いわゆる「徴用工問題」に関して、日本との条約を履行する意思がないことを明確化するような発言を行った韓国の文在寅大統領。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では著者の津田慶治さんが、韓国の行いは度が過ぎておりもはや穏便外交はないと断言、国交断絶もあり得るという厳しい論を展開しています。
次の世界の構図は?
日韓関係では、堪忍袋の緒が切れて、とうとう破局まで行きそうであり、日露平和条約交渉も失敗になりそうで、日本外交がうまくいっていない。今後はどうなるのか検討しよう。
NY株価
NYダウは、12月26日2万1,712ドルまで下がり、12月27日最後の1時間でPKOを行い戻して、12月28日2万3,381ドルにした。1月4日2万2,638まで下げたが、その後は上昇して、1月10日には2万4,014ドルまで上昇し、2万4,000ドルまで回復したが、1月11日2万3,995ドルと利益確定売りが出て若干下げた。
まず、12月27日に米政府がPKOを年金運用機関に依頼して6.6兆ドルを市場終了前1時間で買いを入れたことで急速に戻して、1月4日には、パウエルFRB議長が利上げを当分中止すると発言し、かつ米中貿易戦争緩和の方向であったことで、市場の要求が満額回答になり、NYダウは上昇に転じた。
株価は依然高い水準であるが、株価維持の政策をFRBと米政府が行ったので、価格を維持できている。雇用統計が、失業率を低位維持して賃金が3%も上昇して景気好調を確認し、株価は高い水準を維持した。賃金上昇でインフレ懸念から、普通ならFRBは利上げするが、株価暴落でパウエル議長は、利上げを当分しないとしたことで、市場に安心感が出ている。
次の株価下落は、アップルの大幅減益の報になる。アップルは売上高の予想を下方修正したが、まだ利益の下方修正をしていない。
しかも、このアップルに対して、トランプ大統領は、米国で生産をしない企業の面倒を見ないし、中国生産が落ちて中国が困るだけであるとつれない。
トランプ大統領は、米中の貿易協議で貿易赤字問題では折り合いを付けるが、ハイテク分野での知財権保護では対立したままになり、揺り戻しが来る可能性もある。このように企業業績下落や貿易戦争激化で市場を裏切ることで株価は、上下動を当分続けることになる。
もう1つ、今後、米国は単純労働の移民受け入れを止めるので、賃金の上昇は続くことになる。当分、本格的な景気後退にはならないが、賃金上昇で企業収益が徐々に落ちてくる。景気後退が明確化する時期は、2019年中頃と見るので、それまでは、株価が上下動しながら、徐々に下落すると見る。
日経平均は、12月26日1万8,948円になり、12月27日にPKOを行い、2万0,211円まで戻して、1月4日に104円まで円高になり、1万9,241円まで下がり、1月11日2万0,389円まで上昇した。
日本は、円高の要素があり、NYダウほど上昇していないが、こちらも、PERが11-10倍程度であり非常に安い水準で、かつ日銀ETF買いで下値は切り下がらない。しかし、海外投資家の大幅な売り越しが続いている。空売り比率も45%もあり、空売りが多い。
日本企業は、中国の景気後退で、米国より早く景気後退が来ることが予想できる。このため、海外投資家は、売り越して株価もそれを織り込み始めている。
トランプ大統領の政策に変化
トランプ大統領は、メキシコ国境に壁を建設する予算を議会に要求したが、民主党が反対して予算が決まらずに、一部政府機関が22日以上も閉鎖されている。
このため、軍用災害予算を転用して、壁の建設をする案を検討しているようである。非常事態宣言をするとしたが、軍予算流用の方向になり、非常事態宣言をしなくて済むようだ。
トランプ大統領は、シリアから米軍を即座に撤退させると言ったが、ボルトン補佐官とポンペイオ国務長官が中東各国を回り、ボルトン補佐官は、クルド人の安全を確保できるまではシリアからの撤退はないとしているし、ポンペイオ国務長官もイランで、米軍の撤退は徐々に行い、イラク米軍がシリアのIS攻撃に参加すると、米軍撤退の衝撃を鎮静化させている。トランプ大統領も、共和党議会からの説得で、その方針を了承したようである。
米中貿易協議では、トランプ大統領は、早期の合意を米国交渉団に求めたようである。米中貿易戦争拡大になると株暴落を引き起こすことを恐れているようだ。
しかし、ハイテク分野での知財権保護などで合意できない可能性があり、そのために、トランプ大統領はFRBにゼロ金利への回帰を要求し始めている。勿論FRBは、景気後退が確認できない限り、利下げはしない。
オバマ前大統領の行なった政策を破棄することと、大統領選挙で公約した過激な政策を実施してきたが、その政策のマイナス面が出てきて、技術者などのビザ発給を絞るなどの過激な政策に歯止めがかかり始めている。やっと、政策を総合的にとらえるようになってきた。トランプ大統領自身の正常化が起きてきたと見る。
しかし、炭鉱労働者などは、公約とは違い石炭需要が減って、炭鉱労働者の減少などから、トランプ大統領はウソをついたと反発し始めている。
習近平国家主席の政策
一方、中国としても、米国との貿易交渉では中国が譲歩できることは、すべて譲歩するようである。しかし、ハイテク分野での国家補助金禁止や知財権保護に罰則を求める米国の要求を受け入れることはできない。
この部分は、国家体制にかかわることであり、譲ることができないのだ。
このため、米国の技術を盗むためにシリコンバレーに在った中国企業の事務所を撤退させ、米国への投資もなくしている。世界的に中国企業は、投資などから撤退をしている。
そして、米中合意した内容など全体的な方針を全政府機関に説明するために、共産党中央委員会第4回全国大会を近々に開くようである。
もう1つ、米国と2回目の首脳会談を予定する北朝鮮の金正恩委員長が北京に行き、習近平国家主席と4回目の首脳会談をした。中国が朝鮮半島の統一と核問題解決を図るようである。このため、訪朝、訪韓を計画している。これは、朝鮮全体を中国圏に取り込む準備であろう。
そして、米中貿易戦争で、中国経済の大減速が鮮明になり、大幅な金融財政政策で景気維持を図るようであり、政府は大規模な減税を打ち出し、中国人民銀行は量的緩和として、株価維持のために広範な株の買取も行うという。資産価格の暴落を引き起こすバブル崩壊をしないように、政策総動員で臨むようだ。
中国が景気減速すると、日本も景気が悪くなるが、日本以上に影響が大きいのがドイツであり、ドイツが中心の欧州経済全体も大きな影響がある。このため、EU経済の減速が見えてきている。
中国は経済の減速が起きているのに、政策を全体的に見ると、中国の覇権奪取の方向は変えないようで、一帯一路もそのままで、大中国圏構想の実施は継続する。
日露平和条約交渉
日露平和条約締結交渉は、米国の撤退で中露の時代が来ていることと、プーチン大統領が国内の猛反対で交渉テーブルにも付けない状態になっている。このため、日本に厳しい条件や安倍首相の発言に内政干渉などとクレームを付けて、北方領土返還なしの平和条約にしようとしている。
日本側は、ロシアの猛反対に有効な手がなく、日本から条件を出すと内政干渉と言われてしまい、なすすべがない。これは北方領土返還を諦めるしかないような状態になってきた。4島を日本人がビザなしで訪問でき、観光できるようにする程度かもしれない。これでは、ロシアと平和条約を締結できない。
この平和条約締結の成果を基に、衆参同時選挙を安倍首相は目論んだが、できなくなったようだ。参議院選挙だけになると、野党が一本化すれば自民党に勝てる可能性が出てくる。
日韓関係(徴用工問題)
日韓関係も、とうとう、韓国文大統領は、徴用工裁判と賠償を日本も了解して、政治問題化するべきではないとした。
ということの意味は、韓国が日本との条約を履行する意思がないことを明確化したことになる。これで、日本も条約を履行しない韓国に対して、韓国で、日本企業が被害を受ける金額と同等の金額以上を日本に持つ韓国資産を差し押さえることができることになる。というより、韓国資産を全部凍結することができる。
条約を履行しないことが明確化したことで、「目には目を、歯には歯を」の対応をするしかない。韓国は、この件では交渉しないと明確に答えたので、日本も韓国が行う相当程度の行為を同じ強さで行うことの正当性を確保したことになる。
条約破棄の意味が、韓国はわかっていないので、その意味を明確にする必要が出ている。
その政策実施後に、韓国もしぶしぶ国際裁判所での裁判を受け入れることになる。日本文化である穏便に事を行うというには、韓国の行いは度が過ぎている。堪忍袋の緒が切れた状態だ。韓国に対して、穏便方法はもうない。
資産凍結ということは、日韓貿易もできなくなる。貿易代金を差し押さえることができるので、貿易ができない。ロッテは、日韓分離になるし、LINEの韓国分の株も差し押さえ対象になる。韓国企業の損も非常に大きいことになる。
自国第一主義の行きつく所
韓国は、自国第一主義の先端的な国である。友好国との条約を一方的に破棄して、相手国の資産を凍結することに、恐れも何も感じないのが不思議である。普通なら、それ相当の仕返しを覚悟して行うことであるが、韓国の文大統領は、そのようには見えない。淡々としている。普通の外交感覚がマヒしている。
日本をなめているからできることである。しかし、関係の破棄は、条約が有効ではないので、残念ながら、経済関係もすべてを切ることになる。国交断絶もありえる。
その結果は、弱肉強食の世界に戻ることになる。韓国は、それだけの経済規模があるならよいが、それほどではない。韓国の行先が思いやられる。
世界の構図
このような自国優先の行動が出てきて、弱肉強食の世界では同盟が再構成されて、次の世界の構図ができ始める。日米英豪加NZの6ケ国が同盟を組み、その上に欧州が参加して同盟関係を築き、それ以外の国は、中露か中立か日米陣営かの選択を行うことになる。
インドのように、日米と中露のどちらにも属さない国も出てくるし、アフリカや中央アジアのように中露陣営につく国もある。欧州は、中国との関係を良好にしたいようであり、日米など6ケ国とは明確に違う。韓国は中国陣営になることが確定したような気がする。
さあ、どうなりますか?
image by: 文在寅 - Home | Facebook