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いじめ探偵がパワハラ教員を告発。東京高専の生徒を自殺に追い込んだ悪魔の所業

若き才能が集い切磋琢磨する東京高専で昨年10月に発生した、一人の学生の自死事件。なぜ彼は死を選ばなければならなかったのでしょうか。今回のメルマガ『伝説の探偵』では著者で現役探偵の阿部泰尚(あべ・ひろたか)さんが、そのきっかけとなった2つの要因と、学生を死に追いやった東京高専の教職員のパワハラ行為を誌上報告。さらに今回の調査の中で明らかになった国立高専生の高い自殺率を挙げるとともに、設置者に対して早急な対策を求めています。

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東京高専、学生会会長自死事件

2020年10月5日、午前1時から午前2時。

これが、野村陽向君の死亡推定時刻であった。

仲の良い家族で、野村陽向(のむら・ひなた)君は真面目で勤勉であった。家族の写真は笑顔であふれていた。

なぜ彼は死ななければならなかったのか。

ご遺族ご提供

本件は、ご遺族の意向により実名でお伝えします。写真について、ご遺族からご提供いただいたものを確認の上、使用します。

ご遺族は教職員による児童生徒への暴力やハラスメント、いじめ問題が二度と起きないことを願っています。

学生会の使途不明金問題

2020年当時、陽向君は東京工業高等専門学校の3年生だった。

高専1年生で学生会の会長選挙に立候補し、2年生から学生会の会長を務め人望があった。2回目の会長選挙を経て、学生会の会長に再任されたのが2020年のこと。

陽向君が会長に就任する以前の4年間にわたり、学生会で多額の使途不明金が見つかったのだ。

また、この使途不明金については監査されておらず、結果前任の責任者に話を聞く必要があった。学生会に直接関係する学生主事(教員)に対応を求めるが、前任者が応じないという理由で、この使途不明金は放置されていたが、後任であった陽向君が、この使途不明金は欠損金として取り扱うことを決め、2020年5月の学生総会で謝罪をすることになったのだ。

学生会会長として、難しい問題が山積みであり、険しいものだったのだといえる。

コロナ禍の文化祭開催についての対立

続いて起きたのは、令和3年の現在も日本、いや世界全体を苦しめている「新型コロナウイルス」の感染拡大だった。当然、高専ともあれば学園祭など、人が集まるイベントがある。

陽向君は文化祭の開催において、感染拡大に対して有効な手立てが講じられないとして、中止を提案していた。しかし、文化祭実行委員会と対立することになってしまったのだ。ただ、文化祭実行委員会も気持ちだけでイベントを開催することはできないことはわかっていた。

問題であったのは、文化祭を強引にも進めたいと考えていた学生主事補(教職員)の1人との対立であった。

教師によるハラスメント問題

2020年6月、陽向君はこの学生主事補からハラスメント行為を受けたとして学校長宛に「ハラスメント申入書」を作成し、学生主事(教職員、事実上の副校長)に面談の予約を取っている。

陽向君は学生主事補から、「学生会の暴走だ」「ただでは済まない」「信用が落ちる」など文化祭開催の是非を巡って対立関係が生じ、何の解消案も出されないまま、圧力をかけられていた のである。

しかも、高専生とは、事実上の高校生が、学校長宛に「ハラスメント被害についての報告と申し入れ」をするなどは異例であり、さらに言えば、学生会の会長が行うということだから、「異例中の異例」である事態が起きていたのである。

しかし、この訴えは学生主事補が陽向君に謝罪をする形となって、取り下げられることになった。

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ハラスメント訴えに対する報復

その後、2020年9月以降、陽向君は学生会で承認を得て購入した物品についての監査を激しく受ける羽目になったのだ。もともと、監査はこれまではなく、引き継いだ経理関係のものは杜撰極まりなかったはずだ。関係者に話を聞くと、監査の背景にはパワハラで問題となった学生主事補が指示しているということだったという。

監査を務めた上級生は昼夜問わずの質問や指示メールなどを送っていたことがわかっている。

一方、学生会はこの監査について、全体に責任が及ぶと問題の学生主事補から言われており、学生会に所属する下級生にもその責任が及ぶと言われていたことから、会長である陽向君に会長職を降りるように打診をしていたのである。

さらに、学生会室に入室した者も監査対象などになって履歴書に記載されることになると脅されていたのである。

つまり、コロナ禍の文化祭という問題から生徒や保護者の安全を守ろうとした会長が、強硬開催を求める教員と対立し、そのパワーバランスで学生である会長はハラスメントの被害者となった。これを問題として提起しようとしたところ、不発に終わらせられて、それ以降報復を受けることになったのである。

事実、監査のメッセージは陽向君が命を絶った30分前にも来ており、命を絶ち、連絡が当然取れなくなった5日の朝、「無事ならいいんだけど…」という文言があるメッセージが届いている。つまりは、ずいぶん追い詰め、追い込んだということではないだろうか。

陽向君の死後、ご遺族は問題の学生主事補の教員らと話をしている。

その中で陽向君が一人で会計作業を抱え込みつつ、学生生活の他、学生会活動などを忙しく過ごす中で、教職員らは陽向君が音をあげるのを待っていたという発言を聞いている。

致命的な失敗をさせて、学生会長という座を不名誉に終わるように仕向けていたのであった。

現在の状況

現在、学校の設置者である高専機構は、第三者委員会を設置することをご遺族に約束し、委員の選任についての話し合いなどを行っているが難航している。一方で不可解なのは、高専機構が第三者委員会を設置するのではなく、問題のあった東京高専に第三者委員会を設置する方向で調整が進んでいるということだ。

一般企業で言えば、パワハラを起こした会社が自身のパワハラ問題に対して第三者委員会を設置するようなもので、この段で中立公平性の担保は崩壊していると言えるだろう。

また、陽向君が行ったハラスメントに関する申し入れは、文化祭中止を求めるための交渉の一環で行われたものだという無根拠な噂が流されたり、ご遺族が一方的に揉めているのだといううわさが保護者間に流されているという。

また、本件を調べる中で、陽向君の自死の前にも自死事件が起きていることがわかっている。

一体、何が起きているのであろうか。

3月16日国会の文教科学委員会のやり取りで大まかな確認をすることができた。

令和2年度の国立高専生の自殺者数は13人であり、自殺率で言えば、高校、大学と比較して2倍となっている。

そして、この高確率の背景は、厳しい進級基準、高専の先生方、教員の生徒指導に対する経験などの不足など高専独自の要因であると分析されていると記録されている。

高専はロボコン事業などそれなりの実績をあげている教育制度を持っていることは確かだ。しかしその一方で、生徒の安全配慮には杜撰な面がすでに国会で指摘されるほどの状態になっている。

陽向君に何があったのか早急な調査を中立公平な第三者で調べることは当然のことだが、全国の高専生が安全に学生生活を過ごせるように早急な対策が必要であろう。

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編集後記

本件のご相談は2020年の11月から受けております。そこから、資料の整備や交渉についての話をしてあれよあれよという間に半年以上経ってしまいました。ご遺族は様々な苦悩を持っています。

ご遺族ご提供

本件のような教員のパワハラ問題が絡み、学生からハラスメントの申し入れがあった痕跡がくっきり残っているような複雑な問題では、第三者委員会の調査が極めて重要です。なぜなら、この調査によって今後の対処が必要になるからです。そのためには、管理監督機関が本件問題をしっかりと自ら把握する必要があるからです。

外からの調査はきっかけを作ることはありますが、日本のある種の行政機関やそれに準ずるような機関は、自らの調査などでの確認を何よりも優先して判断基準とします。

今回は第1弾とさせていただきます。その実、情報量が多く、追加の情報や証拠も多く得ています。できれば、第2弾は第三者委員会のしっかり構築されてからの事実検証ができればと思います。

学生にとっての時間は限られています。期限があると考え、高専機構にはより積極的な問題への関与と指導が望ましいと思います。ご遺族をこれ以上苦しめてはなりません。

1人の親として、親にとって子供の成長は嬉しくもあり、だんだん離れていくようなちょっぴり悲しい気持ちなど、色々な気持ちがありますが、やはり、我が子の成長は何よりもかけがいのない宝です。今回、私は、色々な写真をご遺族からご提供いただきましたが、陽向君の幼い時の写真がいくつかありました。大きくなっていっても親にとって、子どもが幼いときの様子は目に焼き付いているのだと思います。

そんな我が子がいつの間にか苦しめられ、自らの命を絶ってしまったというのはあまりに悲しい現実です。ご遺族ご提供の写真を見てください。こんな嬉しそうにしている子が、かえらぬ姿になっていたら、もしもこれが貴方であったらどう思うでしょう。少し想像してみてもらいたいのです。けして他人事ではありません。

もう笑う顔は見られません、泣く姿も見られません、もっと成長して成人し、一緒にお酒を飲むこともできません。テレビを観ながらツッコミをいれたり、食卓を囲むことも、できません。

もしも、あなたが親であったらどうですか?親友であったらどう思いますか?1分でいいので、想像してみてほしいのです。

機会があれば、何を感じたか私にぜひ教えてください。

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image by: 伝説の探偵

阿部泰尚この著者の記事一覧

社会問題を探偵調査を活用して実態解明し、解決する活動を毎月報告。社会問題についての基本的知識やあまり公開されていないデータも公開する。2015まぐまぐ大賞受賞「ギリギリ探偵白書」を発行するT.I.U.総合探偵社代表の阿部泰尚が、いじめ、虐待、非行、違法ビジネス、詐欺、パワハラなどの隠蔽を暴き、実態をレポートする。また、実際に行った解決法やここだけの話をコッソリ公開。
まぐまぐよりメルマガ(有料)を発行するにあたり、その1部を本誌でレポートする社会貢献活動に利用する社会貢献型メルマガ。

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