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人の「善意」を利用してダマす統一教会の悪質な手口。元信者が暴露する「募金」「寄付金」「ボランティア」の実態

メルマガ『詐欺・悪質商法ジャーナリスト・多田文明が見てきた、口外禁止の「騙し、騙されの世界」』発行者で、かつて旧統一教会の信者であったジャーナリストの多田文明さん。人の「善意」を使ってさまざまな団体や自治体に入り込む悪質な統一教会の手口を、最新刊『信じる者は、ダマされる。元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)の中で詳しく綴っています。今回、特別に多田さん最新刊の一部を抜粋してお届けいたします。

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統一教会も駆使した「善意」でダマす手口。なぜ、旧統一教会の「寄付」や「応援」を断れないのか

旧統一教会内での活動を見てきて、「善意を装って近づく」のがとても巧みであることを痛感しています。これにより、心あるやさしい人たちはダマされてしまいます。

すでに旧統一教会から全国の自治体にお金が寄付されていた実態が明らかになっています。地域住民の福祉の推進を行っている社会福祉協議会への寄付も目立っています。寄付されたところは相当数になると見られ、教団組織としてなんらかの指示や意図を持って行われている可能性もあります。なぜ、こうした寄付が行われているのか。教団の目的などについてお話しします。

2022年8月に入り、私が一時期所属していた仙台の旧統一教会から仙台市社会福祉協議会への寄付があったとの報道があり、急いで取材しました。

寄付は世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の仙台家庭教会の壮年部からによるもので、仙台市社会福祉協議会によると、3年間にわたり、約10万円の寄付を受けています。「当時、旧統一教会の認識はあったものの、寄付という善意なので、断る理由がありませんでした」との答えでした。

このあたりが巧妙なのですが、相手先の団体が霊感商法を過去に行い、甚大な消費者被害を引き起こした旧統一教会であるとわかっていても、「寄付」という善意を前面に出されるために、断りにくい状況になるのです。

2020年10月、長崎県の佐世保市社会福祉協議会のもとには、世界平和統一家庭連合佐世保家庭教会から約4万円が寄付されています。同社会福祉協議会によると、「チャリティーバザーを開催した益金とのことでした。ただ、どんなチャリティーを行っていたのか、その詳細までは把握していません」との答えでした。

どうしても善意の行為を疑い、その内容を聞くこと自体が「よくないこと」と思ってしまいがちです。それゆえ、詳細を尋ねることを躊躇してしまいます。まさに、その点を突かれ、寄付を受け取ってしまったといえます。

このほかにも、2021年11月、奈良県の香芝市社会福祉協議会は世界平和統一家庭連合かつらぎ家庭教会よりチャリティーバザーによる17万円の寄付を受けています。この額はなかなか多いとの印象を受けますが、ここでは「SDGs」を謳っていることもあり、多くの人がやってきて、それだけバザーでの収益があったということでしょう。

報道によると、このほかの全国の社会福祉協議会にも同様の寄付がなされています。

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「募金」「ボランティア」を騙る献金集め

知っておいてほしいのは、寄付、ボランティアなど善意を前面に出したかたちでの活動は、旧統一教会において昔から得意とするところだということです。

過去には、街頭での偽募金活動や、私がいたところでは「しんぜん会」という団体を名乗って偽ボランティア活動をしていました。信者時代、同じグループの人たちとともに、「しんぜん会というボランティア団体です。寄付をお願いします」と一軒一軒、家を訪問した経験があります。

実際に、この団体は都内に存在します。そして、この団体に所属しているという身分証も一人ひとりに手渡されています。訪れた先の家人が、もしこの会の存在を疑ったときには、身分証を見せて信じさせます。そして、同会が発行する冊子などを見せながら、「車椅子を寄贈するために、寄付を募っています。ご協力願えませんか?」と言うように指示されます。

そして、ハンカチや靴下などの購入をすすめますが、これらの仕入れ値はさほどしないものです。ハンカチ3枚を袋に詰めて数千円で売ります。1日やれば1万円以上は集められます。もちろん、もっと売上を出す人もいます。

なかには、募金と聞いた人が、これまで貯めていた貯金箱を渡してくれることもあります。それは必ず受け取るようにとの指示がありました。

当時、それを十数人のグループで行っていました。土日は街頭に出て伝道活動をしますので、たいがい平日を中心に行われます。1人1日1万円と少なめに計算しても、週に100万円以上のお金は集められることになります。

あるとき、上の人に、

「この集めたお金はどうするんですか?」

と聞いたことがあります。すると、「今月は借金で献金した分の返済が厳しいからな。ほとんどはそっちに回し、あとはホーム(教団の施設)の家賃代などにあてることになるかな」

と言われたこともあります。このお金がボランティア団体である「しんぜん会」本体に行くことは、まずありません。すべてのお金は、所属する組織の上層部に上げられるわけです。

このように、ボランティアという名のもとにお金を集めるのは、以前から旧統一教会の得意とするところです。「善意」を前面に出すことで、訪問した先の相手を断れない状況に追い込んでいくわけです。心根がやさしい人ほど、お金を出してしまいます。

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チャリティーバザーを頻繁に開催する理由

善意を前面に出す手口は、これだけではありません。私がいたところでは、チャリティーバザーを頻繁にしていました。

なぜ、それだけ頻繁にできるのかといえば、献身(出家)する信者が次々に出ていたからです。彼らは身も心も神に捧げ、ホームと呼ばれる教団施設に住み込み、伝道と経済(お金集め)の活動をします。衣服などの最低限の持ち物以外は教義上、神のもとに手放さなければなりません。それで、持っている家具や机など、金目になりそうなものは、すべてバザーに出されてしまうわけです。

また、献身までしない信者であっても、教義に傾倒すればするほど、自分の財産は教団に捧げなければならない状況になります。とにかく、バザーの商品にはこと欠かないのです。入信した学生時代、私もなけなしのお金で買ったばかりの6万~7万円もする望遠鏡をバザーに捧げました。

当時、霊感商法=統一教会という悪評が立っていましたので、その名を出したチャリティーバザーはできませんでした。それで、ダミー団体を名乗り、統一教会だと知られないように行っていました。しかし、いまは世界平和統一家庭連合の名を出して堂々とバザーを行い、社会福祉協議会などに寄付を行っています。

つまり、バザーに来場した方が、ここが霊感商法を行っていた旧統一教会であることに気づかないまま、お金を出したのではないかと思います。2015年の「世界基督教統一神霊教会」から「世界平和統一家庭連合」への名称変更の効果は、こうしたところにも表れているといえます。

当時から言われていたのは、

「チャリティーバザーなんだから、少々値段が高くても、来場者は商品を買っていく。だから、値段は下げるな」

です。私がいたところでは、売上目標を100万円にして、数十万円の利益が出ることはざらでした。その後、内部の会議に参加したことがありますが、やはり、そのお金のほとんどは教団への献金や、信者のホーム代や、借金の返済にあてるとの報告がなされていました。

そのころも、チャリティーバザーの売上の一部である数万円は自治体に寄付をすることになっていました。今回、多くの社会福祉協議会などが受けた寄付に近い金額です。何を目的にしているかいえば、募金をした際に受け取る「受領書(領収書)」や「表彰状」です。

私の信者時代、かなりの頻度で教団はバザーを行い、たびたび寄付を行っていたので、会場には自治体からの感謝の表彰状などが飾られています。それを見た来場者は、ここがしっかりしたボランティア団体だと思ったことでしょう。それで、口コミで来場者が増え、売上が上がるようになっていました。

今回、取材した各社会福祉協議会も、寄付を受け取ったときには領収書や受領書を渡しているということです。それを次のバザーの際に見せ、市区町村からお墨つきを得た信頼ある団体のように見せているのではないかと思います。

さらに、いまは寄付したことはホームページや広報誌にも載りますので、旧統一教会から名前を変えた「世界平和統一家庭連合」がすばらしい慈善活動をしている団体であるとアピールすることも可能なわけです。こうしたことをきっかけに教団に誘われることは十分にありえます。

私がいたところでは、多額のお金をバザーで集めておきながら、寄付は数万円ほどと微々たる金額しかしていません。そのほとんどが献金などに回されています。時に献金のノルマが厳しいと一銭も市区町村に募金しないこともあり、そのときは、まるまる教団の収益となります。

しかし、こうしたお金の流れは、外部の人にはわからないことです。

※この記事は、多田文明さん最新刊『信じる者は、ダマされる。元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)より本文の一部を抜粋したものです。元統一教会信者として「騙しの手口」や詐欺の実態を知り尽くした多田さんの発行するメルマガ『詐欺・悪質商法ジャーナリスト・多田文明が見てきた、口外禁止の「騙し、騙されの世界」』は、初月無料でお読みいただけます。この機会にぜひご登録ください。

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image by: B.Wisp, CC BY-SA 4.0, ウィキメディア・コモンズ経由で

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悪徳業者などへの潜入取材した数は100ヶ所以上。数々の現場経験と被害者への聞き取り取材から、詐欺・悪質商法に詳しいジャーナリストとして一線で活動し、多数のテレビ・ラジオに出演している。現在はヤフーニュースのオーサ・公式コメンテーターとして、コメントやニュース記事を執筆中。消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」(2017年~18年)の委員も務めた。雑誌「ダカーポ」にて、悪徳商法に誘われたらついていく連載を担当。それをまとめた著書「キャッチセールス潜入ルポ~ついていったらこうなった」(彩図社)はフジテレビで番組化され、ゴールデン枠の特番で第8弾まで放送された。新刊11月予定「信じてみたら、ダマされる。~元統一教会信者だから書けたマインドコントロールの手口」(清談社清談社Publico)

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【著者】 多田文明 【月額】 ¥330/月(税込) 初月無料 【発行周期】 毎月 14日・28日

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