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繰り返される米国警察の暴力。在米日本人が驚く年代別死因データ

5月25日、ミネソタ州ミネアポリスで黒人男性が警察の過剰な暴力により死亡させられるという事件が起こりました。メルマガ『しんコロメールマガジン「しゃべるねこを飼う男」』の著者で米国在住の医学博士・しんコロさんが、この事件を受けてデモが拡大し、平和的なデモに対しても警察が催涙ガスを使用しているなどの実態を伝えています。しんコロさんは、ある年代で「警察による暴力」が死因の6位にランキングされているという驚きのデータも紹介し、人種差別的な警察の暴力が繰り返されるアメリカの問題を明らかにしています。

アメリカのカオス

今、アメリカ全土でデモと暴動が起きています。明るいニュースではないのでここで書こうかちょっと悩みましたが、僕も気になることなので話題にしたいと思いました。

日本のニュースでは「国際ニュース」として取り上げられている程度ですが、アメリカではここ1週間ほどトップニュースになっています。騒ぎはどんどんエスカレートして全米140都市にまで広がり、40都市で外出禁止令まで出ています。

みなさんもニュースを見たからご存知かと思いますが、ミネソタ州のミネアポリスという街で、ジョージ・フロイドという黒人男性がデレク・ショーヴァンという警察官に窒息死させられた事件が発端でした。

ジョージは、コンビニで偽札を使ったという疑いをかけられました。車から引きずり出され、後ろ手に手錠をかけられました。通行人や監視カメラによれば、ジョージは警察に抵抗をする様子がなかったのにも関わらず、地面に押さえつけられました。警官デレクは地面に横たわっているジョージの首を膝で9分ほど押さえつけました。ジョージは「息ができない、助けてお願い」と懇願しましたが、デレクはジョージが意識がなくなって無反応になった後も数分に渡って首を膝で押さえつけました。

この衝撃的な映像がネット上で広がり、人種差別と警察の暴力に反対するデモが始まったのでした。その後、デモは暴動と略奪に発展しました。平和的デモを行う集団もいる一方で、どさくさにまぎれて店舗を破壊して商品を盗む集団が現れました。ボストンにニューベリー通りというブティック通りがあるのですが、この週末暴動を起こした集団にいくつもの店舗が破壊されて略奪されました。コロナウイルスによって4000万人もの失業者が出ているアメリカは、今やストレスの頂点にあります。そのストレスが爆発して、こうした暴動にまで発展してしまった可能性も十分にあります。

一方の警察も容赦せず、武装した警官が相手が女性でも突き飛ばして病院送りにしたり、子供に催涙ガスを吹き付けたり、抵抗していないデモ参加者のマスクを剥がして催涙ガスを吹きかけたり、道端にいた杖をついたおじいちゃんを突き飛ばしたり、5~6人で1人のデモ参加者を袋叩きにしたり、警察の行き過ぎた暴力の映像が次から次へとネット上に流れています。アメリカ全土が大混乱です。

死因に関するショッキングなデータ

暴動を起こしている集団も、暴力を振るう警察も、どちらも社会から許されるべきではないし、どちらの肩を持つ気も全くありません。その立場を明確にした上で、僕自身もアメリカの警察の暴力には辟易しており、平和的デモを起こす人たちの気持ちは良くわかります。

渡米してから20年、アメリカの警察が殺人をするニュースを頻繁に目にします。特に黒人の若者がよく殺されます。PNAS(米国科学アカデミー紀要)に昨年発表された研究によれば、アメリカの25~29歳の死因に関してショッキングなデータを載せています。警察による暴力は、なんと死因の6位です。
Risk of being killed by police use of force in the United States by age, race–ethnicity, and sex | PNAS

「25~29歳の死因ランキング」 1位:交通事故
2位:自殺
3位:他殺
4位:心臓病
5位:がん
6位:警察による暴力

2009年の元旦にもサンフランシスコ地下鉄構内でオスカー・グラント(22歳の黒人男性)が警官に押さえつけられて射殺された事件があり、当時すごくショックを受けたのを今も覚えています。オスカーは構内でケンカをしていると通報されたのが発端でした。1人の警官がオスカーの首に膝を当てて押さえつけ、もうひとりの警官が拳銃で押さえつけられたオスカーを射殺しました。

日本とアメリカでは警察官の権限にかなりの差があります。日本では警察がその場で致命傷を与えるような銃撃を被疑者に与えることはまずありませんが、アメリカでは普通にそういった事件が起きます。確かに銃社会なので、警察側も「やられる前にやる」なのかもしれませんが、その与えられた権力を濫用する警官があまりに多いので社会問題になっています。特に黒人の若者はターゲットにされやすく、人種差別を生んでいます。

今回のジョージ・フロイドの件に立ち戻ると、ジョージが偽札を使ったのかどうかはまだ疑いの段階でした。そして仮に偽札だったとしても、本人はそれを分かって使っていたのかどうかも未知の段階です。もし仮に悪意があって偽札を使ってコンビニで買い物をしたとしたら、犯罪には違いなく許されることではありませんが、死刑になるような話ではありません。

しかし、この警官1人の判断で、ジョージの命がものの数分で絶たれたことは、法治国家にあってはならないことです。一方のジョージは武器を持ってデレクの命を脅かしたわけではないのですから。ジョージは元々スポーツマンで、ヒップホップのDJや警備員の仕事をしていたそうです。6歳と22歳と2人の娘の父親で、現在コロナの影響で失職中だったそうです。知人たちの話では、寛容な男性だったそうです。

皆さんはどう思いますか?警察はやりすぎだと思いますか?それとも犯罪の疑いをかけられたんだから仕方ないと思いますか?

image by: Robert V Schwemmer / Shutterstock.com

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ねこブロガー/ダンスインストラクター/起業家/医学博士。免疫学の博士号(Ph.D.)をワシントン大学にて取得。言葉をしゃべる超有名ねこ「しおちゃん」の飼い主の『しんコロメールマガジン「しゃべるねこを飼う男」』ではブログには書かないしおちゃんのエピソードやペットの健康を守るための最新情報を配信。

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