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習近平の大誤算。ウクライナ人「対中感情悪化」で自国民が危機の自業自得

明らかな国際法違反であるロシアのウクライナ侵攻に対し、プーチン氏に同調的な姿勢を取り続ける中国。しかしそのロシア寄りの態度は思わぬ誤算を生じさせていました。今回のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では台湾出身の評論家・黄文雄さんが、元は中国と友好国であったウクライナ国内で反中感情が急速に悪化し、現地在留中国人が危険にされされている現実を紹介。さらにここまでの事態となってもロシアを支える習近平政権の思惑を考察・解説した上で、日本に対して安全保障の見直しを提言しています。

※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2022年3月2日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄こう・ぶんゆう
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

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【中国】ウクライナで急速に悪化する対中感情、裏にある中国の誤算

ウクライナで対中感情悪化か 大使館が「身元示すな」と警告 国内では対露非難を封殺

ロシアのウクライナ侵略に対し、世界的な批判が日毎に高まっていますが、その矛先は中国にも向かいつつあります。

中国はロシアの行為を「侵略」とは認定せず、西側諸国の制裁措置にも反対を示しています。また、世界各地でロシアへの抗議活動が活発化するなか、中国の学者有志も戦争反対の声明をインターネット上で発表しましたが、「インターネットサービスの規定に違反の疑いあり」として、当局によって削除されました。

中国の学者有志が戦争反対の声明発表→まもなく削除され閲覧不能に

こうしたロシア寄りの態度がウクライナ人の反感を買い、敵対勢力と認識されつつあることから、2月27日、在ウクライナ中国大使館は現地の中国人に対して、みだりに身元を明かすことは控えるよう警告しました。

それまでは、ロシア軍からの攻撃を避けるために、自動車移動などのときには中国国旗のシールを目立つところに貼るように呼びかけていましたが、それを一転させたわけです。ロシア軍からの誤射よりウクライナ人からの攻撃のほうが危険度が高いということでしょう。

振り返れば、2月4日、北京冬季五輪の開会式に際し、プーチン大統領と習近平国家主席が会談しましたが、ロシアは中国に年間100億立方メートルの天然ガス供給を提示、中ロ両国は、エネルギー協力などを推進する協力文書に署名しました。

中ロ首脳会談、プーチン氏がガス供給拡大提示 年100億立方メートル

また、このときの共同声明では、「中ロ両国はNATOの拡大継続に反対し、NATOが冷戦時代のイデオロギーを放棄し、他国の主権、安全保障、利益などを尊重し、他国の平和的な発展を客観的・公正に見るよう求める」という文言が盛り込まれています。

中国、ウクライナ情勢で緊張を高める行動に反対、ロシアとはエネルギー協力などを推進

つまり、中国はロシアの主張に賛同しており、ウクライナ問題にしても、緊張を生み出しているのはアメリカ側だとしている点でも、積極的にロシアに同調しているのです。

今後、西側諸国の経済制裁が行われますが、中国がロシア経済を裏で支えることで、制裁の効果が薄まることが懸念されています。

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欧米では、プーチンは、中国の後ろ盾があるからと思ってウクライナ侵略を決断したのであり、もしそうした期待がなければ実行しなかっただろうという「中ロ一心同体」説も広まりつつあります。

『中国とロシアは一心同体』ウクライナ侵攻で米専門家指摘 「プーチンは中国のサポートがなければ…」

もっとも、中国にとってウクライナは友好国で、習近平主席は今年1月に両国の国交樹立30周年を祝うメッセージをゼレンスキー大統領に送っています。また、国際世論を敵に回すことになるので、ロシアと一心同体というイメージは避けたいところでしょう。

しかし、それでもロシアに同調し、ウクライナ人から敵視されるまでの事態になっているということは、台湾や尖閣の侵略に際して予想されるアメリカや日本、国際社会の反発に対し、ロシアを味方につけておきたいという思惑があるということだと思われます。それだけ、台湾や尖閣が危ういということの証左でもあります。

3月4日からは北京でパラリンピックが開催されます。オリンピック時同様、選手たちのスマートフォンから中国への情報漏洩が懸念されており、日本を含め、政府がスマートフォンを配布して警戒を呼びかける国も増えているという、異常な状況になっています。

北京五輪、パラリンピックのスローガンは「一起向未来(一緒に未来へ)」ですが、とてもそのような世界情勢ではありません。そしてその分断を後押ししているのが中国なのです。

北京冬季五輪では、中国の大会組織委員会は、外国選手が中国の人権問題を持ち出して中国を批判するようなことがあれば、中国の法律にもとづいて処罰すると恫喝しました。

【北京冬季五輪】 選手が人権問題で発言なら処罰も 組織委が警告

各国では選手たちに対して中国での政治的発言を控えるように警告していたため、帰国後になってようやく中国批判を行う選手たちの発言が大きな話題ともなりました。これも言論封殺する独裁国家の異常さが際立ちました。

「極めて無責任」北京五輪の金メダリスト、人権問題が指摘される中国での開催決めたIOCを批判

では、パラリンピックでロシアのウクライナ侵略への抗議や戦争反対を唱えた場合はどうなるのでしょうか。北京五輪開会式で流れた『イマジン』を歌うことは政治活動にあたるのでしょうか?そういえば、香港での反中デモでは、自由を求める市民のメモを貼り付ける「レノン・ウォール」が香港のみならず、世界中に広がりました。

香港全土に広がる抗議の波。 壁一面のポストイットに込められた市民の怒りと祈り

反ロシアの主張は、反中国へと向かう可能性があります。ウクライナ侵略もウイグル弾圧も重大な人権侵害であり、ロシアへの非難が中国への非難へと転化することは容易に想像がつきます。

とはいえ、これだけ世界中が注視している大問題に、選手たちが口をつぐむというのも不自然ですし、「一起向未来」というスローガンにも反します。中国としては、自分たちに火の粉が降りかからないよう、戦々恐々としていることでしょう。北京冬季五輪以上に、パラリンピックは独裁国家の異様さが明らかになるのではないかと思います。

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加えて、これまでの歴史で、中国とロシアは対立を繰り返してきました。中国としても、それほどロシアを信用しているわけではありません。北京冬季五輪の際にも、中国はロシアとの緊密な関係をアピールしていましたが、今回のロシアのウクライナ侵攻は把握しておらず、むしろ中国側は「ロシアのウクライナ侵攻はアメリカのデマだ」とも主張していました。

それが、蓋を開ければアメリカが予測した通りになったわけです。しかも、日本や欧米諸国はロシア侵攻前にウクライナにいる自国民に退避勧告を出していましたが、中国は「アメリカのデマ」だと主張していただけに退避勧告を出すことができず、侵攻から4日後にようやく留学生ら600人が陸路で退避するという後手ぶりでした。

ウクライナで中国人の集団出国開始 勧告出さず、後手の対応

中国とロシアは決して一枚岩ではなく、いつ関係が壊れてもおかしくないのです。

パラリンピックが終われば、世界は西側諸国と中ロという専制国家との分断が本格化することになると思われます。しかし、共通の敵がいるときは中ロは緊密ですが、お互いにあまり信用していないため、いつ亀裂が入るかわかりません。歴史は繰り返すといいますが、かつて冷戦時代の中ソ対立のようなことが起こる可能性もあります。

いずれにせよ、極めて不安定な世界が到来することは間違いありません。日本の安全保障を改めて見直す必要性が高まっているのです。

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