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小林礼奈「蒙古タンメン中本」騒動に違和感。お客様は“神様”ではない

「一般人」を自称するタレントの小林礼奈(こばやし・あやな)さんが6月5日、自身の公式ブログに投稿した、人気ラーメン店「蒙古タンメン中本」で起きた他の客や店員とのトラブルをめぐって、ネット上で賛否両論が飛び交う炎上状態が続いています。今回の「中本炎上騒動」の原因はどこにあったのでしょうか? 「謝罪のプロ」として知られ、さらに「危機管理のプロ」としてコンプライアンス研修の講師も務める増沢隆太さんは、今回の炎上騒動を小林さんのブログと「中本」白根誠社長の「経緯説明とお詫び」を比較・検証して分析。まぐまぐのコンテンツプラットフォーム「mine」内で、白根社長の対応を擁護するとともに「お客様は神様ではない」と断言する理由を示しています。

小林礼奈・蒙古タンメン騒動の危機管理コミュニケーション評価

タレントなのか一般人なのか、自身の立ち位置不明な小林礼奈さんが、有名ラーメン店で子連れ飲食時に他の客と軽いトラブルになり、店からも遅すぎる食事をたしなめられたことが燃え上がりました。危機管理上、特に店側の対応はどう評価すべきでしょうか。

● 酷い話だよ(小林礼奈のブーブーブログ 2021年6月5日エントリー)

炎上商法というビジネスモデル

よく気軽に「炎上商法」などといわれますが、この炎上が「商法」であるメカニズムを理解しているでしょうか?一般的に芸能人やスポーツ選手など、いわゆる有名人はブログやインスタグラムなどのメディアを持っています。これらのメディアにビュー、つまり閲覧が増えるに従って、広告収入が入ります。

ユーチューブがその代表ですが、10人とか100人しか見ないコンテンツに価値はありません。しかし1万人10万人100万人または回とビューが増えたらどうでしょう。テレビを見る人が昭和と比べて激減した今、100万人にリーチできる広告にはとんでもない価値があります。それがユーチューバーで一発当てれば大金持ちの仕組みです。

かつてのテレビも「俗悪番組」という評価がありましたが、コンテンツのクオリティとビュー数や視聴率は関係ありません。ある意味やったモン勝ちです。極端にいえば、著名人が亡くなった時に、その名前を借りたタイトルでコンテンツを挙げると、勝手に検索されビューが増えるという事象が起こります。このような非道であくらつな手法でもビューが上がれば報酬を得られてしまう可能性があるのが、炎上商法をさせる原因といえます。

「嫌いな芸能人のブログやインスタを見に行ったり、悪口コメントをしに行く」なんてのは、まんまとその嫌いな芸能人にお金を献上しに行っているようなものなのでした。

「勝った」のは誰?

詳しく存じませんが、小林礼奈さんとは、あまり売れなかったグラビアアイドル、ものまねタレントを経て漫才コンビ「流れ星☆」の瀧上(TAKIUE)さんと結婚。その後、離婚して現在はシングルマザーということ。ご本人はご自分のことを「一般人」と称していますが、ブログは継続し、たびたび不用意な発言でプチ炎上を繰り返して話題になっています。

その小林さんは、今回の事件でこれまでのプチ炎上と違い、格段の注目を集めました。ネットニュースを超えてスポーツ紙や週刊誌からも注目され、地上波ワイドショーも取り上げ、ついにはTBSサンデージャポン出演にまで至りました。

すごいです。

これはやはり今回の騒動最大の勝利者といえるのかも知れません。日常的なただのネット上プチ炎上が、地上波キー局出演にまで至るという成果は、小林さんがタレントならば大成果といわざるを得ません。

蒙古タンメン中本社長の対応は?

もう一方の店側、蒙古タンメン中本社長の白根氏は、公式HPで経緯説明とお詫びを発表しました。接客業飲食業として、お客さんである小林さんへの対応に、店として問題があったということです。

YAHOOニュース等で騒がれているブログの件での、お詫びと状況説明

しかしビジネス誌コラムでは、言い訳をして店内カメラの様子まで分析した社長の態度は、お客様である小林さんの非をあげつらうことになり、飲食店としてだめだという批判もありました。

私は謝罪のプロではなく(←そう書いてるくせに!!)本当は危機管理のプロであり、飲食店やサービス業、それも大企業ではないところで現実の対応をさんざんしてきました。「お客様は神様」という間違った幻想を持つ経営者や現実を知らない人たちと、実際に店を運営する人は立場が全く違います。

1人3万円以上のコースを提供するフランス料理店ならどうか知りませんが、短い滞在時間でいかにお客を回転させるかが勝負のラーメン店はフランス料理ではありません。もっといえば店の求める客層ではない、「お子様連れで家族や知人とゆっくり食事」したい人はラーメン屋の客ではないと考えます。

お客様は神様ではない

「サービス業だから、飲食だからすべてのお客様に徹底して尽くす」ことは、ブラック労働につながる恐ろしい考え方で、私は全否定したいと思います。

ではサービス無視して良いのか、そうではありません。

私が常に提唱するのは「お客様は神様ではない。お客様はお客様」ということです。

単価に見合うサービスを提供するのが店の役割であって、「800円~1000円程度の単価の商売では、800円~1000円程度の接客サービスを提供する義務がある」ということです。絶対に1人3万円コースのサービスを提供することはできないし、してはならない、従業員にさせてはならないのです。

社長が店を擁護するような、結局お客である小林さんの非をあげつらうような指摘をしたことは正しいのです。社長は社員を守る義務があります。ある意味、その場限りのお客以上に、日々働いてくれるスタッフを擁護することは、組織管理上、人事管理上、経営管理上、私は正しいと断言します。

それで客離れしたら?

それはそのサービス・商品が価格に合わなかっただけです。

繰り返しますが単価800円のラーメンで3万円のフルコースのサービスをしてはならないのです。もしそのような無理をすれば、そのツケは従業員に強いられるか、経営者が経営を継続できなくなります。

このようなお話を私は、特にサービス業や飲食・接客業界でよくさせていただいています。

特に厳しい現場である飲食や介護の関係者の皆さんに、こうした「料金に見合うサービス提供が『正しい』」ことを力説しますと、講演後握手を求めていただいたり(現在はオンラインなので無いですが)中には涙を流して感謝をしていただいた、こちらが恐縮してしまうような経験があります。

過酷なサービス現場で働く皆さん。お客は神様などでは絶対にありません。お客はお客です。そのことを全面的に訴え続けて行きたいと思います。

image by: 小林礼奈のブーブーブログ

増沢隆太

増沢隆太

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「謝罪のプロ」として著名人記者会見のたびにテレビ、ラジオ、新聞でコメントしまくるコミュニケーションのプロ。ロンドン大学大学院では戦争研究を行い、帰国後外資系企業数社でブランドマーケティングを担当した。その後、人事コンサル会社勤務を最後に独立し、人事・経営コンサルタントとして活躍。現在は講演、企業研修、大学生向け講座などで全国を回るほか、東京工業大学の特任教授も務めた。

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