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限りなくゼロに近い公約達成。それでも小池知事が圧勝した裏事情

過去最多となる22人が出馬するものの、結果は大方の予想通り小池百合子氏の圧勝に終わった2020年東京都知事選。公約をほとんど達成できなかった小池氏が、歴代2位となる366万票を獲得できた要因はどこにあるのでしょうか。メルマガ『きっこのメルマガ』を発行する人気ブロガーのきっこさんが、その「裏事情」を考察しています。

小池百合子圧勝の裏事情

7月5日(日)投開票の東京都知事選は、午後8時になった瞬間に現職の小池百合子に当確が出るという、大方の予想通りの残念な結果に終わりました。投票率は55.00%で2016年の前回より4.73ポイント下落、これも大方の予想通リでした。

投票率が上がると、現職側、与党側に不利に働くため、小池百合子は新型コロナを理由に街頭演説や公開討論は一切行なわず、できるだけ都知事選を盛り上げないように徹しました。その上で、連日のように新型コロナの会見をして、テレビで自分の顔を売り続けるという姑息な作戦が、そのまま結果に繋がりました。

今回の都知事選には過去最多の22人が立候補しましたが、得票数が総投票数の10%に届かずに供託金300万円を没収されてしまったのは5位以下の18人でした。めでたく供託金が返還された上位4人の得票数は、以下です。

小池百合子 366万1,371票
宇都宮健児 84万4,151票
山本太郎  65万7,277票
小野泰輔  61万2,530票

この得票数だけを見ると、小池百合子の圧勝です。何しろ2位と3位と4位の得票を足しても150万票以上も負けているのですから。さらに言えば、小池百合子以外の21人の候補者の得票をすべて足しても、小池百合子1人にまったく歯が立たなかったのです。ここで、小池百合子が初当選した前回2016年の供託金を没収されなかった上位3人の得票数を見てみましょう。

小池百合子 291万2,628票
増田寛也  179万3,453票
鳥越俊太郎 134万6103票

単純に小池百合子の得票数だけを見ると、今回は75万票も上積みしています。この4年間で、公約を1つも達成できなかったばかりか、築地の移転問題でも東京五輪でも新型コロナ対策でも、常に八方美人的な対応で都民を煙に巻いて来たのですから、得票率が下がることはあっても上がることなど考えられない。普通はそう思います。しかし、小池百合子は成果がゼロなのに、安倍晋三首相と同様の「やってる感」というイメージだけで、75万票も上積みしたのです。

そのカラクリは、自公政権の動きです。前回は、自民党、公明党、日本のこころを大切にする党が増田寛也を推薦したたため、自民党支持者や創価学会員だけでなく日本維新の会の支持者も増田寛也に投票し、179万票も得票して2位になりました。しかし、自民党は今回、小池百合子に勝てそうな候補者を擁立できなかったため、表向きは「自由投票」と言いながらも、水面下では二階俊博の部下の小池百合子への投票を組織的に呼び掛けたのです。

ですから、本来であれば、前回増田寛也が得票した179万票がそのまま小池百合子に上積みされていたかもしれないのです。そうなると470万票、2012年の猪瀬直樹の433万8,936票を超える歴代1位の記録でした。しかし、実際の結果は366万票、100万票以上も少なかったのです。これは、前回増田寛也に投票した有権者のうちの相当数が、小池百合子を嫌って日本維新の会が推薦した小野泰輔に投票したり、差別思想を持つ人が5位の桜井誠に投票したのだと思います。

一方、リベラル左派勢はと言えば、前回は鳥越俊太郎1本にまとめる力が働き、宇都宮健児は立憲民主と共産によって出馬を断念させられました。そのため、取りあえずはリベラル票がまとまり、鳥越俊太郎は134万票を得票することができました。しかし今回は、先に出馬を表明していた宇都宮健児のところに、あとから山本太郎が出馬を表明したため、宇都宮健児は譲りませんでした。

結果、前回鳥越俊太郎が得票した134万票は、宇都宮健児と山本太郎が2人で分け合う形となり、どちらも100万票にも届かずに、小池百合子のひとり勝ちをさらに印象づけることとなってしまったのです。たとえ負けたとしても、リベラル左派勢が統一候補を擁立し、2位で150万票を得票していたら、次への大きなステップになりえたはずですから、本当に残念です。

独自候補を擁立できなかった自民党も情けないですが、与党は何もしなくても野党が勝手に分裂して自滅してくれるという、今の国政とまったく同じ政治力学が、今回の都知事選でも働いてしまいました。大方の予想通りの結果なので、結果自体には特に驚きはありませんでしたが、あたしが唯一驚いたのは「投票率の低さ」でした。

東京都の有権者数は約1,147万人ですから、投票率1%は約11.5万人に当たります。今回の投票率は55%、前回より4.73%の下落なので、投票に行かなかった有権者が前回より約54万人も増え、合計で約516万人が投票しなかっことになります。

東京の現状に不安や不満を抱えている都民が多ければ、天気に関係なく投票率は上がるはずです。しかし、こんな状況下なのに、有権者の2人に1人は投票しなかったのです。つまり、都民の2人に1人は東京の現状に何の不安も感じず、何の不満も持っていないということになります。これは、あたしには到底理解できない「驚くべき事実」でした。

投票率の低さについて、「新型コロナ禍だったから」とか「投票日が雨だったから」などというのは後づけの理由です。今は便利な期日前投票があるのですから、それでも投票に行かないということは、結局は「政治に無関心」ということなのです。2人に1人は「自分の暮らしている都道府県の首長が誰でも別に構わない」「自分の納めている税金がどのように使われても構わない」という人たちなのです。

あたしは、小池百合子を再選させた366万人よりも、投票に行かなかった516万人を本当に残念に思いました。仮に「投票したい候補者がいない」と言うのであれば、投票所に行って白票を投じるべきだったからです。無記入の白票は当然「無効投票」になりますが、投票率にはカウントされるのです。

今回、366万票を集めて当選した小池百合子の得票率は59.70%、このままでは都民の約6割が小池百合子を支持していることになります。しかし、投票に行かなかった516万人が、もしも白票を投じていたら、投票率は100%になり、小池百合子の得票率は約32%、都民の3分の1にしか支持されていないことになっていたのです。同じ当選、同じ得票数でも、この得票率の違いはとても大きいのです。

白票は、当選者だけでなく、自分の支持していないすべての候補者の得票率を下げることに繋がります。もしも「投票したい候補者がいない」と言うのであれば、その思いを白票という形で主張するのが有権者の責任であり義務である。あたしはそう思っています。(『きっこのメルマガ』2020年7月8日号より一部抜粋)

image by: 小池百合子 - Home | Facebook

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