アメリカとイランの軍事的な衝突がひとまず沈静化の流れを見せるなか、今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』の著者でマンション管理士の廣田信子さんは、とある一冊の本を紹介しています。そこには、トランプ大統領が今回のイラン・アメリカ危機の中で発した言葉は「すべて戦争に向かわせるための手法」であったことがわかる項目が書かれていたというのです。一体、どのような言葉だったのでしょうか。
「戦争プロパガンダ10の法則」を忘れない
こんにちは!廣田信子です。
TBSのサンデーモーニング(1月12日放送)、「風をよむ」のコーナーで、ベルギーの歴史学者、アンヌ・モレリの書『戦争プロパガンダ10の法則』が紹介されました。年末から続く「第三次世界大戦」という言葉がネット上を駆け巡ったほどのアメリカとイランの危うい状況。イラン軍の誤射によるウクライナ民間機撃墜という緊張状態がもたらした悲劇。最近の報道を見るにつけ、心に重くのしかかるものの正体が『戦争プロパガンダ10の法則』の内容を知り、わかった気がしました。
『戦争プロパガンダ10の法則』では、20世紀以降の戦争には、為政者が行う共通の手法があるとして、そのメカニズムを示し、為政者が国民を戦争に駆り立てる手法に取り込まれないよう、警鐘を鳴らしているのです。
「戦争プロパガンダ10の法則」
- われわれは戦争をしたくない
- 敵側が一方的に戦争を望んだ
- 敵の指導者は悪魔のような人間だ
- われわれは偉大な使命のために戦う
- 敵はわざと残忍な行為に及んでいる
- 敵は卑劣な兵器や戦略を用いている
- 受けた被害は小さく、敵に与えた被害は甚大
- 芸術家や知識人も正義の戦いを支持
- 我々の大義は神聖なものである
- この正義に疑問を投げかける者は裏切り者である
本当に、その通りだと思いました。今回も、イラン攻撃後、トランプ大統領が発した言葉は、「われわれは戦争を止めるために行動したのであって、戦争を始めるために行動を起こしたのではない」。これは、まさに、為政者が戦争を始めるときに常に語られるロジックです。
「イランはテロ支援者であり、その核兵器開発は文明世界を脅かしている。われわれには決してそれを実現させない」と繰り返される正当化の論理は、「4.われわれは偉大な使命のために戦う」「9.我々の大義は神聖なものである」の法則に通じるものに見えます。
イランからのミサイル攻撃の被害を、イラン側は、「少なくても米兵80人が死亡」と伝え、アメリカ側は、「人的被害はなかった」と言っています。これは、イラン側の国内向けプロパガンダではないかと言われ、「7.受けた被害は小さく、敵に与えた被害は甚大」そのものに思えます。このように、為政者は様々な手練手管を使って世論を操作しようとするのです。
そういった例は、歴史上も数多く見られると言います。第一次世界大戦前、戦争に賛同する世論を形成するために使われた逸話があります。「手を切断された少女の祈り」という逸話で、そこには、「神様、私にはもう祈る手がありません。意地悪なドイツ兵に斬られたのです。」…と。まさに、「5.敵はわざと残忍な行為に及んでいる」と思わせる手法をつかったのです。真偽が定かではない出所不明のこの逸話が、周辺諸国の国民のドイツに対する敵意を煽る効果をもたらし、第一次世界大戦へ突き進んだのです。
そして、このエピソードと同じ手法が70年以上たって又使われたのです。イラクのクウェート侵攻の証言として、クウェートの少女がアメリカ合衆国議会で語った言葉です。
「イラク兵は、保育器を持ち去ってたくさんの赤ちゃんを冷たい床の上に放置して死なせました」
この証言で世論は大きく変わりました。クウェートに侵攻したイラクに対して開戦すべきかどうかという世論調査に対して、「すべき」と答えた割合は、11月には37%だったのに、この少女の議会証言で一気に上がり、12月には53%にもなり、開戦へと大きく舵を切ったのでした。しかし、後に、この議会証言は全くの虚偽であったことが判明したのです。イラクには「大量破壊兵器」があると言われ、開戦の大義とされましたが、これもついに発見されませんでした。
こういったことは、他人事どころか、太平洋戦争当時の日本でも行われていました。大義が掲げられ、戦況は味方の勝利のみが大々的に報じられました。戦争に対して、少しでも疑問を唱えると、非国民として弾圧されました。日本では、敵は「鬼畜米英」といい、恐ろしい野蛮なものとして敵愾心を煽り、アメリカでは、日本人のことを「ジャップ」と呼び、野蛮凶悪な国民であるかのようにアピールし、お互い、国民が戦争を支持するように、世論を操作したのです。
アメリカ・イラン危機は一旦、納まったと言われていますが、いつまた政治の都合によって、引き起こされるかもしれないのです。また、どんなプロパガンダが行われるか分からないのです。そういった現状を端的に表す本書の次の言葉を絶対に忘れないようにしよう…と思いました。
戦争が終わる度に、われわれは自分が騙されていたことに気づく。
そして、もう二度と騙されないぞと心に誓う。
だが、われわれは性懲りもなく、また罠にはまってしまうのだ。
敵愾心や恐怖を煽るような報道、相手の国民性を否定的に伝えるような報道、相手こそが非常識で、自分たちは正しいという論調、は、要注意なのです。それに、無意識に影響を受けてしまっている自分と、そういうプロパガンダの中に自分もいるという違和感が重い気持ちの正体だったんだ…と気づきました。
大きな悲しみや怒りの感情を呼び起こし揺さぶる言葉や映像こそ気を付けよう。「戦争」を正当化するようなプロパガンダには、絶対に騙されないぞ、罠にはかからないぞ、と強く思い続けなければ巻き込まれてしまいます。
幸いにも、インターネット社会は、冷静に検証する気になれば、一方的なプロパガンダに飲み込まれにくい社会です。あとは、自分の「感情」をいかに冷静にコントロールするか…です。改めて、自分の身近なことから、「感情」に飲み込まれず判断するということを心掛けたいと思いました。
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