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“先制攻撃”発言に激怒。金正恩の妹が韓国に浴びせた罵詈雑言

度重なる北朝鮮のミサイル発射実験に対する韓国側の反応に、またも「あの要人」の口から罵詈雑言が飛び出したようです。今回の無料メルマガ『キムチパワー』では韓国在住歴30年を超える日本人著者が、ミサイル発射を巡り「先制攻撃」の可能性について言及した韓国国防長官の発言に、金正恩総書記の妹である与正氏が「兄の委任によって」警告を発したというニュースを紹介。さらに北朝鮮サイドが、尹錫悦新大統領を直接非難しなかった点についての専門家の分析も取り上げています。

金与正の久しぶりの悪口雑言

徐旭(ソ・ウク)国防部長官が4月1日、陸軍ミサイル戦略司令部改編式で「(北朝鮮の)ミサイル発射の兆候が明確な場合、発射地点と指揮・支援施設を精密打撃できる能力と態勢も備えている」と述べ、北のミサイルの脅威が確認された段階で先制攻撃をかける可能性があることを示唆する発言をした。

この発言を受けて金正恩北朝鮮国務委員長の妹である金与正(キム・ヨジョン)労働党中央委員会副部長が3日、徐旭国防部長官の「先制打撃」発言を直撃し、「南朝鮮が深刻な脅威に直面する可能性がある」と主張した。金与正副部長は特に「委任によって厳重に警告する」と言っているが、この「委任」という表現は、今回の脅威に金正恩の意志が込められていることを暗示するもの。金与正は続いて「南朝鮮に対する多くのことを再考する」とし、追加的な行動があることを予告した。

金与正はこの日、朝鮮中央通信を通して出した談話で「1日、南朝鮮国防部長官は我が国家に対する『先制打撃』妄言を吐き、反共和国対決狂気を露わにした」とし「核保有国を相手に先制打撃をむやみに云々し、彼らにも決して得にならない不毛な強がりを見せた」と非難した。昨年9月25日以降半年ぶりに対韓国非難談話を再開した金副部長は、徐長官に対して「狂った奴」「ゴミ」「対決狂」という荒々しい表現を使って猛非難した。

徐旭国防部長官が4月1日に語った、「発射地点と指揮・支援施設の打撃」というのは、保守政権時代に北朝鮮の核・ミサイルの脅威に対応して構築した「3軸体系」のうち「キルチェーン」と「大量報復」(KMPR)を指す。これまで北朝鮮を刺激することを恐れて言及を避けてきた文在寅政府が、公に「先制攻撃」を口にするのは異例中の異例のこと。

北朝鮮軍序列1位のパク・ジョンチョン党書記も別途談話を出し、「南朝鮮軍がわが国を相手に先制攻撃のような軍事的行動を敢行すれば、わが軍隊は容赦なく軍事的パワーをソウルの主要標的と南朝鮮軍を壊滅させることに総集中する」と強調した。

梁茂進(ヤン・ムジン)北韓大学院大学教授は「金副部長名義の談話という点や尹錫悦大統領当選者を直接非難しなかったという点で水位調節をした側面がある」とし、米国や国連安全保障理事会にも言及しなかった点を勘案し新政府を手なずける目的を内包していると見る。

しかし、対外メディアの朝鮮中央通信だけでなく北朝鮮全住民が読む労働新聞に、金副部長と朴秘書の談話を掲載したという点で体制結束を強化し、責任ある当局者の意志によって対南強硬ドライブを本格的にかけるという意思を示したという評価だ。

金副部長が「多くのことを再考する」と言っただけに、北朝鮮が、韓米合同訓練などを口実に対南機構である祖国平和統一委員会と金剛山観光局を廃止するか、南北通信連絡網の断絶、9.19軍事合意破棄などを敢行する可能性があるという観測も出ている。

慶南大学極東問題研究所のイム・ウルチュル教授は「北朝鮮が宣伝媒体次元の非難を超えて“強対強”(=双方ともに強硬姿勢の意)対決を本格化している」とし「文在寅政府以前の2017年の対決状況に戻るレベルではなく最悪の南北関係に直面する可能性がある」と予想した。

特に、次期政府の強硬な対北朝鮮政策のムードに便乗して現政府まで強硬一辺倒の軍事的圧迫メッセージを続ければ、北朝鮮の超強硬対応を誘発する恐れがあると憂慮した。

一部の消息筋からは、次期政府の対北朝鮮政策と関係なく、北朝鮮が米国に対して大陸間弾道ミサイル(ICBM)と核実験という強力な挑発を続けるという見方も出されており、これからの北朝鮮の出方に目が離せない状況となっている。

文在寅政府のこの5年間、金正恩を完全に甘やかしてきただけに、尹錫悦次期政権がどのように南北関係の舵をとってゆくのか注目されるところだ。

(無料メルマガ『キムチパワー』2022年4月4日号)

image by: 朝鮮労働党機関紙『労働新聞』公式サイト

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韓国暮らし4分1世紀オーバー。そんな筆者のエッセイ+韓国語講座。折々のエッセイに加えて、韓国語の勉強もやってます。韓国語の勉強のほうは、面白い漢字語とか独特な韓国語などをモチーフにやさしく解説しております。発酵食品「キムチ」にあやかりキムチパワーと名づけました。熟成した文章をお届けしたいと考えております。

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【著者】 キムチパワー 【発行周期】 ほぼ 月刊

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