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安倍晋三氏の思う壺?Netflix版『新聞記者』の意外な“ガス抜き”効果

森友学園問題を題材に、国有地払い下げや公文書改ざんにまつわるエピソードがリアルに描写され話題となっているNetflixの配信ドラマ『新聞記者』。この作品について、独自の視点を披露するのは、メルマガ『NEWSを疑え!』を主宰する軍事アナリストの小川和久さんです。小川さんは、外資のNetflixが相手でも、安倍政権の問題をあぶり出す内容に対して、圧力をかけようとすれば可能だったはずと指摘。ドラマで好き勝手させて「ガス抜き」を図る、安倍氏サイドの高等戦術の存在を感じとっています。

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Netflixシリーズ『新聞記者』の見方

仕事の合間に、Netflixのシリーズ『新聞記者』(6話)を観ました。マスコミ出身者としても、また首相官邸の内側を多少は知っている身からみても、それなりによくできた作品だと思いました。

安倍晋三政権を震撼させた森友学園問題を下敷きに、東京新聞の望月衣塑子記者がモデルだと明らかにわかる女性記者を米倉涼子が演じ、国有地の値引き、首相夫人の関与、文書改ざんを命じられた財務局職員の自殺など、日本国民の誰もが知っている出来事がスリリングなドラマに仕立てられています。

東京オリンピック・パラリンピックの招致にあたり、安倍首相が国際オリンピック委員会(IOC)総会で福島第1原発の処理水の状況は「アンダーコントロール」と断言したことで成功したというセリフが出てきたり、コロナによってオリ・パラの1年延期が決まったことで事件への追及をかわすことができたと喜んだりするシーンを見れば、安倍政権のスキャンダル以外を想像する人はいないでしょう。

主要マスコミのトップへの首相官邸側のハニートラップを含む抱き込み工作もちゃんと描かれています。

地下室にパソコンがずらりと並ぶ何やら怪しげな内閣情報調査室の描き方や、新聞社の編集幹部を「デスク」と呼ぶところなど、まだまだ改善の余地は残っているものの、まずおおかたの国民が抱いた感想は、「よくここまで描いた」というものでしょう。

そこで最初に浮かんでくるのは、米国の世界的な制作会社であるNetflixだから実現できたという思いでしょう。日本の映画会社、テレビ局では、最初に政治への忖度が働きますから、企画そのものが成り立たないと思われるからです。Netflixには圧力をかけにくいという受け止め方ですね。

そう言えば望月記者の著書をベースにした藤井道人監督の前作『新聞記者』(シム・ウンギョン、松坂桃李主演)も制作はイオンエンターテインメントでした。同社は立憲民主党の岡田克也常任顧問(元外相)の実兄が社長、実父が名誉会長を務めるイオングループ。それだけでなく、映画で『東都新聞』として登場する東京新聞の高田昌也元政治部長(のちに中日新聞編集局長などを務める)は岡田家の三男です。

同じ安倍政権の政治スキャンダル加計学園問題を取り上げるにあたって、やはり圧力を受けにくかったという印象です。しかし、それと比べても今回のシリーズの小気味よいほどのキレは、Netflix制作だったからというところに落ち着きそうです。

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国民が政治を正していかなければならない、ジャーナリストや官僚の健全な在り方はどのようなものかが一つのテーマとなっており、勧善懲悪ドラマを見たときと同じようなカタルシスと同時に、民主主義の機能不全に異議を申し立てようとする藤井監督をはじめとする映画製作者側の強い意志も感じるでしょう。

しかし、疑問が残ります。この映画の制作に政治の側が圧力をかけようとすれば、いくらでも可能なやり方はあったと思われるからです。なぜ、やらなかったのか。そこには、安倍政権の政治スキャンダルを本当に葬ってしまうための高等戦術の存在を感じないではいられないのです。

このドラマを見て、日本もまだまだ棄てたもんじゃない、マスコミにも官僚にも良心は残っている、と国民に感じてもらえたら作品は成功です。それによってガス抜きが行われるほどに、安倍政権の政治スキャンダルは闇のかなたに消えていくのは間違いありません。

安倍政権の外交・安全保障の安定飛行に一定の評価を贈る一方、一連のスキャンダルを苦々しく思ってきた身として、ちょっと感想を述べてみました。(小川和久)

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image by:XanderSt/Shutterstock.com

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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