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抗議の自殺も。中国の地方政府が庶民から巻き上げる“無差別罰金”地獄

絶対的な権力で国民を統制する中国ですが、人民たちはここ数年、地方政府による不当とも言える罰金に苦しめられているようです。そんな実態を取り上げているのは、台湾出身の評論家・黄文雄さん。黄さんは自身のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』で今回、罰金が中国の地方政府の大きな財源となっている事実を紹介するとともに、為政者の腹づもり一つで企業や民衆を追い込むことができる「異常な国のシステム」を非難しています。

※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2022年8月31日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

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プロフィール:黄文雄こう・ぶんゆう
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。 

【中国】国も地方もこぞって罰金をでっち上げる中国のヤバイ経済状況

中國地方財政吃緊 多地政府爆「花式罰款」亂象(中国の地方財政が逼迫 多くの地方政府が「派手な罰金」を乱発してカオス状態に

中国では世界的なインフレに加え、新型コロナに対する「ゼロコロナ」政策によって、経済の低迷が続いていますが、これが地方政府の財政に大きな影を落としています。これまで地方政府は不動産バブルに乗じて土地開発を進め、大きな利益をあげてきました。

ところが、コロナショックと中国の厳格なゼロコロナ政策により企業活動が停止するとともに土地需要も低下してしまいました。さらに世界的なインフレが追い打ちをかけたことで景気が低迷し、地方政府では税収も大きく落ち込んでしまいました。

最近、中国の地方銀行で預金封鎖が相次ぎ、住民による大規模なデモなどが起こっていることは、日本でも報じられています。

7月には、河南省で4つの銀行が約8,000億円の預金凍結を行ったことで、3,000人の市民が銀行に押しかけデモ行進を行いましたが、地方政府当局や銀行に雇われた「黒社会」のメンバーがこれを力で排除しました。日本のテレビニュースでもその模様が流されていましたので、ご覧になった方も多いでしょう。

中国河南省、41万人の銀行預金凍結に大規模抗議 不動産融資で資金不足

要するに、地方政府が金融機関と結託して、詐欺的な手法でカネを集めていたわけです。それが露見して預金者が怒り出したので、警察やヤクザを動員して押さえつけようとしたという構図です。

そしていま、中国で地方政府の大きな財源となっているのが「罰金」です。ささいな違反や、言いがかりに近い理由で、民衆に罰金を科す地方政府が増えているのです。

冒頭の記事では、陝西省楡林市でセロリ5キロを販売した野菜業者が、サンプルテストに不合格になったという理由で6万6,000元(約132万円)の罰金を科されたケースを紹介しています。

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また、罰金で多いのがやはり交通違反に関するものです。4月上旬には河南省で、GPSに基づく車両測位機器の接続が切れていたということで2,000元(約4万円)の罰金を科された男性のトラック運転手が、農薬を飲んで自殺するという事件が起きています。

男性の遺書には、一介の運転手がGPSが切れていたことにどうして気づくことができるのかという憤りとともに、自らの死によって指導者にこの問題を訴えたいと書かれていたそうです。

ささいな交通違反に高額な罰金…抗議の死も 中国、地方政府が財源目的で過剰な取り締まり

2021年の交通違反に関する罰金は3,000億円(約6兆円)にも達しており、これは日本における交通反則金(500億円強)の100倍以上だということです。このように中国で交通違反の罰金が激増している背景には、監視技術の発達や監視カメラの増加があるとされています。

国営新華社発行の評論誌「半月談」(電子版)によれば、東北地方のある県では、一般予算収入のうち3分の1が交通違反の罰金でまかなわれていたそうです。

中国メディアによれば、近年、中国社会では「乱収費(無差別課金)、乱罰款(無差別罰金)、乱攤派(権力による法的根拠のない賦課)」の「三乱」が横行しており、民衆の不満が高まっていると報じられています。

山東省成武県では、一部の大型トラック運転手が、地元政府の交通運輸局と結託し、運転手が1ヶ月分の罰金(通称「月票」)を先に支払うことで、当局がトラックの過載積などの違反を1ヶ月間見逃すという、本末転倒なことも起きています。

そのため、国務院は8月17日に、「罰金による歳入を禁止し、罰金収入を業績評価の指標とすることを排除する」ことを求める通達を出しました。

しかし、中央政府がいくらこのような通達を出しても、ほとんど効果はないでしょう。というのも、中央政府自体が恣意的な懲罰行為を行っているからです。たとえばジャック・マーが金融当局に批判的な発言をしたことで、アリババ傘下のアントは上場延期に追い込まれ、アリババも独禁法違反で3,000億円もの罰金を科されました。

中国当局、アリババに3000億円の罰金 独禁法違反で 過去最大 「取引先に圧力」問題視

その他、テンセントやディディなど、新興企業が次々と巨額の罰金を科されていますが、これらは、巨大になった新興企業が政府に逆らわないよう、統制を強めているためだと目されています。

また、今年秋の共産党大会に向けて、習近平政権は反腐敗運動を強化、そのため汚職の疑いをかけられた高官が、自殺と思われる謎の急死を遂げるケースが増えています。このように、政権の都合によって粛清を強化するということが繰り返されてきたのです。

中国高官、謎の急死相次ぐ 党大会前に「反腐敗」強化で重圧か【中国ウオッチ】

先日、古参の共産党員3人が、習近平政権への権力集中や個人崇拝に対して警鐘を鳴らす文章を発表し話題となりましたが、そのためこの3人は「厳重な監視下に置かれ、いつでも身に危険が及ぶ可能性がある」状況にあるとされています。

古参共産党員、個人崇拝に警鐘 異例の文書発表―中国

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習近平政権自体が、政権維持のために恣意的な摘発や罰金を乱発しているわけですから、地方政府に罰金乱発による財源徴収をやめろと命じたところで、聞くはずがありません。

こうした恣意的で法的根拠にも乏しい罰金については、多くの台湾企業が苦しめられてきました。地方政府当局から、いいがかりのような理由で業務停止命令を受けることも多々ありました。賄賂を渡さないと、こうした嫌がらせが繰り返されるのです。

2016年には、韓国政府が在韓米軍へのTHAAD配備を決定したことへの報復として、中国政府は中国に展開するロッテマートに対して消防点検などを名目に店舗を営業停止に追い込み、中国撤退を余儀なくさせたことはまだ記憶に新しいでしょう。

韓国ロッテマート、中国店舗を売却へ 報復で損失止まらず

よく言われるように、中国は法治主義ではなく人治主義の国です。為政者の腹づもり一つで、企業や民衆を追い込むことができてしまうわけです。民主主義のように民意を問うシステムがないことも、権力の横暴がはびこる原因になっています。

企業がこのような国に進出することは、リスクしかありません。社員もいつどのような理由で逮捕されるかわかりません。人民の不満が高まれば、当局は今度は外国企業に矛先を向けてくる可能性は十分にあります。

外国企業を違反で摘発、巨額の罰金を科せば、人民から快哉を得られやすくなるため、地方政府がそうした「禁じ手」に出てくることも考えられます。

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