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大臣就任が裏目。文春砲に狙われた片山さつき大臣の「四面楚歌」

連日、数々の疑惑により野党議員からの集中砲火を受け続けている片山さつき内閣府特命担当大臣。そのきっかけとなったのが、週刊文春が報じた国税庁への口利き疑惑でした。元全国紙社会部記者の新 恭さんは自身のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』で、次々明らかになる「新事実」を挙げつつ、この疑惑を徹底追求しています。

音声データを認めてもなお往生際の悪い片山さつき大臣

「別に私がそう申し上げてもおかしくないなというものはある」

片山さつき地方創生大臣は今月15日、週刊文春が国税への口利き疑惑をめぐって公開した音声データの声について国会でそう答弁した。声の主が片山氏自身であることを認めたといっていい。

製造業社長X氏の依頼で国税当局に「青色申告の承認取り消しをしないよう口利きする見返りに100万円を税理士資格を持つ秘書の口座に振り込ませたという、その疑惑。“文春砲”が放たれて以来、国会では片山氏への追及が続いている。

文春オンラインによると、音声データは、2016年7月26日のもの。X氏からの電話に、片山氏とおぼしき女性が「もしもし。ああ、はいはい、どうもご無沙汰しております」と応じるところから録音は始まっている。

2015年、X氏の会社に税務調査が入り、青色申告の承認が取り消される恐れがあった。

このためX氏は知人の紹介で財務省OBの片山さつき事務所を訪れ、私設秘書で税理士資格を持つ南村博二氏に対応を依頼した。

その後、「着手金100万円を、至急下記にお願い申し上げます」と片山議員南村秘書の名を明記した書類が送られてきたので、X氏は指定通り、南村氏を代表とする税理士法人の口座に15年7月、100万円を振り込んだ。

ところが、結果として、青色申告は取り消された。話が違うではないか、とX氏は憤って片山氏の携帯に連絡してきたのだ。

X氏はこの会話が録音される10カ月ほど前、すなわち100万円を振り込んで約2か月後の15年9月に、片山氏を参院議員会館に訪ねている。約束通り国税への働きかけをしてくれているか、確かめるためだ。

このとき、片山氏はX氏の地元の国税局長に電話した。連絡はとれなかったが、「うまくいったら100万円なんて決して高いものじゃないわよね」とX氏に言ったという。

だが、そもそも今どき、財務省OBの国会議員が、かつて同僚だった国税局長に電話でひと声かけたからといって、どうなるものでもない。人事上の圧迫感を受ける総理や官邸に忖度して官僚が動くのとはワケが違うのだ。片山氏も南村氏もそれを承知のうえで、引き受けたフシがある。

片山氏がX氏の前でこれ見よがしに国税局長に電話をしたのは、自分の力を誇示しようとしたにすぎないだろう。安倍首相に顕著なことだが、政治家はできないことでも、“やってる感を見せたがる

音声データに戻ろう。片山氏の声は続く。

「すいません、大変申し訳ないんですけど、いつから、その話(取材に来た)って始まったんですか?選挙の前だったのは覚えてるんですけど。何曜日くらいですか?」

文春の取材は今から2年半前に始まったという。2016年の春か初夏だろう。片山氏の知人から同誌に寄せられた「片山事務所が財務省への口利きをめぐりトラブルになっている」という断片情報がきっかけだった。

16年7月10日に参院選の投開票があり、自民党公認で比例区から出馬した片山氏は再選された。7月に入って同誌の記者が南村氏に接触しているので、おそらく同じ時期にX氏へもアプローチしたのだろう。

「うーん、まあ(南村氏は)ちょっと荒っぽい、パニックになる人だからね。とにかく電話はすぐしてみますけど」

文春の2018年10月25日号には、当時、記者が南村氏に取材したさいの様子が次のように書かれている。

「業者から口利きの金を受け取ってトラブルになっていると聞いたが」と問うと、南村氏自らX氏の名前や相談内容、会社の内情などを記者に語りはじめたのだった。…X氏から「交通費と日当以外、受け取っていませんよ」などと、金銭を受け取ったことを否定していた。

南村氏からX氏のことを聞いた記者は、すぐにX氏に取材をしたはずだ。そのさい、南村氏が「金銭をもらっていない」と記者に語ったことを知り、X氏が片山氏に電話をかけたという流れだろう。X氏にすれば、100万円をもらってないように言い、青色申告の取り消しについて力になってくれなかった片山事務所に対し腹の虫がおさまらなかったとみえる。

片山氏は南村氏のせいにして、「とにかく電話してみます」と空っとぼけたのに違いない。そればかりか片山氏は以下のようにX氏と出会ったことが自身の不幸であるかのごとき言い方をしたのである。

「Yさんのご紹介(電話では実名。元事務所スタッフ(がなかったら、(私も)Xさんと会うこともなかったんで」

X氏に100万円の件を追及されたらしい片山氏の声。

「(南村氏は)私にそんなものは実費だって言ってましたけどね。私はちょっと金額としてお高いんじゃないですかということだけは(南村氏に)言いましたから、当時、はい」

文春オンラインでは、事務所関係者が明かした話として次のような内容が報じられている。

「当時、片山氏はX氏の仲介者にも『上手くいけば、1億だってかかる話ですよ』などと話していた。100万円はあくまで手付金で、国税への口利きが上手くいけば、X氏から片山事務所に1億円入るという意味だと思います」

1億円はオーバーとしても、片山サイドとしては、国会議員にものを頼むのに100万円くらいは挨拶程度のもので、上手くいかなくてもあきらめてもらうしかない。上手くいったら、成功報酬をたっぷもらいますよ、という“相場観”があるのだろう。もっとも、それが国会議員の通常の感覚だとしたら由々しきことである。

ところで、片山氏は国会で南村氏のことを「秘書ではない」と主張、週刊文春を相手取った訴訟でも「南村が原告(片山氏)の秘書であったことはない」としている。つまり、南村氏は税理士としてX氏と契約しただけで、片山事務所とは関係がないと言いたいわけだ。

しかし、秘書しかもらえない参院の通行証を南村氏が持っていたことを国会で追及され、「強く要望したので、2011年10月から15年5月までの間、保有していた」と片山氏は認めている。片山事務所が秘書でない人を秘書だとしてニセ書類をつくり参院に申請したとしたら、これもまた問題ではないか。

そもそも、南村氏は片山氏の「旦那さんと互角に並ぶ側近であることを自ら文春の記者に明言しているし、それは南村氏の下記のブログ記事を見ても推察できる。

2011年02月17日 昨朝の全国紙でリリースされた片山さつき議員の御母堂様の葬儀が台東区内で行われ、来賓受付や電報整理等のため深夜に戻りました。

2011年08月27日 来月予定している片山さつき議員の香港での経済講演の準備のため、香港日銀支店長、香港商工会議所理事長、香港日本人倶楽部会長、香港総領事、その他の挨拶に香港入りし、本日帰国した。

2012年01月27日 日本初の女性県議会議長を歴任した、福岡県議会田中秀子議員の新年祝賀パーティーにて、片山さつき参議院議員を代理して挨拶した。

それにしても、この南村という人物、よほどおエライ方との人脈を誇りたいらしく、ブログを見ていると、登場するのは政官界のしかるべき地位にある人ばかり。

そういう点では、いまだに東大、財務省出身の超エリートであることを鼻にかけ、左右を問わず人望がなく信頼できる部下の少ない片山氏とは、互いに利用し合える似た者どうしと言えるかもしれない。

アエラドットは南村氏の今の思いを、11月18日の配信でこう伝えている。

「片山さんは、私が秘書でないほうが都合がいいのでしょう。わかりませんが、秘書との連座制とかがある場合があるからかな。片山さんから電話があって、『あなたなんて顔を見たこともない会ったこともないわよね』と言われましたが、私は『それは無理でしょう』と押し戻したんですよ。これまでどれだけ一緒に方々を回って、秘書の名刺も切ったか」

この期に及んで片山氏がいかにうろたえているかが、よく分かる。

片山氏は収支報告書への政治資金の不記載が次々と見つかり、訂正届けに追われている。「秘書の交代時に引継ぎが悪かった」などと、例によって秘書たちのせいにしているが、カネの動きを隠す意図がないのなら、いい加減な事務所運営をしているということにほかならない。

片山さつきの名と顔写真が表示された自著の大きな広告看板を浜松、名古屋、埼玉の計4か所に設置していることも国会で指摘された。片山氏が出馬した16年参院選以前から設置されているものがあり、公職選挙法違反ではないかと指摘されている。

週刊文春は先述の通り、2年半ほど前に片山事務所の口利き疑惑を取材したが、確証を得られないということでいったん記事にするのを見送っている

このタイミングで再取材し、大々的に報じ始めたのは、片山氏が大臣に登用されたことと無関係ではないだろう。念願の大臣になったことが運のつき、ということだろうか。

image by: 片山さつき - Home | Facebook

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