米国小売業界最大の年次イベント「NRFビッグショー」が今年も年明け早々に開催。この会合を前に『メルマガ「ニューヨークの遊び方」』の著者で、マーケティングのプロでもあるりばてぃさんは、主催者の全米小売業協会が発表した「2020年の小売業界予測」から、セールスに繋がる3つのキーワードを抽出。それらの要素をどうブランドに取り入れるかが重要になると解説します。
2020年の米国小売トレンド
前回のメルマガでもお伝えしたようにお正月のないアメリカでは新年早々に様々なイベントが開催。今週末にはニューヨークでも北米最大の小売業界向けカンファレンスが開催される。800を超える出店ブース、400人超の登壇者、そして4万人もの来場者がある大規模なイベントなので、今年の小売業界の方向性を考える上でも非常に重要だ。
このカンファレンスを主催するのは全米小売業協会(通称NRF)。カンファレンスを控え、2020年の小売業界について専門家の意見をまとめた予測を発表しているのでみておこう。
なお、意見を寄せた専門家は、調査会社のベイン・キャピタル(Bain Capital)、消費者調査専門のトレンドウォッチング(Trend Watching)、小売関連カンファレンスのコード・コマース(Code Commerce)、そして、ニューヨーク大学のMBA教授のスコット・ギャロウェイ(Scott Galloway)である。
トレンドは主に10個のカテゴリーが挙げられているが、大枠としては、今年も引き続き「体験・体感」、「ストーリーテリング」が共通する重要要素として挙げられている。
例えば、セールスに繋がる良いイメージの単語として「wellness」「health」そして「CBD」の3単語を挙げており、この3ワードが企業や商品のブランドの根幹と深く繋がることで消費者への訴求力になるとのこと。
もう少し詳しくみていくと、wellnessもhealthも日本語に訳すとどちらも健康という意味だが、wellnessのほうは、「健康的な生活をおくること」で、healthは「健康であること」という意味になる。
CBDは、このメルマガでも伝えているように、近年アメリカで注目の覚醒作用のない(マリファナのような症状はない)成分のこと。カンナビジオール(Cannabidiol)の略称で、大麻の従姉妹的な植物であるヘンプ(Hemp)から抽出される。ちなみにオレンジの皮などからもも抽出されており、オレンジ由来のCBD商品もある。
どんな製品がトレンドになるのか?
CBDと聞くと、『マリファナ』を想像する人たちが多いが、麻薬取締法で逮捕されるマリファナに多く含まれる『テトラヒドロカンナビオール』(略してTHC)という物質が微量ということで、アメリカではマリファナ解禁云々とは関係なく店舗で販売が可能となっている。
ただし微量とは言っても体内に取り込んだ場合の影響が測れないため、ニューヨークでは食物にCBDを入れた商品の販売は規制対象になっている。
今後も規制次第で販売環境は変わるかもしれないが、CBDはリラックス効果や痛みを緩和する効果があるとして腰痛のクリームや美容商品などに入って売られており、ここ1年ほどの注目商品。wellnessとhealthにも通じるものなので消費者の興味関心を惹きつけるとして今年のトレンドに挙げられたのである。
ただし、NRFの発表によると、人気や話題があるからという理由で、表面だけ取り繕って取り入れても消費者は、その薄っぺらさに敏感に反応するとも指摘。
小売や各種ブランドは健康とウェルネスについて真剣に考え、また、ブランドの精神と調和している必要があると改めて指摘している。そして、前述したように、「体験・体感」、「ストーリーテリング」と結びつくことで効果があるとしているのだ。
なお、ソフトな部分は以上のとおりだが、ハード面としては、物流などサプライチェーンへの投資は早めにするほうが良いとも指摘している。
具体案までは書かれていないが、今年は、5Gの普及とセンサーの販売価格が安くなっている背景から、ロボットの導入が進むと見られており、特に物流センターや店舗でのロボット活用が注目されているので、そのあたりのことを差していると思われる。
ロボットについては今年の注目ポイントの1つになると思われるので、NRFの小売イベントでもチェックしたいと思う。ご報告レポートをお楽しみに!
ご参考:
● 2020 retail industry trend predictions
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