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「逃げるは恥」なんてむしろ逆。Netflixに学ぶ失敗を許容する重要性

近年よく耳にするようになった、エマージェントストラテジーなる言葉。「戦略を持たない戦略」と言われますが、それではどうもピンとこないというのが実情ではないでしょうか。そんなエマージェントストラテジーを徹底解説してくださるのは、Google、マッキンゼー、リクルート、楽天の執行役員などを経て、現在はIT批評家として活躍されている尾原和啓さん。尾原さんはメルマガ『尾原のアフターデジタル時代のモチベーション革命』で今回、メディア界の新興勢力・Netflixの事例をもとに、エマージェントストラテジーの何たるかをレクチャーしています。

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変化の時代に大切なのは初志貫徹ではない?エマージェントストラテジーを解説

今日は、失敗を許容することの大事さについて解説します。

初志貫徹することよりも過ちに気づいたら、さっと謝って、次のスタイルにどんどん変えていくことが大事みたいな話を以前させていただいていたのですが、実はこれが、この5年ぐらい、ベンチャーとか新規事業をやるときに、非常にに大事な戦略、「エマージェントストラテジー」として立ち上がってる分野なので、この解説をしたいと思います。

エマージェントストラテジーとは

この「エマージェントストラテジー」を一言で説明すると何かというと、戦略を決めないことが戦略って言うものなんですね。エマージェントストラテジーをそのまま日本語訳にすると創発するする戦略とか、新しく現れてくる戦略みたいな意味なんですけど、何かって言うと、

今までの時代ってまるで問題集を解くように正解がわかって、その正解をひたすら実装するのが早くて、すごいところが勝つ。という、比較的正解がわかってた時代から、今っていうのはどちらかと言うと、昨日までの正解が、今日は正解じゃなくなるかもしれない。

そして新しいテクノロジーとか、新しい変化が起きることによって、新しい正解がどんどんどんどん現れてくるかもしれない。

そんな時代の中で、あらかじめこれが正解だからこっちに向かって進もうということが、危険で、いかに次に現れてくる正解を呼び込もうとするような形に戦略を決めずに、でも新しく生まれる正解というものを、呼び込むためにはどうすればいいか、ってことが大事になってくるんですね。

これ非常にわかりやすいのが、「Netflix」。もうディズニーに次ぐ、コンテンツの投資規模の大会社ですね。

この事例が、わかりやすいので、それを中心に説明をしていければです。

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Netflixから学ぶ変化の時代の事業の進め方

実はNetflixですね、覚えていないかもしれないですが、最初はDVDの郵送モデルで始まったんですね。日本でも、TSUTAYAさんとか、ぽすれんさんとかですね、いくつかの会社さんがやられてたんですけれども、DVDを店まで借りに行くのが、めんどくさい。

そういった方々に対して、DVDを郵送で貸してあげるので、専用の封筒で入れて返して。返したらまた次のDVDが借りれる。というモデルで始めたんですね。

ただ、Netflixのおもしろいところが、これが絶対の成功だ、って始めたわけじゃないんですよ。端的に言って、逃げて、DVDの郵送モデルを始めているんですね。

なぜなら、リアルな店舗が中心で、今の時代みたいにネットの回線も遅く、家でネットで映画が見れないという時代では、お店でDVDを借りるというのが、ビジネスの中心だったんですね。

そうすると、既に近所のいい場所に競合のレンタルビデオ屋さんがあると、なかなか新しいところは勝てないわけです。なので、Netflixはリアルの店舗からは逃げて、郵送モデルにしたんですね。

ただ、ここで彼らは気づくわけです。毎回DVDを借りるたびに課金をしていると、お客さんが借りてくれない。ということで、次に逃げたのが月額という場所なんですね。

月額にすることで、安定的な収入を得るようになった一方で、次に何に困ったか、というと、みんな人気のDVDを借りてしまって、すぐにDVDが借り切れになっちゃうんですよね。

そうすると、せっかく月額払っているのに、自分の観たいDVDを借りれないじゃないか。というクレームに見舞われるわけです。

ここからがおもしろくて、どうやって活路を見出したかというと、Netflixはじゃあ他に映画を観る楽しみがないかとユーザーに聞いたり、探し回ったわけです。

そうすると、非常におもしろいのが、月額で払うとなると、今までは本当に借りたいものしか借りない。っていうのから、月額払っているんだから、借りないと損。っていうふうになる人たちが、あらわれるんですね。

お気に入りの映画監督の映画を全て借りたりだとか、ある女優の作品をすべて観に行きたい。みたいな、非常にロングテールな細く長く全部観ていく。っていう、新しいDVDの借り方って“意味”を見つけるんですね。

あと、もうひとつは月額で借りっぱなしなので、一回観て楽しいよりも、ずっとBGVとして楽しいっていうような、新しい映画の使い方の“意味”をNetflixは発見したんですね。

じゃあ、全ての作品を見たくなるような映画監督って、どんな映画作品の映画監督なんだろうか。全ての作品をみたくなるような女優の映画作品ってどんな作品なんだろうか。

っていうのを研究するためにデータ分析っていうものにものすごい力をいれていくんですね。

その結果、まだAIが発達していない時代から、お客さんが好きそうな映画監督だとか、お客さんが好きそうな女優とか俳優をおススメするという機能をものすごく発達させることになりました。

こういうことをやっていると、来るわけです。

インターネットの常時接続と高速回線。

これによって、レンタルDVDの業界のゲームが圧倒的に変わっちゃうんですよね。

今まで、お店をかかえていたレンタルビデオ屋さんは、むしろお店をかかえるコストが重たくなってきますよね。

インターネットにつながっていれば、人気の作品は、いつでも見られるし、DVDと違ってどんなに人気の作品だろうが、サーバー上にあればみんなが見られる。

そうすると、人気の作品をたくさん抱えるという規模の経済がむしろコストになってきて、人気作品をいち早く誰でも観られますよ。というのが誰でもできる戦いになっちゃったんですよね。

そうすると今までのレンタルビデオ店はダメになっていくのに対して、Netflixっていうのはずっとみていたくなるような映画監督や俳優とかのデータをたくさん持っているし、ロングテールに幅広く持っていたので、どんどん会員数を伸ばしていくっていう風になるわけです。

こういう風におもしろいのは、時代の中心から外れた場所に新しい領土を求めていると、技術が革新することによって、そこが中心になるってことがあるんですね。

大事なのは、新しい技術の中心になったとわかったら、アクセルを踏むことです。なのでNetflixは時代の中心が来たとわかったから、あらゆる家電量販店やスーパーに自分たちの端末を非常に安く販売しました。

安売りをしても、後で月額で回収できるので、最初は安売りしてものちのち黒字になることがわかっていたので、大攻勢をかけてユーザー数をグィーンって伸ばすんですね。

こういう風に、

  1. 誤ったときはすぐに逃げる
  2. 逃げたときに感度が良さそうなところ、今まで積み上げたものとは関係なく、ゼロベースで探してみる
  3. そうしていると、時代が変わって、テクノロジーが変わって、自分のいる場所が中心になる
  4. 中心になったら全力でアクセルを踏む

この構成がエマージェントストラテジーで非常に大事なんです。

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Netflixのコンテンツ投資の強み

しかもこのエマージェントストラテジーは、Netflixで今も続いていて、冒頭でも言ったように、ディズニーに次ぐコンテンツの予算をかけて映画を作ってる制作会社でですね、他の制作会社とNetflixでは映画の作り方、大作の作り方が違うんですね。

それはなぜかというと、この俳優を使えば、絶対見てくれる人が何人いるか、この監督の映画を作れば何人観てくれるか。こういうプロットの作品を作れば、何万人観てくれるか。

っていうスティッキネス(粘着性)っていう言い方をするんですけども、愛してくれているファンが、どれだけいるかというデータを持っていますよね。

したがって、Netflixっていうのは大作の巨額投資をするにもかかわらず、実はうまく深く刺さる女優とか、監督とか、脚本のスタイルみたいなことを大作の投資をするんだけども、確実に儲かる。確実にユーザーに観てもらえるスタイルにできる。という世界最大のデータ分析に基づいて、巨額のコンテンツ投資ができる会社になったっていうことなんですね。

この根幹が、最初っからこんなことは戦略として考えていないってところが大事で、ただリアル店舗を持つレンタルビデオ屋さんに対して、逃げる戦略をとっていったら、月額制になり、ロングテールな一人の監督の作品を観たいという、ニーズを分析し、やがてAIと次の中心地を見つけたときに、アクセルをベタ踏みにしたというのが、Netflixなんですね。

まとめ

こういう風に初志貫徹とか、やり切る力っていうのはすごく大事なんですが、変化の時代というのは正解が何かはわからない。特に昨日までの正解が正解じゃなくなることも多くある。ということで、当意即妙に失敗を謝るということに対して、抵抗感なく失敗したところは丁寧に謝りながら、次の時代の中心地を探していった方がいいですよ。

それでは。

 

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image by: Elliott Cowand Jr / Shutterstock.com

尾原和啓この著者の記事一覧

IT批評家、藤原投資顧問 書生 1970年生まれ。京都大学大学院工学研究科応用システム専攻人工知能論講座修了。 マッキンゼー・アンド・カンパニーにてキャリアをスタート。 NTTドコモのiモード事業立ち上げ支援を経て、リクルート、ケイ・ラボラトリー(現:KLab取締役)、コーポレートディレクション、サイバード、電子金券開発、リクルート(2回目)、オプト、Google、楽天(執行役員)の事業企画、投資、新規事業立ち上げに従事。 経産省 対外通商政策委員、産業総合研究所人工知能センターアドバイザー等を歴任。 現職は14職目。シンガポール・バリ島をベースに人・事業を紡ぐカタリスト。ボランティアで「TEDカンファレンス」の日本オーディション、「Burning Japan」に従事するなど、西海岸文化事情にも詳しい。

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【著者】 尾原和啓 【月額】 ¥550/月(税込) 初月無料 【発行周期】 毎週 月・木曜日 発行予定

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