、色んなことを議論できるソサエティができるといいなと思います」(夏野氏)

と、シンギュラリティ・ソサエティ設立の意義と今後への期待を述べた。

解雇規制が日本の生産性向上を阻害している

その後は、シンギュラリティ時代に起こりうる様々な問題をテーマとした、中島氏と夏野氏による対談が行われた。

NTTでi-modeを作り出した夏野氏と、そのNTTを数年で去った中島氏というお二人のこれまでの経歴を振り返るなかで、話題に挙がったのが、大きな会社には優秀な人材が眠っているという日本企業の実情。またそのような状況のなかで、日本の生産性が上がらない原因として、“解雇規制の存在”が大きいのではということで、両者の意見が一致した。

「僕は、実は経産省とか政府の委員会で、ものすごい言ってるんです。日本に必要なのは、非正規雇用をなくすことじゃなくって、正規雇用をなくすことなんじゃないかと。つまり、最長雇用契約10年までっていう制度にした方がいいんじゃないか。公務員も含め、って言ってます」(夏野氏)

「テクノロジーのおかげで、今まで3人でできた仕事が、ひとりでできるようになると、生産効率3倍になるじゃないですか。アメリカとかは、それを平気でしてるので、どんどんの生産効率がるんですけど、日本は人が切れないので……」(中島氏)

いっぽうで、シンギュラリティ・ソサエティでも検討すべき大きなテーマのひとつとして挙げられている“自動運転車の未来”に関する話題も、大いに盛り上がった。なかでも、日本が欧米や中国と比べて「EVシフト」が進んでいない現状は、政府等が有効的な進化圧を掛けられてないためと指摘。

「私は以前から言ってるんですけど、第二東名を自動運転車しか通行できないようにすればいいんです。そうしたら世の中変わりますよ。すごい進化圧になって、自動車メーカーは頑張るしかない。それこそ、政治がやるべき仕事だと思うんですね」(中島氏)

「政治家も政策を作る時は、まずヒアリングを行うんですけど、私が経産省自動車課の課長に話をすると、“そのアイデア、イイですね”ということで、今度は自動車メーカーを呼んでヒアリングをする。すると自動車メーカーは“そんな余計なことをしてくれなくても大丈夫です”ってことになる。こういうヒアリングって利害関係者までしちゃいけないんです。(中略)しかも省庁の課長って2年単位で変わるから、2年後にまたもう一回ヒアリングを……って感じだから、なかなか思い切った政策が出ない」(夏野氏)

これらを踏まえて夏野氏は、今後シンギュラリティ・ソサエティは政策提言をどんどんとすべきであると語った。

「急に菅さんが“ケータイ電話会社は儲けすぎだ”って言いだしたのも、兼業規制の緩和にしても、私が過去にずっと言い続けてたのが、届いたのかなって思ってて(笑)。別に俺のアイデア取ったとか言わないし、なんとなくそういう方向になればいいと思ってるんですが、とにかく我々がガンガン何か言っていると、それが巡りめくって政策に反映される可能性がある。そういうことも、このソサエティにすごく期待しています」(夏野氏)

これら以外にも、人工知能の進化が生み出す貧富の差の問題、そしてシンギュラリティ時代の民主主義の在り方といった問題などにも話が及んだ二人の対談。なおその模様は、シンギュラリティ・ソサエティのサイトのほうで、書き起こしが随時公開されていく予定だ。

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シンギュラリティ・ソサエティの活動内容は

シンギュラリティ・ソサエティでは「情報発信」と「オンラインサロン」の2本柱で活動を進めていくという。

「情報発信」とは、中島氏らが有識者との対談やカンファレンスを行い、その内容をブログなどで広く公開することで、シンギュラリティ時代に向けて解決すべき問題点を周知・共有する。中島氏の展望としては、ゆくゆくは国や自治体などに授業提案や政策提言を行うまでのレベルに持っていきたいとのこと。

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またメンバー専用のオンラインサロンを作り、シンギュラリティの時代を担っていく意欲の旺盛な人材を広く集めて、住んでいる地域や職業などを跨いだネットワークを構築。メンバー各自が興味のあるプロジェクトに参加することで、同時並行的に様々なテーマの解決に向けて話を進めていくという。

「ネットワークづくりはものすごく大事で。こういうサロンに入って“私がメンター役をします”“夏野さんがこういうこと話してくれます”っていうところから、直接学べることもあるかもしれないけど、それよりもやっぱり、こういういくつかのプロジェクトを通して、“この人とだったら一緒に仕事をしたい!”とか、もしくはそう思ってもらえる人を見つけるっていうのは、本当人生にとって財産ですから、そういう目的も持って欲しいですよね」(中島氏)

ちなみにオンラインサロンは、すでに第1期メンバーの募集を行っている。なお入会時には、「技術革新と社会」をテーマとした小論文の提出が必要で、第1期メンバーの定員は100人を予定。メンバーが集まった秋頃には、本格始動をする予定となっている。

やがてやって来るシンギュラリティ時代を、明るい未来とすることはできるのか。そして、閉塞感漂う日本の現状を果たして変えることはできるのか。今後の「シンギュラリティ・ソサエティ」の動向に要注目なのはもちろんだが、“自分の未来は自分の手で変えたい”という気概を持つ方は、ぜひとも参加を考えてみてはいかがだろうか。

シンギュラリティー・ソサイエティ公式サイト

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マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。IT業界から日本の原発問題まで、感情論を排した冷静な筆致で綴られるメルマガは必読。

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