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プーチン方式を踏襲か?中国は「ウクライナ危機」のどさくさで尖閣を侵略する

ついにプーチン大統領がロシア軍の派兵を決定し、各国の外交的努力も虚しくますます混迷を極めることとなったウクライナ問題ですが、この国際的な危機に乗じて自国の「利益」を確実なものにしようとする動きもあるようです。今回のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では台湾出身の評論家・黄文雄さんが、ロシアのウクライナへの侵攻が中国の今後の動きに及ぼす影響を解説。習近平政権が「成果」を求め、台湾や尖閣を侵略する可能性を指摘しています。

※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2022年2月24日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄こう・ぶんゆう
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

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【中国】ウクライナ危機に乗じて中国は日本侵略を加速する

ジョンソン英首相「ウクライナ侵攻の影響は台湾や日本にも」 アジア各国にも結束呼びかけ

かねてから懸念されていたウクライナ情勢ですが、北京五輪が閉会するとプーチン大統領は、親ロシア派やロシア人の多いウクライナ東部2地域の独立を承認、ロシア議会も平和維持のためにこの2地域へのロシア軍派兵を承認しました。

こうした事態に対して、イギリスのジョンソン首相は、「ロシアがウクライナに侵攻すれば、その影響は台湾にも波及する」と述べました。この発言は、さまざまな意味があります。

ひとつには、欧米がウクライナに釘付けになっている間に、中国が台湾侵略に乗り出す危険性があるということ。そしてウクライナ情勢への欧米諸国の対応いかんによっては、中国がロシアと同じ侵略手法を使ってくるということです。

そんなおり、2月22日には北京に駐在する大使館員が、中国当局に一時拘束されるという事件が起こりました。これはウィーン条約の明確な違反であり、国家主権を一方的に侵害されたことに他なりません。外務省事務次官が駐日大使館に抗議し、謝罪と再発防止を求めましたが、中国からは「身分に合わない活動をしていたので、中国の関係部門が法に照らして調査と質問をした」と主張し、日本の抗議を受け入れないと反発しました。

中国「抗議受け入れない」と反発  日本大使館職員拘束

確実に、中国は日本を甘く見て、こうした対応にどこまで日本が抗議してくるのか、その本気度を測っているのです。欧米がウクライナに釘付けとなれば、東アジア地域の安全保障において日本の役割が重要になってきます。そのため、中国は日本に対して強気に出てきたと見るべきでしょう。

加えて、2月19日には、オーストラリア軍の哨戒機に中国軍艦艇がレーザー照射を行うという事件も起こりました。QUAD、そして日本の参加も取り沙汰されている諜報網ファイブアイズといった中国包囲網の関係国に対して、さまざまな挑発を行ってきているのです。

ジョンソン首相の懸念が早くも実現しつつあるといえます。

自国民や同胞を救うために軍を派遣するということは、つねに戦争の口実とされてきました。中国は現在もチベットへの侵略は「農奴解放」のための正しい侵略だったと強弁しています。

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今回のロシアのやり方が成功すれば、当然、中国も同じ手法で台湾を取ろうとしてくるはずです。つまり、台湾国内の親中派を焚き付けて世論分断を画策し、さらには親中派や中国人保護を理由として、台湾に兵を出すというやり方です。あるいは偽装した中国漁民を尖閣諸島に上陸させ、それを排除しようとする日本に対して、自国民保護を理由として尖閣を侵略する可能性もあります。中国と台湾双方の人的被害が大きい台湾侵攻よりも、むしろこちらのほうが先かもしれません。

そう考えれば、日本の大使館員の一時拘束は日本政府にとって看過できない問題であり、外務次官ではなく、首相が表に出て厳重に抗議すべき事案だとも思います。甘すぎる日本の対応は、中国をつけあがらせるだけであり、それは尖閣問題に直結します。

2月14日、G7各国は、ロシアがウクライナに侵攻した場合、直ちに経済・金融制裁を科すと発表しましたが、これに対して中国は反対を明言しました。これはもちろん予想されたことではありますが、中国はロシアの侵略行為を認めているわけです。

G7がロシアへの経済制裁を用意中国は反対を明言

とはいえ、ウクライナ東部2地区の独立について、中国がロシアの決定を支持するかどうかというと、問題はそれほど簡単ではありません。

2月22日、中国外交部の汪文斌報道官は定例記者会見で、ウクライナ東部2地域の独立について聞かれ、「ウクライナ問題には複雑な歴史経緯がある。中国政府のウクライナ問題への立場は従来どおりだ」「国連憲章に基づき、話し合いで平和的に紛争が解決するよう、各関係方面に呼びかけていく」と、曖昧な言い方でお茶を濁しました。

中国政府がウクライナ問題への対応に苦慮…ドネツク・ルガンスク独立が台湾問題へ及ぼす影響を懸念か

また、ニューヨーク・タイムズの記者が、「ロシアがウクライナを独立国家として認めないとしていることと、中国が台湾を中国の一部だと主張していることに類似点があるのでは」と質問したところ、「世界には一つの中国しかない。台湾は中国の一部だ」と答えたそうです。

これに対して、ブルームバーグの記者マシュー・ブルッカー氏はツイッターで、中国がウクライナ2地域の独立を承認すれば分裂主義を認めることになり、「親ロシア派の民族自決と独立は認めるのに、台湾の民族自決と独立を認めないのはなぜか?」ということに繋がりかねないため、「ウクライナ問題は中国にとって茨の道だ」と指摘しました。

このことは、中国時報でもブルッカー氏のツイッター画面を引用しながら、大きく報じられました。

心虛? 外媒提問烏克蘭、台灣做比較 中國戰狼尷尬跳針回應

このように考えると、ロシアのウクライナ侵攻は必ずしも中国の台湾問題にとってプラスだというわけでもありません。しかも、もしも台湾に侵攻して失敗すれば習近平政権は吹き飛びます。習近平は、北京冬季五輪・パラリンピックの「大成功」を強調し、秋の共産党大会での3選を確実にしようとしているため、いま台湾侵攻や尖閣奪取はリスクが高すぎます。

加えて、中国国内もまだ習近平の基盤は盤石ではありません。王毅外相は、かつて現体制への忠誠心を疑われ、近い関係者が公安当局に調べられたことがありました。政権内でも裏切りを常に警戒し、厳しく監視しています。

それでも習近平の暗殺未遂事件が繰り返し起こっているとされているのは、忠誠心を強制しているからで、これは皇帝制度の時代から続いている中国の宿命です。中国では万世一系は不可能なのです。

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とはいえ、5年後、2027年の中国共産党大会で4選を狙うとする場合、毛沢東とならぶ偉業を成し遂げたという成果を求めて、台湾や尖閣を侵略する可能性も否定できません。

繰り返しますが、中国にとって人的被害が甚大な台湾よりも、尖閣のほうが侵略は簡単です。そして今回のウクライナ問題でアメリカがどこまで本気でロシアと対峙するかということも、中国は見ています。アメリカがウクライナのために自国の軍隊を投入しないのであれば、無人島の尖閣のために血を流すことなどもありえません。

そのまえに、日本が尖閣のために戦わなければ、アメリカが主導して尖閣のために戦うこともありえません。日本にとってもウクライナ問題は非常に大きな問題なのです。これから5年間は、憲法改正をはじめとする国家安全保障が、日本にとってきわめて大きな課題になるでしょう。その対応が日本の未来を決定づけることになると思われます。

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