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韓国の国民はウンザリ。金正恩に利用される文在寅「北のご機嫌伺い」

先日掲載の「正恩の妹また激怒。韓国脱北者団体が飛ばしたビラを恐れる北朝鮮」でもお伝えしたとおり、韓国の脱北者団体が北朝鮮に向けてビラを撒いた昨年6月、韓国との通信連絡線を遮断したものの、先月27日になり突如復元させた金正恩政権。突然の方針転換の裏には、どのような事情が存在するのでしょうか。今回のメルマガ『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』では北朝鮮研究の第一人者である宮塚利雄さんが、金政権が態度を変えざるを得なかった苦しい国内の状況を解説しています。

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北朝鮮が韓国との突然の関係改善へ動いた理由と大歓迎の文在寅

先月27日午前10時、韓国と北朝鮮を結ぶ通信網が約1年ぶりに復旧した。この日は朝鮮戦争(1950~1953年)で休戦協定から締結されてから、ちょうど68年を迎えた日である。この7月27日は北朝鮮では「祖国解放戦争勝利記念日」(戦勝節)として、公休日としている。また、この日を記念して発売された「7.27」銘柄の高級たばこもある。

さて、約1年ぶりに通信網が復元した事の発端は何だったのか。北朝鮮が昨年6月、韓国にいる脱北者団体が北朝鮮の金王朝体制を批判するビラなどを大量に括(くく)り付けて、北朝鮮に向けて飛ばす大型風船に猛反発し、板門店チャンネルをはじめとするすべての通信連絡線を一方的に切った。それが13か月と18日ぶりに復元したのである。韓国政府によると、復元したのは南北軍事境界線上にある板門店など2か所の直通電話と、韓国・北朝鮮両軍の電話とファックス。

今回の復元は文在寅大統領と金正恩総書記の疎通の結果と言われている。韓国の大統領府側は「文大統領と金総書記が今年4月から何度も親書を交わしており、1日も早く南北間の相互信頼を回復して関係を再び進展させていくことで意を共にした」と明らかにしたが、韓国は北朝鮮による通信線遮断だけでなく、その直後に南北共同連絡事務所を爆破したことに対し、北朝鮮側から謝罪や原状回復についての言及がないままでの今回の合意である。韓国は北朝鮮側の恫喝同然のビラ配布禁止や関係者の厳罰要求に屈し、要求されるまま国会で対北ビラ禁止の法律まで成立させてしまった。

7月27日という日に対話再開や融和ムードを効果的にアピールしようとしたようだが、韓国内には対話や融和が始まっても、また「北の御機嫌伺」の上に成り立つ見せかけに終わるのではないかとの疑問が投げかけられている。一方の北朝鮮にとって国連制裁と新型コロナウイルスによる国境閉鎖に伴う経済難が深刻になり、各地で餓死者が急増していると伝えられる現状の下で、外部の支援が火急のことになってきたからである。

このほど韓国銀行が発表した北朝鮮の昨年度の国内総生産(GDP)伸び率は、ここ20年余りで最悪のマイナス4.5%までに落ち込んだ。「経済回復」を国民に宣言した金正恩総書記にとって、文在寅大統領との会談の最大の関心事は、対北制裁の緩和を米国側に求めている文大統領に、バイデン米政権の譲歩にどこまでつながるかということにある。

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同じ7月27日に平壌で開かれた「全国老兵大会」で、金正恩総書記は「新型コロナウイルス危機と経済制裁の長期化で『戦争状況に劣らない試練』を迎えている。逆境にも勝利するように」と国民に訴えた。昨年の同大会で金正恩総書記は「核抑止力により、国の安全と未来は永遠に担保される」と演説したが、今年は「核戦略への言及」はせず、「我が革命武力はいかなる情勢や脅威にも対処する万端の準備を整えている」と述べるにとどまり、「米帝国主義」といった戦争当時の描写を除いて米韓を非難する文言もなかった。米韓への刺激を抑え、対北政策を見直して北朝鮮に対話を呼び掛けているバイデン米政権の出方を見定める意図もあった。

再度言うが、南北・米朝対話再開の条件として敵対視政策の撤回を掲げていた北朝鮮が、突然態度を変えた理由は明白だ。先にも述べたように「国連制裁と新型コロナによる国境封鎖に伴う経済難と食糧難が深刻になり、外部の支援が火急のことになった」からで、金正恩政権が打ち出した「自力更生」が限界に達したことを意味している。

今回の合意が文在寅大統領の業績作りのための任期末“平和ショー”に転落することだけは避けなければならない。(宮塚コリア研究所代表 宮塚利雄)

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image by: Alexander Khitrov / Shutterstock.com

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