MAG2 NEWS MENU

「こんなNFTなら私は投資する」世界的エンジニアが語った仮想通貨とNFTへの懸念と将来性

あくまで投機的なものであるといった過去のイメージが、徐々に払拭されつつある感もある仮想通貨ですが、そんな仮想通貨の未来に対して、期待と懸念の入り混じった展望を語るのは、『週刊 Life is beautiful』の著者で“Windows95を設計した日本人”として知られる世界的エンジニア、そして起業家・投資家としての顔も持つ中島聡さん。その仮想通貨について「すごいポテンシャルがあると思うけど“危ない”というか。実際に詐欺とかが横行してるので、どう動くべきかというのがとても難しいですよね」という中島さんに、仮想通貨と同じくブロックチェーン上で取引されているNFTへの懸念点、そして将来性についてお話をお伺いしました。

世界の未来を予測するエンジニア・中島聡さんのメルマガご登録、詳細はコチラ

 

Windows95を設計した日本人エンジニアが語る、仮想通貨とNFTの未来と懸念

「例えば、財産の大半をイーサリアムとかビットコインに全部移しちゃうっていうのは、“まあ、それなりのリスクはあるけど、別にそんなに悪くない”と思います。例えば、そういうことを自分の息子が“する”って言い出しても、私は別に止めない。

ただ、そこまではいいんだけど、じゃあ『Axie Infinity』みたいなゲームのNFTに思いっきり突っ込むって言ったら、“ちょっと止めろ”“あれは怪しいぞ”みたいな……そんな感じですよね」

中島さんが仮想通貨、ひいては近年日本国内でも俄かに注目を集めるNFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン。偽造不可能な鑑定書・所有証明書付きのデジタルデータで、仮想通貨と同様にブロックチェーン上で発行および取引されている)に対して、“危ない”という印象を持つ理由は、いったいどういうところにあるのだろうか。

「要は玉石混交なんです。プラットホームとしてはすごいと思うんですよ、ビットコインにしろイーサリアムにしても。ただ、その上で作られてるものが、まだリアルじゃないし、本当の価値を生み出してない。さらにいえば、詐欺みたいなもの、ちゃんと設計されてないものも多いんです。だから“そこで下手に動くと火傷しますよ”ということ」

実際のところ、中島さんはNFTそのものに対して、現時点ではあまり大きくは投資をしていないのだという。

「NFTといった新しいテクノロジーやプラットホーム、その上にいろんなアプリケーションができていくわけですけど、僕としてはそのアプリケーションを作る立場にはなりたいと思うけど、どこかの他人が作ったNFTを自分が買うといった、そっち側で儲けようとは思わない。それは結局、自分が主人公じゃないので、振り回されちゃうんですよ。だから、すごく難しいと思います、そこでちゃんとやるっていうのは。

たまたまラッキーで、いいコミュニティを選んで、そこにいいタイミングで入れば、確かに儲かる。実際に儲けた人もいっぱいいるじゃないですか。それは可能性としてはあるけど、ただ“じゃあ、それで稼いで食っていこう”とか“それへの投資で大きなビジネスを作ろう”っていうのは、甘いと思います。

もしNFTで本当に大きなビジネス作るんだったら、自分でNFTを提供する側。例えば、OpenSeaのライバルになるようなNFTマーケットプレイスを作るとか、そっち側にしないとダメだと。だから、レイヤーの問題ですよ」

世界の未来を予測するエンジニア・中島聡さんのメルマガご登録、詳細はコチラ

 

昨今のNFTを巡る状況に対しては、あくまで懐疑的な中島さん。しかし、そのいっぽうで「ビジネスそのものとして価値を生み出す何かがあり、そこにお金が流れ込むっていう形のNFTなら、投資の対象として考えられる」とも語る。

「最近のNFTだと、遊んで稼ぐっていう“Play to Earn”なんかも話題ですが、あれの一番の問題はみんなが儲けようとしてること、儲けようとするお金しか入ってこないところなんです。でも、こういうので出ていくお金っていうのは、入ってくるお金より絶対に少ないわけで、だからゼロサムどころかマイナスサムにしかならない。

そういうNFTじゃなくて、例えばみんなでそのNFTを買うと、そのお金を利用して何らかのビジネスが作られ、それがお金を稼ぎ始めると。……要はお金が集まるんだから、投資と同じじゃないですか。そういったものができれば、それはいい投資になるんじゃないかと。

例えば、森ビルあたりがNFTを発行して、お金を集めてビルを買います。そこをオフィスとして貸して、その収入がNFTを持っている人に分けられるんだったら、そこにはリアルなビジネスがあるじゃないですか、“不動産を貸す”っていう。そういうNFTには投資する価値があるかと。

だけど、誰かが書いたサルの絵みたいなNFTっていうのは、それが上がる理由って“他に買う人がいる”だけじゃないですか。それだと全然投資にはならないんです」

不動産を中心に運用する金融商品といえば、REIT(リート、不動産投資信託)という存在もあるが、中島さん曰く、そちらがすでに各種法令でがっちりと固められているのに対し、NFTだと今のところは法規制がないため、やろうと思えば気軽に始められるのでは……とのこと。

「僕も本気でちょっと考えたんですよ。ハワイに自分のために不動産をひとつ買ったんだけど、その隣にもうひとつ買ったうえで、NFTを発行してレント収入を渡すっていうのをやったらって。

……まぁ、不動産の話はあくまでひとつの例として、今後はそういうリアルビジネスが中にあるNFTが、ファイナンスのひとつの仕組みとして出てくるのかと。誰かがいずれは作るだろうし、もしくは自分でそういうのを作るのもいいですけど。だからNFTで投資をしたいなら、そこまで待ったほうがいいんじゃないかと思います」

聞き手・文/芳村篤志

世界の未来を予測するエンジニア・中島聡さんのメルマガご登録、詳細はコチラ

 

中島聡この著者の記事一覧

マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。IT業界から日本の原発問題まで、感情論を排した冷静な筆致で綴られるメルマガは必読。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料で読んでみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 週刊 Life is beautiful 』

【著者】 中島聡 【月額】 初月無料!月額880円(税込) 【発行周期】 毎週 火曜日(年末年始を除く) 発行予定

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け