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【書評】東大医学部の「健康診断」受診率が低いのにはワケがある

企業でも学校でも年に一度の定期的な健康診断が行われています。しかし、なぜ、健康診断を受けなければいけないのか深く考えたことはあるでしょうか?私達は知らない間にコントロールされている可能性があるかもしれません。無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』編集長の柴田忠男さんが紹介する一冊には捻じ曲げられた解釈を信じ込ませられるからくりが書かれています。

偏屈BOOK案内:池田清彦『自粛バカ リスクゼロ症候群に罹った日本人への処方箋』

自粛バカ リスクゼロ症候群に罹った日本人への処方箋

池田清彦 著/宝島社

「健康診断は受けてはいけない」「健康診断は利権だ」と主張する生物学者。わたしもそんな気がしていたので読んでみた。

養老孟司が言うことには、東大で健康診断の受診率がダントツに低いのは医学部だ。医者は健康診断に意味がないのを知っているから行かないそうだ。笑える話。

全国の企業や学校では年に一度、定期健康診断が行われている。会社には健康診断を実施する義務があり、従業員には受診する義務がある。労働安全衛生法の定めである。違反すると50万円の罰金が科せられるという。

著者は健康診断をもう長いあいだ受けていない。早稲田大学に14年間、国際教養学部の教授として勤務したが、一度も受けなかった。大学側は受けるようにと言ってくるが、彼はあくまで「受けたくない」「クビにしろ」と抵抗した。

大の酒好きで、もう何十年間も毎日毎日飲み続けている。この本を書くときに計算したら、1万2,150日連続の飲酒記録を更新中だった。なのに健康診断は断固スルーしている。

何も症状がないのに毎年胃カメラを飲んだり大腸に内視鏡を入れたりすれば、かえって具合が悪くなる。検診の類いは本当に体の調子が悪くなってからすれば、それで十分だと思っている。そりゃそうだ。

今年1月、かかりつけ内科医院に月一回の検診に行ったら、いつもは30秒で済む話なのに、いきなり濃厚な電子的健診に回されて5,000円を要した。

「市の健康診断イベントに行けば無料なのに」と妻に叱られたが、医師が強引にやるんだもんね。2月の検診はわずか10秒で終わる。もはや服の上から電子機器をかざすだけである。小さな町医者なのに、いつの間にか電子化されていた。

企業に健康診断を義務付けている先進国は日本だけである。無意味なのに続けている理由は金儲けである。完全な医療利権なのだ。健康診断はタダではなく、健康保険や税金などからその資金が出ている。それによって金儲けをする人たちがいる。

「そもそも、誰も健康診断を受けなければ医者に行く人は大幅に減り、年々膨れあがっていく日本の莫大な医療費が抑制されるはずだ。それなのに、どうして政府は義務の健康診断を廃止しないのか。

それは病気の自覚のない人まで健康診断で病人に仕立て上げ、それによって医療資本を儲けさせようとしているからだ」と著者は説く。

今の医療は健康診断、検査漬け、薬漬けという流れで金を吸い上げるシステムになっている。病気や病人をつくりだしているのだ。やはり健康というのは、資本主義が人を騙すための大きなお題目になっている。我々は健康を持ち出されると、意外と簡単にコントロールされてしまうのだ。

フィンランド保険局が、医者に管理されたグループと、なんにもしないグループの15年間の追跡調査をしたら、本人任せのほうが死者数が少なかったそうだ。フィンランド症候群と呼ばれている現象である。なにもしないほうがいいんだ。いい話だ。

「人為的地球温暖化」とやらが、根拠に乏しいは話であることはかなり前から明らかになっているが、地球の温暖化が進んでいると信じて疑わない人が驚くほど多い。

2019年に台風15号と19号が立て続けに東日本を襲い、2020年7月に熊本県南部を中心に記録的豪雨が襲った。こうした被害が出るのは、人為的地球温暖化のせいだと主張する人が多かった。

著者が「人為的地球温暖化は疑った方がいいよ」と言ったら、ツイッターで罵詈雑言を浴びせてくる人がいてウンザリさせられた。朝日新聞やNHKなどマスコミも、地球温暖化という新興宗教の信者のようだと思ったという。

熊本豪雨についても、地元の西日本新聞が「地球温暖化が進み、これまでの常識が通用しなくなりつつある」と報じ、国土交通省のホームページの「地球温暖化と大雨、台風の関係」というコラムで「日本における大雨の発生数が長期的に増加傾向にあるのは、地球温暖化が影響している可能性があり……」と根拠なき危機を煽っていた。

1970年代までは地球の寒冷化を心配する見方のほうが一般的だった。1988年にNASAの気象変動分析チームのジェームズ・ハンセンらが地球温暖化論を唱えると、世界中で急激に温暖化脅威論が広がった。

2001年にはクリントン政権の副大統領だったアル・ゴアが「不都合な真実」という書籍で温暖化の危機を煽った。2015年のCOP21(国際気候変動枠組条約国会議)で、京都議定書の後継となるパリ協定を採択、これが現在の地球温暖化防止の国際ルールになっている。

温暖化はまるで一般常識であるかのように定着していった。温暖化のせいで「太平洋の島嶼国ツバルが沈む」とか「ホッキョクグマが絶滅する」とか「夏には北極海に氷が全部溶ける」とかいったバカ話が広まった。温暖化の決定的証拠とされた「ホッケー・スティックス」というグラフは捏造だった。

人為的地球温暖化論を推進する連中にとっては、もう温暖化が本当だろうとウソだろうとどうでもいいんだよ。「環境」のような聞こえのいい話は、国民を欺すための大義名分としてうってつけだから、このネタを正義の御旗に巨大資本が儲かればいい。もはや人為的地球温暖化は、科学ではなく政治的なアイテムになっているわけだ。

……そうだったのかあ。

またもや、養老孟司の発言を引用。あるとき東大の大きな会議で、総長が「この文言はどうやって解釈すればいいんですか」と法学部の委員に聞いた。すると、その人は「総長がどのように解釈するのがいいか言ってくだされば、いかようにも解釈いたします」と答えたという。

「上が黒と言ったらそれに合うよう解釈を行い、上が白と言ったらその通りの作文をでっち上げる。霞が関の官僚がやっていることはまさにこれだよ」……そんなことだろうとは思っていたよ。

編集長 柴田忠男

image by: Shutterstock.com

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