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日本は「ガラガラポン」できるか?経済と外交を改善するラストチャンス

昭和世代の人が使う言葉に「ガラガラポン」というものがあります。かくいう自分も昭和世代ですが、福引きの抽選器の音にたとえて「現在あるシステムを壊して仕切り直す」「白紙に戻す」という意味で使われる言葉です。その「ガラガラポン」をガラガラと回しているのが今の世界だと語るのは、メルマガ『j-fashion journal』著者でファッションビジネルコンサルタントの坂口昌章さん。コロナ禍をきっかけとして、世の中が大きく転換しようとしているガラガラ状態の今、私たちが今後も生き抜くために何をすべきでしょうか。そして日本がこれから出すべき「ポン」とは?

ガラガラポン、ニッポン

1. 今はガラガラ状態

いま、世界はガラガラポンのガラガラ状態です。いつポンが来るかは分かりません。これまでの秩序、ルール、戦略、マニュアル等は使い物にならなくなります。

コロナ禍では、最初に飲食店が影響を受けました。自粛になって、店を閉めました。自粛が明けても、顧客は戻りません。

そこで新たなテイクアウトやデリバリーを行い、以前とは異なる顧客を獲得した店もあります。何もしなかった店もあります。

何もしなかったと言っても、コロナ対策はしているはずです。席数を減らしたり、営業時間を繰り上げれば、その分採算は悪くなります。顧客も完全には戻っていません。採算分岐点に届かなければ、全く別のことを始めるか、店を閉めるしかありません。

ガラガラの状態は、雪崩に巻き込まれたスキーヤーのような感じです。雪崩の中で無我夢中で手足を動かしていると、身体が浮き上がり、表面に浮上することがあるそうです。動かさなければ、雪の下に埋まってしまいます。

何をしていいのか分からなくても、無我夢中で動いていれば、何か見えるかもしれません。上手く行けば、危機を脱しているかもしれません。

ガラガラ状態ではなく、静かな海のような状態で危機に陥ったら、静かに浮いている方が良いでしょう。体力を温存していれば、潮が運んでくれます。誰かが助けに来てくれるかもしれませんし、岸に流れ着くかもしれません。

でも、今はガラガラ状態です。ジタバタしましょう。

2. ジタバタすることが大切

混乱した状態でも、その原因を分析することは有効です。

コップの中の嵐の原因は、コップの外側にあります。コップの外から自分を眺めて見ることが重要です。

まず、コロナ禍ですが、これは自分だけではどうにもなりません。できることは、手洗いとマスクくらいです。あとは、なるべく人混みに出歩かないこと。そして、ストレスを溜めないこと。

あとは、専門家に任せるだけです。もし、自分が飲食店を経営していたら、ジタバタすることになります。まず、補助金の申請をすること。そして、黒字に転換できそうもない店は閉めること。

その上で、テイクアウトとデリバリーを始める。テイクアウトとデリバリーに相応しいメニューとパッケージの開発も急がなければなりません。

これらの課題をスタッフと一緒に考えます。全く飲食に関係ないことでも挑戦してみます。

インバウンド減少で困っている食品メーカーや農家等とのコミュニケーションを取ります。そして、クラウドファンディングのプロジェクトを立ち上げてみます。

ここでも、コップの中だけでなく、コップの外を見ることが重要です。

自社を取り巻くサプライチェーン(商品が消費者に届くまでの原料調達から製造、物流、 販売といった一連の流れ)全体を考える。顧客心理の変化を想像する。社会の中で同じ問題に直面している人と連携する。

そこから何か見えてくるかもしれません。

3. 金融問題と中国問題

今、困っていることには原因があります。とりあえずの対象療法も必要ですが、原因を解決しないと問題は繰り返し発生します。

例えは、景気が悪いのはデフレが原因です。デフレの原因は、市場で流通する通貨量が少ないことです。

富裕層も中間層も貧困層も生活必需品への支出はそれほど変わりません。しかし、富裕層は投資にお金を使います。通貨が株式投資に回れば、株価は上がりますが、デフレはそのままです。

富裕層にお金が回れば、やがて貧困層にもお金が回るという説は誤りでした。貧困層にお金を回すなら、消費税を上げるより、累進課税や貯蓄から税を取る方が良いのです。

デフレの原因は金融政策だけではありません。国内生産から中国生産への転換が商品の価格を下げ、市場を収縮させました。

コロナ禍で中国がマスクを輸出禁止にした時、私も中国生産について考えました。中国生産は日本企業が利益を上げるために行ったはずなのに、日本国内のメーカーが大量に淘汰されました。流通小売業も市場の収縮により、売上も利益も下がりました。結局、儲けたのは商社だけであり、その商社も中国の人件費が上がって採算が悪化しています。

反面、中国人は豊かになり、日本に観光に来て、神戸牛などの高級食材を食べ、ブランド商品を買い漁っています。日本人は中国人にサービスする存在になってしまいました。

結果的に中国は豊かになり、日本は貧しくなりました。その原因はグローバリズムであり、中国生産だったというわけです。トランプ大統領が中国とのデカップリングを発表した時、最初は「そんなことは不可能だ」と思いました。しかし、もし可能ならば、日本にとって大きなチャンスになると思うようになりました。

日本が貧しくなった原因は、間違った金融政策と中国生産への依存です。そして、そこから生れたコスパ優先の価値観です。

中国問題と金融問題を語らない政治家は、コップの中で仕事をしているだけです。

4. ポンができる経営者

ビジネスもガラガラ状態です。しかし、それほどジタバタしているように見えません。

たとえば、コロナの自粛中、あるいは自粛後に百貨店やアパレルは何か新しいことを始めたでしょうか。

現在行っているのは、不採算ブランドを整理し、不採算店を閉めているだけです。アパレルが退店した後、どんな商品で売り場を埋めるのでしょうか。

私は現在の百貨店の取引条件では、新たな取引先を見つけるのは難しいと思います。

百貨店の取引形態は、派遣店員と委託仕入れです。販売員は取引先が用意し、売れ残った商品は返品されます。年間売り場を維持することはとても大変です。

催事のような短期的な仮設売り場であれば、出展したいという人はいると思います。しかし、その企画を立て、出展者を集めることはできるのでしょうか。百貨店は何でも丸投げです。催事も催事業者に丸投げします。何もしないで、場所だけ貸して、かなりの利益を取ります。

百貨店の取引形態が問題であることは、30年以上前から分かっていたことです。インターネット通販に押されていることも10年以上前から分かっていたでしょう。それでも、何も新しいことに取り組まなかったのです。

そして、コロナ禍で一気に勝負がついたのです。多分、このまま何もしないで、淘汰されていくと思います。時間の問題です。

ガラガラポンということは、ガラガラしている中で、多くの企業やビジネスが淘汰されるということです。

ビジネスだけでなく、生活圏も変化します。テレワークが一般化した結果、本社も都心から地方へと移転が進みます。都心のオフィスは縮小します。そうなると、住居の立地も変わります。地方で家庭菜園ができるような庭がある住宅が望まれます。

人口は集中から分散へと転換します。そうなると、公共交通機関も変わります。物流も変わります。商業施設も変わります。

もちろん、欲しい商品も売れる商品も変わります。

時間の使い方も変わります。生活スタイルが変わります。ファッションも変わります。

その変化を予測して準備するのが、ポンができる経営者です。

編集後記「締めの都々逸」

「何でもかんでも ガラガラ揺すり ポンとまとめて 何が出る」

昔「日本はガラガラポンしないとダメだ」と言っていた政治家がいました。今、ガラガラポンになりました。さて、どうすればいいのでしょうか。

自分が思う通りに都合よくガラガラポンは起きないのですね。誰もどうなるか分からない。でも、元には戻らない。そんな状況です。

でも、とてつもないチャンスでもあります。なにかが見えそうな気もしてきました。今後も考え続けたいと思います。(坂口昌章)

image by : katorisi / CC BY

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