驚くことに、歩合給、出来高給の会社では、残業代を支払わなくても良いと思っている雇用主が多くいるそうです。もちろんそれは違法であり、残業代はもちろん深夜労働に対しても割増賃金の支払いが必要です。無料メルマガ『採用から退社まで! 正しい労務管理で、運命の出会いを引き寄せろ』の著者・飯田弘和さんが歩合給や出来高給の割増賃金の計算方法と、基本給がない場合の「出来高制払の保障給」についても紹介しています。
歩合給の残業代の支払いについて
本日は、歩合給の場合の残業代についてお話しします。歩合給や出来高払制の賃金については、残業代を支払わなくても良いと思っている事業主さんがいます。そのため、残業代の支払いが必要であることを伝えると、ビックリされます。
しかし、たとえ歩合給や出来高給であっても、時間外労働に対しては割増賃金は支払わなければなりません。1日8時間あるいは1週40時間を超える労働については、割増賃金の支払いが必要です。深夜労働に対しても、割増賃金の支払いが必要です。
ただし、歩合給や出来高給の場合、割増賃金の単価の計算方法が少し特殊です。歩合給や出来高給の金額を、その月の総労働時間で割った金額が1時間当たりの労働単価です。そして、それを0.25倍した金額が、時間外労働の単価です。1.25倍ではなく、0.25倍です。1.0倍の部分は、既に歩合給の中に含まれているからです。
たとえば、ある月の歩合給が40万円、その月の総労働時間が200時間、この月の残業時間が30時間だとします。
- 400,000円÷200時間×0.25×30時間=15,000円
この月の残業代は15,000円となり、給与額は415,000円となります。
基本給と歩合給からなる賃金の場合、基本給部分と歩合給部分とを分けて残業代を計算することになります。
ところで、基本給がなく、歩合給や出来高給だけである場合、労基法27条の「出来高払制の保障給」の適用があります。すなわち、完全歩合給制や完全出来高給制であったとしても、1時間につきいくらという最低保障額を定めておかなければなりません。
保障額については特に定めはありませんが、少なくとも最低賃金法で定める最低賃金額以上でなければなりません。保障額の定めをしていない場合や保障額を下回った場合に賃金の保障をしなかった場合、労基法27条違反となります。
完全歩合給制や完全出来高給制の会社は、保障給額の定めと残業・深夜業に対して割増賃金の支払いが必要なことを改めて確認してください。
※ このようなものが完全歩合給制と呼べるかどうかは別として…
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