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まだまだ元気だ。世界をリードする日本企業「ダイフク」の底力

今、物流業界では「工場や倉庫を持たず、部品の組み立てからスタートし、完成品の配送先仕分け、出荷」の一連作業を途切れずに行う仕組み「マテハン」をいかに究めるかが競われています。今回の無料メルマガ『ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」』では著者の嶌さんが、ユニクロを始めとする多くの企業のマテハンに携わり、特に搬送機分野で世界トップクラスになった「ダイフク」のこれまでの歩みや企業競争力を紹介しています。

加速する日本の流通システム改革 ―マテハンで世界一競うダイフク 流通の進化で企業競争力を支える―

マテハン」という言葉をご存知だろうか。物流業界で使われている略語で「マテリアル・ハンドリング」の略だ。いまやネットショッピングが当たり前の時代になってきたため、ネットで注文された商品をどのように消費者の手元にいち早く安く届けるかが物流業界の最大の焦点になってきている。

その物流、特に生産や流通の要となる商品をベルトコンベアに載せて運び、区分けする搬送機の分野でドイツのシェーファー社と世界で12位を競っているのが日本のダイフク(旧大福機工)」なのである。一般消費者の目に直接触れないのでその名前はあまり知られていないが、物流業界の搬送機器メーカーとしては知らない人はいないといわれるほどだ。

搬送機器は物流センターや工場の生産ラインで商品や部材を回転ローラーに載せて運搬するコンベアが中心となる。ダイフクはコンベアに載せて商品を運ぶだけでなく商品や部材の入荷在庫管理自動仕分け、そして仕分けた製品をトラックに載せるまでの出荷など、一連の物流システムを全て手掛けている

1時間で7,600ケースを搬送

例えば千葉県にある流通センターでは総延長がなんと1,200mの自動仕分け装置の上を加工食品や日用雑貨品など外部から届けられた商品を約30種類のカテゴリーに自動で仕分けて保管場所に向かう。その後、店舗から発注を受けると必要な品物だけが自動で抜き出し、搬送ラインに載せられ1時間に約7,600ケースがラインの外で待ち受ける配送トラックへ運ばれ、消費者のもとへ届けられるのである。

人の手を借りない商品のピッキングや仕分けケース詰めなどの光景は圧巻だ。しかも、ただピッキングしてケースに収めるだけでなく、リンゴやミカンなどの果物は形状や大きさ、重さを分類し、糖度や熟し方まで瞬時に判断し、等級別に仕分けし搬送するという。これまで人手で形状や重さ、糖度などを判別していた時代と比べると全くの様変わりといえる。

ユニクロや半導体、食品、医薬品も自動搬送

ユニクロは今年10月、eコマース用の自動倉庫を本格稼動させたが、省人化率90%の世界最先端最大級の自動倉庫の構築に中心的役割を果たしたのが世界最大手のダイフクだった。顧客にはユニクロ以外に半導体ディスプレイ食品医薬品などの製造、流通、運輸などの業種も抱える。

少子高齢化が進む日本だけでなく人件費の高い欧米や最近労務費が高くなってきた中国などでも工場倉庫を使わないで自動化省力化が進んでいる搬送システムが注目されているのだ。また最近は空港手荷物搬送システムも注目され、航空機への積み込みまでを自動化した手荷物の搬送システムや自動チェックインやセキュリティなど空港内の設備監視制御までを担うシステムまで扱い始めている。

ジャスト・イン・タイムの搬送・納入

ダイフクは1937年に大阪市で製鉄用鍛圧機械を製造したことからスタートした。しかし大きく変わったのは、約20年後の1959年にトヨタ自動車に日本初のウェブ・コンベヤーを納入。トヨタとの付き合いが始まってからだ。トヨタが稼動させた日本初の乗用車専門工場の自動生産ラインを納入したのがきっかけだった。

トヨタの要求に応ずるため必死となったのだ。余計な在庫を持たないようにするためには決められた時間に部品を決められた部署に持っていかなければならない。搬送機器がトラブルを起こし、生産ラインが止まれば、トヨタの強さの秘密であるジャスト・イン・タイムもストップしてしまうからだ。こうしてダイフクはトヨタの厳しい品質管理納入時間の厳守などを学んで共に進化してきたのである。

ただ、現代のマテハンは、既存事業の強化だけでなく新たな市場の変化に対応することが求められている。荷物の小口化、個配化、多頻度配送が増え、さらにネット通販の発展に伴い、より多方面、多品種、多頻度の配送が求められるので独自の小口配送システムの確立が重要になっているのだ。従来の顧客の引き合いに対応しているだけでは激しい流通業界の競争に立ち遅れるので、常に先取りできる流通システムの構築が求められているのである。

運ぶ、仕分ける、搬送で企業の下支え

いまや2万アイテムを扱い、1日平均5,000件のオーダーを受注後、平均で約3時間のうちに出荷するという。しかもダイフクのマテハンは世界規模で展開しており売上高に占める海外比率は67.3%(2018年3月期)で、世界の23の国と地域に拠点を設けている。北米は自動車、IT、流通、サービスの中心の国なので、アメリカでトップを目指すとともに今後は中国、ASEANでも伸びが顕著な自動車、エレクトロニクス、飲料、食料、医薬品、ネット通販などの分野でコンサルティングからアフターサービスまでの一貫体制を目指しているという。

マテハンの活用は「運ぶ仕分ける保管するを究めることにあるが、新サービスの提案力、新市場の創造力を求めているうちに日本の企業の底力を底上げする役割を担ってきたといえる。将来は瞬時に正確にモノを届ける技術の開発が流通業を制するカギになってくるという。いまや流通システムの改革は企業競争力の中で極めて大きなウエイトを占めるようになっているといえる。(Japan In-depth 2018年11月23日)

なお、ブログにはダイフク社の会社案内VTRを合わせて掲載しております。ご興味をお持ちの方は合わせて参照下さい。

時代を読む

image by: ダイフクHP

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ジャーナリスト。1942年生。慶応大学経済学部卒業後、毎日新聞社入社。大蔵省、日銀、財界、ワシントン特派員等を経て1987年からフリー。TBSテレビ「ブロードキャスター」「NEWS23」「朝ズバッ!」等のコメンテーター、BS-TBS「グローバル・ナビフロント」のキャスターを約15年務め、TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」に27年間出演。現在は、TBSラジオ「嶌信彦 人生百景『志の人たち』」出演。近著にウズベキスタン抑留者のナボイ劇場建設秘話を描いたノンフィクション「伝説となった日本兵捕虜-ソ連四大劇場を建てた男たち-」を角川書店より発売。著書多数。NPO「日本ニュース時事能力検定協会」理事、NPO「日本ウズベキスタン協会」 会長。先進国サミットの取材は約30回に及ぶ。

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【著者】 嶌信彦 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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