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メルカリで承認欲求が満たされる?利益「百円以下」出品者の心理

2019年5月に経済産業省がまとめた「平成30年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」※1によると、2018年のフリマアプリ推定市場規模は6,392億円(前年比32.2%増)で、調査開始以来3年連続で成長。さらに、今年10月に新規事業者が市場に参入するなどの盛り上がりをみせています。

なぜここまでフリマアプリは急速に成長しているのでしょうか。株式会社メルカリの新組織「メルカリ総合研究所」の調査結果で見えたその背景を紹介しましょう。

この調査は、フリマアプリ市場の成長の背景には「金銭的な利益を得ること」以外にも多様な利用目的があるという仮説のもと、「100円以下の利益でフリマアプリに出品する利用者」515名※2、「最低1,000円以上の利益を見込んで商品を出品するフリマアプリ利用者」515名(合計1,030名)※3を対象に、多様化するフリマアプリの利用目的を明らかにするために実施されたものです。

約4人に1人が100円以下の利益でフリマアプリに出品

100円以下の利益でフリマアプリに出品する頻度を尋ねた質問に「3回に1回以上」と回答したフリマアプリ利用者が22.0%いることが明らかになりました。また少額取引利用者の男女比は、男性36.7%、女性63.3%、年代構成比は、10代3.1%、20代24.3%、30代35.1%、40代22.5%、50代15.0%となっています。

小額取引利用者は「捨てることがもったいない」意識が高い

少額取引利用者のフリマアプリ利用目的TOP3は、1位「不要品を処分するため(73.6%)」、2位「捨てることがもったいないため(62.3%)」、3位「お金を得るため(59.2%)」であることがわかりました。また、高額取引利用者と比べて、「捨てることがもったいないため」の回答が多く、最も大きい15.7%の意識差があることがわかりました。次に、「誰かの役にたつため」が11.3%差、「節約、お得に買い物をするため」が9.1%差と続きます。

7割以上が、商品が売れると「嬉しい・楽しい」と感じる

少額・高額取引利用者を問わず、出品した商品が売れた瞬間の感情を聞いたところ、74.5%が商品が売れた時に「嬉しい・楽しい」と感じると回答しました。

「嬉しい・楽しい」と回答した人に、その理由を聞いたところ、少額取引利用者の理由TOP3は、1位「使えるモノを捨てる罪悪感がなくなるから(63.6%)」、2位「無駄なく生活ができていると感じるから(55.9%)」、3位「儲かったと感じるから(52.5%)」であることがわかりました。

また、少額取引利用者は高額取引利用者と比べて「使えるモノを捨てる罪悪感がなくなるから」の回答が多く、23.9%の意識差。一方、高額取引利用者は少額取引利用者と比べて「儲かったと感じるから」の回答が多く、19.9%の意識差があることがわかりました。

男女で違うフリマアプリの「楽しさ」

少額取引利用者が、商品が売れた時に「嬉しい・楽しい」と思う理由を男女別にみると、男性は女性よりも「他者に評価されたと感じるから」という回答が多く、22.8%の意識差。一方、女性は男性よりも「使えるモノを捨てる罪悪感がなくなるから」という回答が多く、8.7%の意識差があることがわかりました。

小額利用者の方がフリマアプリに「ハマっている」

フリマアプリへの出品に「ハマっている」かどうかを聞いたところ、少額取引利用者の59.8%が「ハマっている」と回答。高額取引利用者と比べて、17.3%の意識差があることがわかりました。

7割超が、商品が売れることで「承認欲求が満たされる」

少額・高額取引利用者を問わず、どのようなことで自身の承認欲求が満たされるかを聞いたところ、「お給料が上がること」に83.6%、「家族に褒められること」に76.1%、「フリマアプリで出品した商品が売れること」に70.3%、「誕生日を祝ってもらうこと」に60.3%、「SNS投稿にコメントが入ること」に55.7%が承認欲求を満たされると回答。出品した商品が売れることで得られる承認欲求の充足は、SNS投稿にコメントが入ることに比べて、14.6%高いことがわかりました。

フリマアプリ利用で暮らしが変わる?

少額・高額取引利用者を問わず、フリマアプリ利用後の意識・行動変化を聞いたところ、TOP3は、1位「身の回りの売れるモノを探すようになった(53.3%)」、2位「売ることが楽しくなった(48.0%)」、3位「売ることを意識して購入し大切に扱うようになった(34.8%)」であることがわかりました。

売れることによる承認欲求の充足で、つい「ハマる」

マーケティングライター、世代・トレンド評論家の牛窪恵氏は、今回の調査から新たな消費者心理「メルカリハイ」の実態が見えたとして、次のようなコメントを寄せています。

いまや日本のフリマアプリ利用者は、延べ3,000万人以上にのぼる時代(2019年 ニールセンデジタル調べ)。人気の理由を「不要品をお金に換えられるから」と解釈する人もいますが、今回の調査では、同利用者の約4人に1人が、いわゆる「少額取引利用者」であることがわかりました。それだけ、単なるお金儲けとは違う「別の価値」を実感している人が多い証拠でしょう。
また、少額取引を行う男女の6割以上が、フリマアプリの利用によって「モノを捨てる罪悪感」から解放されたと回答。彼らは、高額取引利用者より「捨てることがもったいない」との意識も約2割高く、元来「サステナビリティ」や「SDGs(持続可能な開発目標)」などの志向を持った、環境意識が高い消費者なのかもしれません。

出品した商品が売れることで、利用者の7割以上が「承認欲求が満たされる」と感じることもわかりました。しかもその充足感は、SNSでコメントされるときより高い。私たちが消費者に取材しても、一部の男女の間では「メルカリハイ」と呼ぶべき心理状況が発生しています。これは、メルカリに出品した商品が売れると、「誰かに価値を認めてもらえた!」と嬉しくなり、つい普段から「他にも何か売れるモノはないか」と探してしまうこと。

今回の調査でも、5割以上の男女が、フリマアプリの利用後に「身の回りで売れるモノを探すようになった」と答えており、自己承認を得られたことでハイになり、いつの間にかモノをやり取りする喜びにハマっていく様子が見てとれます。

たとえ少額の利益しか得られなくても、出品した時点で「捨てる罪悪感」から解放される。さらにそれが誰かに売れることで、高度な「承認欲求」が満たされる。そしてそれが一種の快感「メルカリハイ」へと繋がり、つい身の回りの売れそうなモノを探すようになる…。フリマアプリは、環境への配慮だけでなく現代人のストレス緩和にも貢献する、重要なサービスに成長したと言えるでしょう。

※1:出典「平成30年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」(経済産業省)
※2:「3回に1回以上の頻度」で100円以下の利益でフリマアプリに出品する利用者515名
※3:本調査では、「100円以下の利益で商品を出品するフリマアプリ利用者」を「少額取引利用者」、「最低1,000円以上の利益を見込んで商品を出品するフリマアプリ利用者」を「高額取引利用者」と記載します。

source:PR TIMES

image by:II.studio / Shutterstock.com

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