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中国の差し金か。香港デモに乗じて市民を分断する中共の「犬」

先日掲載した「香港デモで高所から転落の男子大学生が死亡。香港で相次ぐ不審死」等でもお伝えしているとおり、香港情勢が混迷を極めています。11日には抗議活動に参加していた21歳の男性に対し、警官が至近距離から実弾を発砲するなど、香港警察の暴力もエスカレートしていますが、その理由はどこにあるのでしょうか。台湾出身の評論家・黄文雄さんは今回、メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』で、その裏には習近平中国国家主席による「命令」があると指摘し、警察による弾圧はますます激化すると予測。さらにここまでデモが激化した原因についての持論も記しています。

※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2019年11月13日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

【香港】香港警察の暴力がエスカレートしている理由

香港デモ隊が「口論の相手に火を付けた」と警察 動画も拡散

日本のメディアでもいろいろと報道されていますが、香港が第二の天安門になりそうなので、改めてここで取り上げたいと思います。この数日間の香港関連のニュースは過激なものばかりでした。以下に一部を列記してみます。

香港デモ、警察の強制排除で転落した男子大学生が死亡 抗議活動で初の死者
香港警察発砲で若者重体 動画が波紋、デモ隊「報復」も
香港で警察が実弾3発発砲 デモ隊紛糾「殺人だ!」
香港警察 実弾で再び負傷者 背景に習主席の圧力も
香港 日本人観光客がデモ隊に暴行される 地元新聞

これらの報道は枚挙に暇がないので、このくらいにしますが、とにかくひどい。これまでなんとか保たれていた一線のようなものがだんだんと崩壊していくのがよくわかります。

警察が実弾発砲したから、デモ隊も人に火をつける。憎しみの応酬ですが、実力の差は歴然です。デモ隊がどうあがいても、警察の武装に勝てるわけがありません。双方がもみ合っている映像を見ても、装備が全く違います。中国は、こうしてなし崩し的に香港を天安門にしようとしているのでしょうか。

香港の民主の女神と言われる周庭(アグネス・チョウ)さんは、こうなると親中派と民主派の闘いではなく善悪の問題ですとツイッターでコメントしています。

香港 実弾発砲 活動家女性「警察は殺人鬼のよう」

今の香港警察は完全に人民解放軍化しています。香港警察に偽装した人民解放軍が紛れ込んでいるという噂もあります。人民解放軍は人を人とも思わぬ凶行が得意です。そろそろ本領発揮といったところでしょうか。

香港の人々は、このままでは身の危険すらあります。まずは命を守る行動をとるべきです。身の安全を確保した上で抗議活動をしなければ、簡単に傷つけられ、命を奪われてしまうのです。香港の人々は、中国の恐ろしさをもっと知るべきです。

私が何より残念なのは、傷つけられ命を奪われるのが若い命だということです。情熱があり、明るい未来を持っている若い命が簡単に奪われてしまうことは、絶対に避けなければなりません。

この非常事態に台湾の蔡英文総統もコメントしています。以下報道を引用します。

蔡英文総統はフェイスブックで、北京と香港の政府に対し「銃弾ではなく、民主主義や自由への約束で香港の人民に応えるべき」と呼び掛けた。

 

蔡総統は「政府は丸腰の人民に発砲すべきではない。発砲は問題を悪化させるだけだ」と香港政府を非難。「対話でこそ問題を解決できる」とし、香港の人々の自由や民主主義に対する思いを真剣に受け止めるよう改めて呼び掛けた。

蔡総統、北京と香港の政府に呼び掛け「民主主義の約束で応えるべき」/台湾

しかし私は、香港政府に対話ができる余裕はないと思っています。行政長官は保身ばかり考えている操り人形です。何も期待してはいけません。また、それを指摘し非難する人は、香港政界にはいません。いや、いましたが、そうした人はすべて排除されています。

ある民主派議員は、親中派と民主派の小競り合いが発端で、男が数人をナイフで刺した事件現場に居合わせました。そこで仲介に入ったところ、その男に耳を噛みちぎられてしまいました。

香港デモ、ナイフ男が5人襲撃 区議は耳を噛みちぎられる

香港では毎日人々の血が流れています。行政長官の林鄭月娥(キャリーラム)は、自分だけ安全な場所から高見の見学で、たまに声明を出してはデモ隊を批判するだけ。この事態を収拾しようとしないばかりか、「デモ参加者は人民の敵」だと言って平然としています。

林鄭月娥は11月4日に上海で習近平と会談しましたが、習近平からは「高度な信頼」を伝えられたそうです。習近平は「暴力と混乱を阻止し、秩序を回復させることが香港の当面の最重要任務だ。法に従って暴力を止め、処罰することが香港民衆の幸福を守ることになる」と言ったそうですが、すなわち、「なんとかしろという命令です。香港警察による弾圧は、ますます激化していくでしょう。

習近平氏、香港長官に「高度な信頼」 更迭観測打ち消し

議員が耳を噛みちぎられた事件も、もともとナイフで市民に切り付けていた人物は中国共産党の犬による離間計敵を仲間割れさせる戦術)」だったのではないかとの噂もあります。その証拠に、警察が来てもこの男を押さえつけ取り締まることはなかったそうです。この事件で、ショッピングに来ていた何の罪もない香港市民2人が巻き添えを食らい、重体となりました。

中国はこのようになんだってするのです。香港の人々は、ぜひ自身の身の安全の確保を最優先してから、運動に参加して欲しいと思います。

香港デモがここまで長期化し、だんだんと激化している原因は、主に文化・文明の衝突だと私は考えています。中国は、中華王朝という制度のもとで2,000余年もやってきました。

しかし18世紀になると、内乱が相次ぐなかで、やっと「天下思想の矛盾に気づき西洋発の近代国民国家というシステムの優位性を知りました。続いてユーラシア大陸の東方も、西風東漸の影響から「近代化とは何か」を知るようになり、国家と国民との関係とは何かを知るにつれて西洋列強に憧れていきました。

そんななか香港は、イギリス統治下で国家観から文化や文明まで、あらゆる価値観が西洋的になっていったのです。そして香港は、近代化に開眼した人々が集まる場所となったのです。

中国人の国家観は、伝統的な全体主義の天下観です。自由を求める香港との文化摩擦は、香港の反中国デモを引き起こしました。今回の香港デモの長期化は、中華王朝と近代国家との価値観をめぐる衝突が一因となっています。

香港の若者世代は、体を張ってでも市民国家としての国の「かたち」を守りたいと思っています。それはチャイナドリームとは全く違う文化、文明です。そのため、今回の香港騒乱はどちらかが妥協すれば解決できるという問題ではありません

さらに、上海閥と習近平との間に利権をめぐる衝突があります。それは共産党内部の内ゲバの延長戦であり、それが香港を舞台に繰り広げられているという構図なのです。

image by: Kirk_Zamieroski / Shutterstock.com

※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2019年11月13日号の一部抜粋です。初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込660円)。

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