「競争」とは生態学用語で、「栄養・生息場所などが限られている時にライバル同士でお互いにマイナスの影響を与えること」を意味するそうです。そう考えると神も仏もない話ですが、一方で競争が全くない世の中も味気なく、そもそもそのような社会などありえません。今回の無料メルマガ『子どもが育つ「父親術」』では、「上手な競争との付き合い方」をレクチャーしています。
競争との付き合い方
他者と競い合って、勝ち負けを争う、競争。中には『できるだけ子どもには競争させず、のびのび育てたい』とお考えの方もいるかと思います。ですが、多かれ少なかれ、競争しなければならない場面というのは、必ず出てきます。
子ども同士の遊びの中の「こっちのチームが勝った」「ボクがいちばん」は別にしても、運動会は明確に“競争”ですし、テストの点数を競争と捉える人もいるでしょう。各種コンクールも、他の参加者との競争の中で受賞する/しないが決められます。また、子どものスポーツのほとんどは試合や競技を行うものですよね。やがて大きくなれば、受験という競争に直面する時だって訪れます。
子ども自身が成長して自立していく中で、競争に臨む場面は必ず出てくるもの。大人になってビジネスの世界に入ったなら、「競争に勝つために」が毎日の仕事になるケースも珍しくありません。私としては、『なるべく子どもを競争させない』という育て方よりも、『競争を成長の糧として利用する』という育て方を心掛けて、そうした接し方を通じて『競争というモノとの付き合い方を教える』こともできれば、と考えています。
まず最初に、子どもと接する前に肝に銘じておきたいこと。それは親自身が、競争をどのようなものとして考える・扱うか。
『絶対に勝たねばならぬもの』と考えるのは、お勧めできません。それくらいの気迫を持って頑張ってほしい、という気持ちは理解できますが、親が子どもに接する態度としては不適切です。なぜなら、親が勝利を重要視するメッセージを発すると、勝てなかった時に子どもが必要以上に自信を失ってしまう恐れがあるから。もっと言ってしまうと、
「パパの期待に応えられなかった」
「ママは試合に勝てる子が好き、でもボクは負けちゃった」
との思いから、自己肯定感・自尊感情が大きく低下してしまうことが、非常に心配です。
また、「絶対に勝て」と言わなくても、競争を『他者と比較して優劣をつける場』として見ることも、同じ理由でお勧めしません。
私がお勧めする視点は、『勝つためにベストを尽くして、成長する場』という捉え方。
- 試合や競技・コンテストなどの競争の場が始まるまでは、勝つことを目標に、準備と努力を重ねる
- 試合などの競争の場では、これまでの努力で身に付けた力を100%出し切る
- ひとたび終わったら、結果を受け止めて次の成長のきっかけを掴む
このように考えて、競争に臨む子どもに接することができれば、理想的と思います。
ここまで読んで「なるほど」と思った方に、もう1つお伝えしたいことがあります。頭でどう考えようとも、言葉の端々に本音は出てきてしまうもの。子どもは、その本音を敏感に察知します。まずは、自分自身がどのような言葉を使っているか点検して、自身の本音を確認する作業から始めてみること、お勧めします!
下記の例はいずれもサッカーを想定した内容ですが、ご自身の身近な分野で読み替えて参考にしてみてくださいね。
「ソウタは試合になると全然力が出せないよな、ダメだなぁ」
→試合で力が出せるかどうかで子どもがダメかどうか─つまり子どもが価値ある人間かどうか判断している、という意味ですよね。少なくとも、子どもはそういう印象を受け取ります。
できることなら、「試合では誰でも緊張する」「緊張していても上手にできるようになれたらいいよね」「どうしたら試合でも活躍できるようになるだろう? そのためにどんな練習・準備ができるかな?」と、次の成長に向けた話をしてあげたいところ。
「いつも左足ミスしてばっかりだよね」
→左足が上手にできない子だと思っている、そして今日もその認識を再確認した、というメッセージです。親から『左足が苦手』という思い込みを押し付けて成長を妨げている、と認識しましょう。
課題を見つけられることは、試合などの競争の場に立つことのメリットの1つです。「もし左足でうまくシュートが打てたら、あそこで1点取れたね。今度は決めたいね! 今度の試合で左足シュートを決めるために、ソウタはどんな練習したらいいと思う?」と、次の成長のための具体的なプロセスへと気持ちを導いてあげたいです。
細かいことのように感じるかもしれませんが、どのような言葉で語りかけるかは、非常に重要です。一定の期間だけでも良いので、自分の言葉から子どもがどのようなメッセージを受け取って、どのような方向に気持ちが向くことになるのか、気に留めて過ごしてみること、お勧めします!
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