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高市早苗に騙されるな。ピント外れの自民総裁選報道「4つの問題点」

これまでに3名が出馬を宣言し、各々が17日の告示日を前にさまざまなメディアで独自の政策を訴えるなど、俄然熱を帯びてきた自民党総裁選。しかしその報じ方に関して疑問を呈する声も上がっています。今回のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では著者で米国在住作家の冷泉彰彦さんが、「どの報道もピントが外れていて本質からズレている」と一刀両断した上で、気になる4つの問題点を提示。さらにそれぞれについての詳細な解説を記しています。

※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2021年9月14日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

 

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嘘と歪曲ばかりの政局論争、本質を外すな

自民党総裁選に関しては、様々な報道が飛び交っています。ですが、どうもどの報道も、ピントが外れていて本質からズレているように思うのです。とりあえず、気になることを箇条書きでメモしておきたいと思います。

1.「敵基地攻撃論は北朝鮮問題だけ」

高市氏が言い始めて、岸田氏まで同調する中で、すわ戦争か改憲かという感じで左派世論は怯えたり怒ったりしており、一方で右派世論は(何を勘違いしたのか)これで安心できるなどと思っているようですが、勘違いも甚だしいものがあります。本件は、北朝鮮のミサイルをどうやって無力化するかという話であり、それ以上でも以下でもありません。この問題を超える話としての「敵基地攻撃」は3人とも言及していないはずです。

2.「高市氏の全方位戦略に乗せられるな」

高市氏はTVに出演して「右翼にみられている」のは心外だなどと言っていましたが、騙されてはいけません。といっても「本当は右翼」だという意味ではありません。彼女が右派的な言動をしているのは、保守票が欲しいからであり、それは選挙区(奈良2区)を勝ち抜くため、また今回は総裁選で存在感を見せるためにやっているだけです。

ですから、「右翼に見られているのは心外」というのは一面の真実ではあると思います。ですが、TVでそうした文句を言ったというのは「右翼以外の票も欲しい」という意味であり、それ以上でも以下でもないわけです。つまり、アメリカで左派議員のインターンをして、帰国後は出羽守モード全開という出発点から、有権者との間で妥協を繰り返した結果、政策や思想のベースを失い、当選するためには何でもやるというスタンスに変節した、これが問題なのです。

理由は簡単です。総理になって「前例のない事態」に直面した際に、無思想、無原則の人物では対処できないからです。

高市氏は「アベノミクス」を継承して「サナエノミクス」をやるなどと言っていますが、これに対して「女性としての媚を感じる」などという批判がありますが、これも全くの的外れです。

何故ならば、「アベノミクス」と「サナエノミクス」は1番目(金融緩和)2番目(財政出動)は同じですが、3番目が異なるからです。安倍氏の場合は「第3の矢」は構造改革でした。結果的に何もできませんでしたが、とにかく旗印としては改革だったのです。ところが高市バージョンの3番目は、改革の旗を下ろしてしまっています。これは大問題で、そこを突かない論評というのにはあまり意味がないと思います。

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3.「共産党は暴力革命路線か?」

立憲との共闘を鮮明にしている共産党に対しては、「暴力革命路線を捨てていない」という批判があります。これはデマだと思います。その一方で「かつて暴力革命路線だった」というのは事実ですが、これは過去形であり、そこを叩いても好き嫌いの話にしかなりません。

問題は共産党には「党内民主主義」と「少数意見」がないという点です。そして「統制経済論を捨てていない」ということです。これは本当に大変な問題であり、そもそも自由陣営の中では全く他に例のない存在です。暴力革命路線がデマかどうかという話で時間を消費するのではなく、共産党は少数意見と自由経済を否定している存在だという、もっと本質的な問題に切り込まないのは全くナンセンスだと思います。

4.「実に奇妙なエネルギー政策」

河野氏は原籍が反原発なので、口先だけ再稼働だとか、高市氏は核融合という壮大な話ばかりだとか、その中で岸田氏だけが真剣に再稼働というような妙なイメージが広がっていますが、これも間違いです。

この点に関しては、菅総理を中心に、日本としてはアメリカとの原子力協定をしっかり合意しておきたいということで、自民党はまとまっていると考えられます。

核融合をやるというのは何も高市氏に言われなくても国策として決まっています。但し壮大な計画なので、日米共同ですし、実現するとしても相当に先の話です。また河野氏が「核サイクルは止める方向」というのも、そうしないと日米の原子力協定が成り立たなくなるので、既定路線だと思います。ちなみに、退任する菅総理がワシントン詣をするのはそのためだと思っています。

ですから、この点に関しては3名はいい意味で「共犯」であり、自民党としては、限定的な原発再稼働で「化石燃料を抑制しつつ、再生可能エネルギーが立ち上がるまでの時間を稼ぐ」という日本経済が「死亡」しないための唯一の策を、何とかして世論に理解してもうために必死なのだと思います。

ただ、3人に多少違うことを言わせつつ既成事実化するというのは、姑息であり、そうした不正直なことをやっていると世論に突き放される危険もあります。この点は非常に心配です。

(メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』より一部抜粋)

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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